強欲社長 「時間もったいない」とタクシーで帰宅 これも経費にできる?
計上

皆さんの会社の重役は、毎日どのようにして通勤していますか。大企業にもなると、運転手付きの車が送り迎えをしているところもあるようですが、コストも多くかかりそうです。
税理士ドットコムには、「自宅へ帰るときのタクシー代は経費にできるか」という相談が代表取締役から寄せられました。相談者はとにかく時間がないため、「バスの待ち時間も惜しい」とまだバスなどが運行している時間でも、タクシーを利用しているそうです。
出張時や公共交通機関を逃したという場合でなくても、タクシー代は経費になるのでしょうか。三宅伸税理士に聞きました。
●通勤手当「一定基準の範囲内」であれば所得税が非課税
ーーまず、通勤手当は非課税なのかどうか教えてください
「会社に勤務されている方は、通勤のための交通費を会社から通勤手当として支給されていると思います。基本的には会社から支給される手当(住宅手当、残業手当等)は給与に該当し、個人所得税の課税対象です。
ところが通勤手当は『通勤のための実費弁償的な性質のもの』であるため、他の手当とは違い、一定基準の範囲内であれば所得税は非課税です」
●制限なく非課税になるわけではない
ーー通勤手当に制限はないのでしょうか
「通勤手当であれば、制限なく非課税収入になるわけではありません。
非課税となる金額は『その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額』と規定されています。
会社にとってはその非課税の通勤手当は経費として計上することができます」
●会社で経費計上できない→個人の所得税対象に
ーー相談者は緊急性がなくても頻繁にタクシーに乗り、経費にしたいそうです
「今回の相談者の場合、バス等が利用できる状況であるにもかかわらず、タクシー通勤を自ら選択しています。こうした場合、『通常必要と認められる範囲を超えている』と判断される可能性は高いと思われます」
ーー必要と認められなかった部分については、どうなりますか
「経費として認められる分を超えた通勤手当は、非課税収入ではなく役員報酬として個人の所得税の課税対象になります。さらに役員報酬は事業年度途中で上げたり下げたりすることに制限が設けられています。
そのため、タクシー通勤で増額となった部分は会社にとって経費にならない場合があります。非課税通勤手当として認められなかった増額部分は、会社では経費計上できず、個人にとって所得税の対象になってしまいます」
●税務訴訟で判例も
ーータクシーに乗りすぎた結果、経費計上できないこともあるということですね
「はい。過去には、必要と認められる範囲を超えるタクシー通勤費は、非課税の通勤手当ではなく、給料として源泉徴収の対象になるとした判決もあります(平成29年6月27日高松高裁)。
この税務訴訟の原告は、病院を経営する医療法人で、病院に勤務する医師らにタクシーを前提に出勤手当を定めていました。
判決は、医師の職責の重大性を考慮しても、公共交通機関や自家用車の利用が可能である場合にあえてタクシーを利用することは『社会通念上合理的であるとはいえない』と指摘。タクシー利用を前提としていた出勤手当の全てを非課税所得とは認めませんでした」
【取材協力税理士】
税理士 三宅伸(みやけしん)
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。大阪の税理士法人に勤務。平成26年11月堂島で三宅伸税理士事務所を開業。設立当初からクラウド会計の導入をすすめている。常にお客様の立場に立って考えお客様と共に成長していくことをモットーに起業支援、法人および個人の会計税務および相続等幅広く活動している。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所
事務所URL:http://miyake-tax.jp/index.html