配偶者だけでなく国からも請求が!?財産分与への課税について

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配偶者だけでなく国からも請求が!?財産分与への課税について

スピード離婚、成田離婚、熟年離婚と、婚姻率の低下とともに離婚率は増加が続いています。「もう耐えられないから離婚しましょう!」と言われてしまったら、待っているのは慰謝料の請求や財産分与です。裁判でも問題になることが多い点ですね。この財産分与、あまり知られていませんが、渡してしまえばはいおしまい、ではなく課税の対象になることもあるんです。

この課税制度を知っておけば、請求される側の方は節税ができるかもしれません。うちは関係ないなんて思っている方も、もしかしたら明日はわが身かもしれませんよ。それでは課税の対象になる財産分与について見ていきましょう。

目次

財産分与の3つの種類と分与するもの

そもそも財産分与とはなんでしょう。一言で言うならば、結婚している間に築いた財産を、離婚する時に分配することです。そして離婚する際には、原因が自分にあろうとなかろうと相手に財産を分与するように請求することができます。それだと結婚している最中に自分が相続した不動産なんかも分けなければいけないのかというと、そうはなりませんのでご安心ください。

財産には夫婦が協力して取得した現金、保険、家財道具や建物、車などの「共有財産」と結婚前から所有していたり、相続したりした財産や花嫁道具、アクセサリーなどの個人の持ち物と認められる「特有財産」の2種類があり、財産分与の対象となるのは、「共有財産」です。ちなみに結婚指輪・婚約指輪は「特有財産」に含まれます。

そして分与には3つの種類があります。

清算的財産分与

この分与が財産分与のメインとなるもので、原因が自分にある場合でも請求できます。

マンションの名義は自分だから分けなくてもいいか、というと名義は関係ありません。夫婦で協力して形成したとみなされるものは全て共有財産なので、分与の対象となります。

そして夫婦で協力して形成した財産は貢献度に応じて分配することになります。それなら専業主婦(夫)は稼いでいないから貢献度は0か、というと家事労働という労務を提供しているとみなされるので、貢献度は0にはなりません。

ただこの貢献度は基本的に50%ずつと言われていますが、日がな一日ごろごろしている名ばかり専業主婦(夫)か、近所でも評判の働き者の主婦(夫)かで変わってくるのでケースバイケースとなります。

一般に、配偶者が特殊な技能を持っている医者や経営者などの場合は相対的に低く25%程度に、サラリーマンの場合は相対的に高く50%程度になるようです。

扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、専業主婦(夫)や病気で夫婦の片方の稼ぎが少ない場合には、経済力のある方が経済力のない方に離婚した後も生活のために行う財産分与です。このため、一定額を定期的に払うことが多いようです。

慰謝料的財産分与

明確にいえば慰謝料と財産分与は別物なのですが、手続きが1回で済むので一緒くたに請求されること多いのが現状です。相手の不貞行為などによって、別途慰謝料を請求する場合は、請求されないこともあります。

渡す方にかかる「譲渡所得税」

さて、財産を分与する側に関わってくるのが「譲渡所得税」と「住民税」です。

譲渡所得税は、資産の譲渡による所得に対してかかる税金です。有償無償関わらず、土地、建物、株式、金、宝石、骨董、船舶、ゴルフの会員権などの資産を移転させることで発生します。分与を現金と生活用の動産とみなされる家具や自動車で行った場合には発生しませんので、分与の際は譲渡取得税がかからない財産で分与すると節税につながります。

ちなみに財産を分与される側は、財産分与の種類によって税金がかかるか、かからないか決まります。「清算的財産分与」の場合は贈与税・不動産取得税はかかりませんが、不動産の場合のみ、法務局に登記するための登録免許税(固定資産税評価額の2%)、取得後は固定資産税がかかります。

「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の場合には不動産取得税、登録免許税、固定資産税がかかり、一括払いの場合は税務局から贈与とみなされる可能性があります。

 対象となる税金対象外となる税金
清算的財産分与登録免許税・固定資産税贈与税・不動産取得税
扶養的財産分与不動産取得税・登録免許税・固定資産税贈与税*
慰謝料的財産分与不動産取得税・登録免許税・固定資産税贈与税*
*場合による

譲渡所得税と住民税の計算方法

譲渡所得税の計算方法は、譲渡価額(時価)から取得費用と譲渡費用と特別控除、建物の場合にはそれに加えて減価償却費を引いたものに取得税・復興特別所得税率をかけます。

譲渡所得税=[譲渡価額ー(取得費用(-減価償却費)+譲渡費用)-特別控除]×譲渡取得税率×復興特別所得税率

・譲渡価額とは土地や建物の売却金額を指し、ここでは時価となります。
・取得費用とは購入金額や手数料、改良費を指し、建物の場合は減価償却費を差引ます。また取得金額がわからない場合、譲渡価額の5%以下の場合は一律5%として計算します。
・譲渡費用とは売却(分与)の際にかかった支出のことです。測量費や印紙代などが含まれます。

譲渡所得税、住民税は所有していた期間によって「長期譲渡所得」(5年超)と「短期譲渡所得」(5年以下)に分けられます。なお住民税は譲渡所得税に住民税率をかけたものです。

 所得税率住民税率
長期譲渡所得(5年超)15%5%
短期譲渡所得(5年以下)30%9%

少しでも譲渡所得税を回避したいなら

なかなか軽視できない金額の譲渡所得税を、どうすれば安く抑えることができるでしょうか。離婚前に分与するか、離婚後に分与するかで適用できる税率が変わってくるので、有利な方を採用しましょう。

居住用不動産贈与の配偶者控除制度

離婚前にマイホームを贈与することで、贈与税が最大2110万円が控除されます。別名「おしどり贈与」というなんとも皮肉な名前です。

適用の条件としては以下が挙げられます。詳しくは国税庁の夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除のページをご覧ください。

・結婚して20年以上経っていること
・居住用住宅(マイホーム)であること
・贈与された側が次の年の3月15日まで実際に住むこと

譲渡取得の特別控除

離婚後にマイホームを売却(今回の場合は譲渡)することで、譲渡所得税が最大で3000万円が特別控除となります。なぜ離婚後かというと、この特別控除は配偶者などの特殊関係者へは適用されないからです。さらにマイホームの所有期間が10年を超えていると、所得税率・住民税率が一部安くなります。6000万円以下の部分が所得税が10%、住民税が4%となるのです。

おわりに

譲渡所得税の申告に必要な内訳書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで自分で作成することもできますが、契約書の準備や適用される特別控除の見極めなどは大変手間のかかり、専門知識も必要となる作業です。新たな生活のスタートが国税局からの通達にならないよう、離婚される前に専門家に依頼されるのがよろしいかと思われます。

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