税理士与太郎の失敗〜その1〜「ビットコインと税金」

※本コンテンツは寄稿税理士による、架空税理士の失敗談を解説を交えて物語形式で描いたものです。
ここは与太郎会計事務所。今日も税金の相談にどなたか見えたようです。
熊さん「おう。与太郎」
与太郎「熊さんじゃないか、久しぶりだなあ。趣味の投資は上手くいってるか?」
熊さん「それがさあ、最近流行りのビットコインってやつで一儲けしちゃってさあ。上手く売り抜けて50万円の儲け。ただ、税金はいくらかかるのか気になって、こうして相談に来たってわけさ」
与太郎「ビットコインねえ。そういえばいいものがあった。ちょっと待ってろ」
与太郎は事務所の奥から「ビットコインと税務」と書かれた論文を持ってきました。
与太郎「これは3年前に国税関係者が書いたものなんだけど、ここに『売却益は譲渡所得となる可能性がある』と書いてある。ビットコインは国がお墨付きを与えた『法定通貨』じゃないから、車を売った時なんかと同じように、売却益は譲渡所得と考えるのが妥当だろう」
熊さん「それで、税金はいくらかかるんだよ」
与太郎「まあ落ち着け。今回の場合、譲渡所得を計算するには、まず『収入』から『取得費』と『譲渡費用』を引く。これが50万円だろ。これからまた50万円を引くと譲渡所得の金額が出る。つまり0円。よって税金はかかりません!」
熊さん「そうか、安心したよ。ありがとよ!」
その日は喜んで帰った熊さんでしたが、その翌日。与太郎に一本の電話が。
熊さん「俺だよ、熊だよ。おい、この大嘘つき!」
与太郎「大嘘つき?熊さん、一体何の話だい?」
熊さん「とぼけんじゃねえよ、昨日のビットコインの話だよ。お前は『譲渡所得』だって言ったけど、国税庁HPの『タックスアンサー』に『雑所得』って書いてあるじゃねえか。それだと50万円に丸々税金かかるだろ。お前俺の代わりに税金払え!」
与太郎「えええ!?そ、そりゃないよ~!!」
与太郎のソースが古すぎましたね。ビットコインはこの数年間で大幅に普及し、改正資金決済法等の法令も整備されました。為替差損益と同様に、ビットコインの売却損益等が雑所得と示されたことにも一理あります。
ちなみに、国税側が課税上の取扱を後から変更・統一したことはこれまでにもあります。例えば、一定のストックオプションの権利行使益について、当初は「一時所得」とされていたものが、後になって「給与所得」とされたことがありました。(一般的には給与所得の方が一時所得より税負担が重いことから、税金が大幅に増えた方もいらっしゃったようです)
経済活動の多様化により、このようなケースは今後も発生すると思われますので、何も税務に限ったことではありませんが、情報のアップデートは必要不可欠といえるでしょう。
【著者】与太郎(落語が趣味の勤務税理士)
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!