ウクライナ大統領「日本の援助に感謝」、寄附をする場合に考えるべきこと
税金・お金

ウクライナのゼレンスキー大統領が3月23日、日本の国会でオンライン演説をおこない、「日本とウクライナはお互いの自由を感じる気持ちに違いはありません。日本がすぐに援助の手を差し伸べてくれたことに感謝申し上げます」と感謝の言葉を述べた。
日本政府は、ウクライナやその周辺国に対して、1億ドルの人道支援を表明しており、さらに1億ドルを追加することも報じられている。
民間でも寄附金などの支援の動きは活発化していて、在日ウクライナ大使館のツイッターは、「ウクライナ国民にとって困難な今の時期にご支援くださいました日本の友人の方々に心から感謝しています」と話している。
ウクライナへの人道支援については、ウクライナ政府に直接寄附するものや、団体経由のものがあり、国連UNHCR協会、日本ユニセフ協会、特定非営利活動法人 ADRA Japanなどが募っている。
寄附をした場合には、寄附金控除のメリットもあるが、ウクライナ政府に対する寄附にも適用されるのか。新井佑介税理士に聞いた。
●ウクライナ政府への寄附金は控除の対象にならない
個人が寄附をする場合、寄附金控除の対象となる「寄附先」は所得税法及び関連諸規則によって認められた団体になります。
所得税法では、国又は地方公共団体に対する寄附金が控除対象として定められていますが、ここでいう「国」にウクライナ政府は該当しません。そのため、ウクライナ政府への寄附金は寄附金控除の対象とはなりません。
一方で、所得税法及び関連諸規則によって認められた団体を経由してウクライナ支援に使われる場合、当該団体への寄附は寄附金控除の対象となります。
●控除の対象かどうかより、寄附先の活動内容を踏まえて判断することが大切
寄附金控除の立法趣旨については、現在のわが国においては「寄附の誘因」とする見解が有力です。個人にまつわる税金に限定すれば、端的に言うと申告所得税等を減少させるインセンティブが「寄附の誘因」になります。
昨今では、地方公共団体に対する寄附である「ふるさと納税」が身近です。そして寄附金控除は、計算構造上、所得が高い層にとって有利になる税制ですので、平場の実務では富裕層ほど制度を意識していることが多いかと思います。
しかしながら実際に東日本大震災の際、寄附を行った方の大多数は、同制度の存在を寄附の理由としている方は少なかったのではないでしょうか。今回のウクライナへの軍事侵攻についても同様なのかとは思います。平和を願う気持ちが寄附の理由である方が大多数でしょう。
寄附先が寄附金控除の対象先であるかという視点も重要ですが、寄附先の活動内容などを寄附者自身で判断して寄附することが大切です。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、犠牲となられた全ての方々に哀悼の意を表します。そして平和な日常が一日でも早く戻ることを専門家の一人として心より願っています。
【取材協力税理士】
新井 佑介(あらい・ゆうすけ) 公認会計士 税理士
AAG代表。慶応義塾大学経済学部卒業後、KPMGを経て現職。
事務所名 :AAG新井綜合会計事務所
事務所URL:https://www.aag-group.co.jp/