年間37万円受け取る猛者も……チップをもらったら確定申告は必要?
税金・お金

インバウンドの影響もあり、日本国内の飲食店などでも海外観光客からチップを受け取る機会が増えているようだ。旅館などでは、日本人・外国人に関わらず、昔から「お心づけ」という形で仲居さんなどの担当者がチップをもらうといった文化が根強く残っている。
最近はDX化が進み、フードデリバリーや飲食店のモバイルオーダー等において、客から配達員やスタッフに気軽にチップを送れる機能が備わっていることもあり、チップを受け取る機会が増加していると考えられる。
飲食店向けのモバイルオーダーサービスなどを手掛ける「ダイニー」では、スタッフへチップを贈ることができる「推しエール」という機能を搭載。ダイニーは、スタッフの1年間の推しエール金額を公表しているが、2024年のランキング1位となったスタッフは、年約37万円ものチップを受け取ったという。
チップの導入は、事業者側の金銭的な負担がなく、従業員のモチベーションを高めることが期待できるが、税金の扱いはどうなるのだろうか。佐藤全弘税理士に聞いた。
●給与所得者が受け取るチップは原則「雑所得」の対象になる
ーー飲食店などの従業員が直接チップを受け取ると、確定申告が必要なのでしょうか。フードデリバリーでチップを受け取る場合はどうでしょうか。
飲食店などの従業員が直接受け取るチップは、雇用契約に基づく給与ではなく、お客様からの心づけとして受け取るものであり、税務上「雑所得」として課税対象となります。
なお、ほとんどの給与所得者は会社で年末調整がされているため、雑所得の所得金額(収入ー経費)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告の必要はありません。
一方、フードデリバリーなどでお客様から受け取るチップも基本的に上記と同じ考え方です。税務上、副業としている場合は「雑所得」、本業としている場合は「事業所得」として課税対象となります。具体的には以下のとおりです。
・副業としている場合
会社員などの本業とは別に、副業としてフードデリバリーをしているのであれば、フードデリバリーによる収入とチップなどの所得金額が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告の必要はありません。
・本業としている場合
青色申告を行っていたり、所得が基礎控除を超える場合などには、基本的に所得税の確定申告の必要があります。
●チップを店側がいったん預かる場合はどうなる?
ーー飲食店などで、チップが一度店側に渡り、従業員に支払われる場合、税金の扱いはどのようになるのでしょうか。
飲食店などで、チップが一度店側に集められ、その後従業員に分配される場合は、給与所得として扱われます。
その際には、事業者が源泉徴収や年末調整を行うため、原則、従業員個人が確定申告をする必要はありません。
●所得税の確定申告は不要でも、住民税の申告は別途必要
ーーチップを受け取る際の注意点について、従業員・事業者ともにあればお教えいただければ幸いです。
従業員側は、チップが「給与所得」として扱われる場合は特に問題はありません。ただし、直接受け取った場合は、チップによる収入を日々記録し、年間の合計額をもとに、所得税の確定申告が必要かどうか判断しましょう。
なお、給与所得者や、副業で雑収入とチップを受け取る場合は、たとえ雑所得が年間20万円以下で所得税の確定申告が不要でも、住民税の確定申告は別途必要なので注意しましょう。
事業者側は、チップを収入として漏れなく計上するとともに、従業員に支払う際には他の給与と合算して源泉徴収する必要があります。
【取材協力税理士】
佐藤 全弘(さとう・まさひろ)税理士
お客様の立場にたって、わかりやすい税金を目指すとともに付加価値の高いサービスを提供することをモットーに、お客様のニーズに応えられるパートナーを目指して活動している。
事務所名 : 佐藤全弘税理士事務所
事務所URL:https://satouzeirishi.com/