「ゴルフ税」廃止か存続か、2020年の東京オリパラ前に決着も
税金・お金

ゴルフ場を利用する人に課される「ゴルフ場利用税」の廃止をめざす動きが活発化しており、議論を呼んでいる。廃止賛成派は2020年の東京五輪・パラリンピックを引き合いに「ゴルフ推進」につなげると言うが、世論の理解は広がるだろうか。
●通常国会で廃止が議論される可能性
産経新聞などの報道にによると、超党派のゴルフ議員連盟が、ゴルフ場利用税を廃止する議員立法をまとめた。五輪の正式種目であるゴルフの推進を図るのがねらいで、今国会への提出をめざすという。
ゴルフ場利用税とはいったい何なのか。地方税で、都道府県がゴルフ場の利用者に対して1日あたりおおむね400〜1200円を課して、この税収のうち7割はゴルフ場がある市町村に対して交付されるというものだ(税額は都道府県により異なる)。
ゴルフ場の経営者が利用者から税金を預かり、1カ月分をまとめて都道府県の税事務所に納める。税額は、ゴルフ場のホール数などにより変わってくる。利用者が18歳未満や70歳以上、障害者の場合などは非課税になる。
●中山間地域、「地域住民の血税」持ち出すことを警戒
総務省によると、2016年度の決算ベースで459億円の税収があり、うち325億円が市町村に交付された。
税収の規模は大きく、中山間地域の自治体などを中心につくる「ゴルフ場利用税堅持のための全国市町村連盟」はこれまで、貴重な税財源として、廃止に反対してきた。
2014年11月の要請書では、ゴルフ場に向かうための道路の維持管理、治水などの災害防止対策、ゴミ処理、農薬調査など環境対策といった「ゴルフ場特有の行政需要」に対応する必要があり、これらを享受するのはゴルフ場利用者だと指摘。
仮に廃止となれば、「ゴルフ場特有の行政需要を、地域住民のみの血税によって支えることとなり、ゴルフ場利用者が何も負担することなく、行政サービスを享受するのは不公平」として現行制度の維持を求めていた。
●交付金で減収分を「穴埋め」案
議連の案では、2020年の東京五輪・パラリンピックを目前に控えた同年4月からゴルフ場利用税を廃止し、これに伴って自治体が減収になる分を、国が交付金で穴埋めするという。
交付金がもらえるのは、2019年度にゴルフ場利用税による収入があった自治体になる見通し。廃止に伴う減収を懸念する自治体に配慮した形になっており、この枠組みが実現されるなら、廃止に反対する自治体は少なくなるかもしれない。
●「所得が高い人の競技で、担税力があり、負担継続が筋」
ただ、それでも反対意見は根強い。北海道や千葉県などと並び、全国でも3本の指に入るほどゴルフ場の数が多いとされる兵庫県では1月21日、井戸敬三知事がこの問題で廃止に反対する考えを改めて示した。
「スポーツだから税金をとってはいけないという論理はないはずですし、ゴルフは、利用者の所得水準からすると、一般のスポーツと比べて相対的には所得の高い人たちの競技で、担税力がある方々でもありますので、一定のゴルフ場利用税の負担を継続していただくというのが筋ではないだろうかと思います」
また、昨年11月、総務省の地方財政審議会はゴルフ場利用税について、「地方自治体の様々な行政需要に対し、受益と負担の観点から、利用者に税負担を求めることは合理的であり、廃止は不適当」との意見を表明した。
地方財政審議会は一昨年11月にも、「オリンピックの正式競技とされたことは、課税の必要性や合理性に影響を及ぼす事柄ではない」などと意見を出していた。
ゴルフ場利用税の廃止は、これまでも求める動きはあったが実らなかった。半世紀以上ぶりの五輪を機に廃止されるか、現状維持なのかーー。議論の行方が注目される。