知っておきたい会社印鑑の種類・使い分け・法的効力・注意点

“ハンコ文化”を疑問視する声が多くみられる昨今ですが、現状の法律では新しく会社を設立したり、法人成りしてビジネスをはじめるときには、会社で使う印鑑(会社印)を用意する必要があります。
このページでは、会社印をはじめて作るときのために、会社印の種類や使い分け方、法的効力や注意点など、会社印に関する基礎知識を解説します。
目次
会社の印鑑は何種類必要?
ビジネスでは、さまざまなシーンで印鑑が必要になります。すべて同じ印鑑にしてしまうと、紛失のリスクや、もしも盗用されてしまったときの被害が大きくなってしまうため、以下の4種類の印鑑を作成することが一般的です。

会社実印(代表社印)
会社実印は、代表社印とも呼ばれます。
前述のとおり、法務局での法人登記をする際に登録するものです。実務上では主に重要な契約書などで利用します。
具体的な規定はありませんが、一般的には、直径18mmの丸印で、会社名を外側の円に、役職名を内側の円に記載して作ります。
令和3年(2021年)2月15日から、登記の申請をオンラインで行う場合は、印鑑の提出を任意とする法改正がありました。ただし、会社印鑑を必要とする場面はまだまだ多くあるので、印鑑の作成自体が不要になった訳ではありません。
参照:法務省|オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)
銀行印
銀行口座の開設などのために銀行に届け出る印鑑です。
前述のリスク分散の観点や、実印と比べて使用頻度が高く経理担当者などの従業員に持たせるために、実印とは別のものを用意します。
一般的には、会社実印と区別がつきやすいように一回り小さい丸印で、会社名を外側の円に、「銀行之印」という文字を内側の円に記載して作ります。
なお、ネット銀行で法人口座を開設する場合には、銀行印(届出印)が不要なケースもあります。
角印(社印)
角印は社印とも呼ばれ、一般的には会社名を記載した角印を作ります。
会社の認印として、主には注文書や請求書などの社外文書のほか、稟議書などの社内文書に用います。
実は、注文書も請求書も押印は法律上の義務はありません。請求書に至っては、口頭で行うこともできます。そのため角印(社印)は必須ではありません。
とはいえ押印の慣習は未だに根強く、なかには印鑑がない請求書を受け付けない会社もあるようです。
そのため、角印も用意しておくに越したことはないでしょう。
住所印(ゴム印)
住所印はゴム印と呼ばれます。
主に利用するケースは角印と同様ですが、会社名のほかに会社住所・電話番号などを記載して作るため、住所などを手書きすることを省くことができる便利な印鑑です。
書体や素材の種類
一般的な書体は「篆書体」か「印相体」
さまざまな書体の中から好みの書体を選んでも大丈夫ですが、一般的には「篆書体(てんしょたい)」か「印相体(いんそうたい)」が用いられます。
社名が英語行記なら「古印体(こいんたい)」が使われることもあります。
素材は「チタン」が人気
かつては「黒水牛」や「象牙」などが使用されてきましたが、近年では耐久性の高い「チタン」が人気です。
素材についても特に法的な縛りはなく、好きな素材を使って自作することもできますが、耐久面など証拠能力を保つためには自作するのはおすすめできません。基本的には、ハンコ制作専門業者に作成してもらうのがよいでしょう。
印鑑の法的効力に種類は関係ない
一般的に作成する4種類の印鑑を紹介しましたが、法律上はそれぞれの印鑑の違いは定められていません。つまり、どの印鑑を使ったとしても、その法的な効力、すなわち証拠能力に違いはありません。
このため、会社印を作ったときは、このことを頭に入れて運用ルールを定めるなど、すべての印鑑をしっかりと管理するようにしましょう。
法的な効力に違いが出るのは、印鑑の種類ではなく、「署名」「記名」「捺印」「押印」の違いによります。普段は何気なく使っているこれらの言葉ですが、実際には異なります。
「署名」とは本人が氏名を手書きすることを指し、「記名」とは本人の手書き以外の代筆やゴム印、パソコンなどで印字して印刷することを指します。
「捺印」とは署名に対して印鑑を押すことを指し、「押印」とは記名に対して印鑑を押すことを指します。
記名と比べると、署名は筆跡鑑定などで署名した人を特定することができることから証拠能力としては強くなりますので、以下の順に証拠能力は高くなります。
署名捺印>署名のみ>記名押印
なお、記名のみでは法的な効力は発生しません。
覚えておきたい印鑑の注意点
すでに意識しているかも人も多いと思いますが、くれぐれも以下のようなことには注意しましょう。
三文判を会社実印にしない
ホームセンターや文具店で販売されている安い印鑑を三文判といいます。
このような印鑑は全く同じ印鑑を入手することもできるため、実印として登録したり、銀行印にすることはとても危険です。
捨て印や白紙委任状への押印は避ける
契約書などの文書で訂正が出たときのためにあらかじめ欄外などに印鑑を押すことを「捨印」、代理人や委任内容が白紙の状態の委任状を「白紙委任状」といいます。
捨て印や白紙委任状は、悪用されるととても危険ですので、信用できる相手でも極力避けましょう。
おわりに
最近ではテレワークなどの推進によりデジタル化が奨励される情勢ということもあり、“ハンコ文化”を疑問視する声も多くみられます。しかし、まだまだ日本のビジネスにおける印鑑の重要性は高いままです。いざというときに慌てないためにも、早めの準備段階で用意しておきましょう。
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