人気歌い手「スタッフの借金4815万円立て替えた」 贈与とみなされるリスクは?
贈与税

チャンネル登録者数359万人の人気歌い手まふまふさんが、5月5日にYouTubeのライブ配信をおこない、自身の会社スタッフが詐欺被害で背負った4815万円の借金を立て替えたことを明かした。
このスタッフは、Vtuberとしても活動している万屋ニコさん。暗号資産(仮想通貨)関係の投資をしたところ、サービスサイトそのものに実態がなかったようだ。
多額の負債が発生し、まふまふさんに泣きながら連絡。借金4815万円を立て替えてもらったという。配信にも登場した万屋さんは、給料や活動による収入、土日などの空き時間を活用したアルバイトなどを通じて、「コツコツと返済していく」と話している。
今回の詐欺の実態は定かではないが、個人間で5000万円近い大金がやり取りされていることは、税務署視点ではどのように映るのだろうか。借金を立て替える際の注意点を鈴木洋輔税理士に聞いた。
●税務署は 「実際に返済しているか」をみている
——借金の立て替えは贈与にならないのでしょうか?
今回のケースでは「返済していく」と本人が明言しているため、すぐに贈与と判断されるわけではありません。
ただし、借金を肩代わりしてもらったにもかかわらず、そのまま返済をしない場合には、「贈与」とみなされる可能性があります。
「手元にお金が残らないのに、なぜ贈与になるの?」と思う方もいるかもしれませんが、相続税法第8条では、第三者が借金を引き受けた場合、それも贈与とみなして課税すると定められています。
贈与とみなされた場合は、最高税率55%が適用され、約2187万円の贈与税がかかると見込まれます。
——返済していれば贈与税にはならないということですね
万屋ニコさんが一時的にお金を借りて金融機関に返済し、その後、分割でまふまふさんに返済しているのであれば貸し借りの関係となるため、贈与には該当しないと考えられます。
なお、利子については、個人同士の貸し借りであれば利子を取るかどうかは任意です。ただし、もし会社を通じてお金を貸している場合(会社からの貸付にあたる場合)は、利子を取らないと税務上問題となる可能性があります。
——税務の現場では返済実態をどこまでみられるのでしょうか。立て替え払いの注意点を教えてください
税務の現場では「本当に貸し付けなのか、それとも実質は贈与なのか」という点が確認されます。
たとえば、「ある時払いの催促なし」や「出世払い」など、返済の見込みが不明確な場合には、形式上は貸付でも、実質的には贈与と判断される可能性があります。
そのため、契約書や返済スケジュールなどの形式面に加え、実際に返済が行われていること、特に預金口座を通じた送金記録など、実態を示す証拠も重要視されます。
【取材協力税理士】
鈴木洋輔(すずき・ようすけ)税理士
地主様の相続と土地活用を支える税理士。ご家族の想いや悩みに寄り添いながら、財産を守り、想いを次の世代へつなぐサポートをしている。
税務の専門知識はもちろん、「家族を想う気持ち」や「将来への不安」にもしっかり耳を傾け、安心して相談できる存在として、相続や土地のことで悩む方々から日々多くのご相談を受けている。
事務所名 :鈴木洋輔税理士事務所
事務所URL:https://famvision.jp/