遺言書で火葬埋葬方法を指定できる?遺言書で指定できることとできないこと

相続対策に有効とされている「遺言書」は、原則としてなんでも自由に書くことができますが、書いたとしても法的効力が及ぶ事項と、書いたとして法的効力の及ばない事項があります。
例えば、自分の死後の「火葬埋葬方法」を指定したいという場合、遺言書に書いて指定することはできるのでしょうか。
そこで今回は、遺言書に書いて法的な効力が及ぶ事項とそうでない事項について、具体的に解説したいと思います。
目次
法的な効力が及ぶ「遺言事項」とは?
遺言書に書いてはいけないことはありませんが、法的効力が及ぶ事項は限られています。 民法によって定められた、遺言書に書いて法的な効力が生じる事項のことを「遺言事項」といいます。主な遺言事項は以下のとおりです。
【財産に関する遺言事項について】
- 祭祀主催者の指定
- 相続分の指定や指定することの委託
- 特別受益の持戻し免除
- 遺産分割方法の指定や指定することの委託
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺贈について
- 遺留分減殺方法の指定について
【身分関係に関する遺言事項について】
- 遺言による認知
- 未成年後見人及び未成年後見監督人の指定
- 推定相続人の遺言廃除・取消し
【その他の遺言事項】
- 遺言執行者の指定や指定することの委託
これらの内容については、遺言書に書くことで法的な効力を持ちます。すなわち、有効な遺言書であれば、原則としてその遺言書に従って遺産分割が行われることになります。
遺言事項以外については、遺言書に書いたとしても、法的な効力は及びません。
よくある遺言事項に関する誤解

遺言書の中には、実際に書かれることは多いが遺言事項に該当せずに効力を持たないものや、遺言事項ではないと思いきや実は遺言事項だったりするケースがあります。
誤解の起きやすいケースは以下のとおりです。
遺言書で「火葬埋葬方法」を指定した場合
自分の死後の葬儀に関しては、祭祀主催者(お墓などを管理する人)を遺言書で指定することはできますが、自分自身の火葬埋葬方法を指定しても法的な効力はありません。
最近では、海への散骨を希望する人がいるなど、昔に比べて火葬埋葬方法の選択肢が増えてはいますが、遺言書で指定して相続人に従わせることはできません。
火葬埋葬方法を指定したい場合は、生前に家族に直接意思を伝えておくことが一番確実です。
生命保険金の「受取人」を指定した場合
生命保険金の受取人については、原則として保険契約の際に記入した「受取人」となります。また、先ほどの遺言事項の中にも、生命保険金の受取人の指定については記載がないため、遺言事項ではないと考えられますが、実はこれには例外があります。
生命保険金の受取人については、以前から遺言書で指定されるケースが多く、その度に保険会社が頭を悩ませてきました。その結果、平成22年に保険法が改正され、正式に遺言書で保険金の受取人が変更できるようになりました。
よって、遺言書で生命保険金の受取人について記載すれば、従来の契約内容から変更できます。しかし、保険契約の受取人名を変更する手続きをとることでもこの問題は解決できるでしょう。
「寄付」をする場合
自分の死後に、遺産をユニセフなどに寄付をしたい場合、その旨を遺言事項として遺言書に記載することは可能です。
寄付については、先ほどの遺言事項に含まれていないようにも見えますが、これについては「遺贈」という扱いになり、遺言事項として扱われます。
ただし、寄付する場合は相続人からの反対が起こる可能性があります。スムーズに遺産を寄付させるためには、遺言書において「遺言執行者」を指定しておくことが重要です。
法的効力がなくても、書いた方が良いこと
このように、遺言事項に該当するかどうかによって、法的効力の有無が決まるため、遺言事項以外は書かない方がよさそうに感じるかもしれませんが、そうではない場合があります。
遺言書は法的な文書であると同時に、家族に宛てた「メッセージ」でもあるので、遺言書を残すうえで、その遺言書を書くに至った理由や動機を、遺族ができる限り納得いくよう説明することが大切です。特に、法定相続分とは違う分け方を指定する場合は、なぜそのような決断をしたのか、納得できるよう理由を書き記すことが重要です。
また、それぞれに感謝の言葉を書くことで、より遺言書の内容に相続人が理解を示す可能性が高くなります。
このように、遺言書において法的効力はないものを「付言」と言います。
おわりに
遺言書を書く上で大切なことは、今回ご紹介した「遺言事項」と「付言」の違いを理解することです。これから書こうとしていることに、法的効力があるのかないのか、自分で理解して書くかどうかによって、遺言書の完成度は違ってきます。
遺言事項を付言によって補足をする感じで遺言書を作成すれば、納得できる遺言書が作成できるでしょう。
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