よくある5つの事例で学ぶ「遺産分割~遺言・寄与分・特別受益~」

相続が発生したときに、遺産分割で揉めて話がまとまらないケースはとても多いようです。このページでは5つのよくある事例を元に、遺産分割のトラブルを未然に防ぐ方法やその対処法として理解が欠かせない遺言・寄与分・特別受益についてご説明します。
目次
法定相続人以外に遺産を残したいケース
ケースの例
Aさんには息子であるBさんがいますが、折り合いが悪く、Bさんには遺産を相続させたくはないと考えるようになりました。そこでBさんの子、つまりAさんの孫であるCさんに遺産を残したいと考えています。
遺留分に注意して遺贈しよう
法定相続人以外の人に遺産を残したい場合は遺言を残しておく必要があります。
このケースでは遺言書でCさんに財産を残すことを書いておけばCさんに遺贈という形で財産を渡すことができます。
ただし、Bさんには遺留分というものがあります。遺留分とは、配偶者・子・親が相続人になる場合、今後の生活のため等を考慮し、最低限の財産を相続することができる権利のことです。このため、遺留分を侵害しないように注意して遺言を残しましょう。
特定の相続人に財産を残したくないケース
ケースの例
Aさん・Bさんの兄弟は過去に父が亡くなったときに遺産相続について法廷で争ったことがあります。Aさんは配偶者も子もいないため、Aさんが亡くなった場合、BさんがAさんの遺産を相続することになります。しかし、過去の遺産相続による争い以降、Bさんへの不信感は拭えません。AさんはBさんに遺産を相続させたくないと考えています。
遺言書で相続財産の扱いを指定しよう
今回のケースではAさんが亡くなった場合、BさんがAさんの遺産を相続することになりますが、Aさんはそれを避けたいと考えています。兄弟姉妹には遺留分が無いため、遺言書を作成しておけば、Aさんの遺産がBさんに相続されるのを避けることもできます。
なお、Bさんに相続させない場合、このケースでは相続人がいなくなってしまいます。このような状態を相続人不在と言います。相続人不在の場合、相続財産管理人が選任され、相続人を探す手続きを13ヶ月以上続けます。それでも相続人がいない場合は、最終的に相続財産は国庫に帰属することになります。
特定の相続人に遺産を多く残したいケース
ケースの例
Aさんには3人の娘(Bさん・Cさん・Dさん)がいます。老後は娘に世話をしてもらわざるを得ないと考えたAさんは、3人の娘と話し合いの場を持つことにしました。BさんとCさんは老後の面倒を見る余裕はないそうですが、Dさんは面倒を見てくれるそうです。それを受け、AさんはDさんに多く遺産を残したいと考えています。
遺言書で相続財産の割合を指定しよう
遺言書では法定相続分によらない相続財産の分配を指定することもできます。
このケースでは、遺言を残さない場合、Bさん、Cさん、Dさんがそれぞれ1/3ずつ遺産を相続することになります。そこで、Dさんが多くなるように誰がどれくらいの財産を相続するのかを指定する遺言書を残しましょう。
ただし、この場合も遺留分には注意しましょう。また、できれば事前に遺言の内容について相続人全員の理解が得られるように話しておくとよいでしょう。
寄与分を主張し住居の売却を防ぐケース
ケースの例
AさんはBさんとの2人姉妹です。父は既に他界しています。Bさんは結婚を機に家を出ましたが、Aさんは体が弱い母を助けるため、母との同居を続けていました。今回母が亡くなり、遺産相続について話し合うことになりました。
相続財産は、Aさんと母が暮らしていた不動産(家・土地)と預貯金です。相続人はAさんとBさんの2名です。Aさんは長年母と暮らした家に愛着を持っており、その家を相続をしたいと考えています。
しかし、不動産の評価額は2000万円、預貯金が1000万円であるため、法定相続分に沿って遺産を1/2ずつ相続する場合、Bさんに支払う500万円を用意することができないため、住宅を手放さなければなりません。
寄与分制度を活用しよう
寄与分制度とは、被相続人に貢献してきた相続人が法定相続分よりも多く相続することができる制度です。被相続人の事業の手助けや介護などによって、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人にこの寄与分を主張する権利があります。
今回のケースでは、Aさんは長年母と同居し支えてきました。長年の看病によって母を支えたAさんには寄与分を主張する権利があると言えるでしょう。寄与分には明確な基準はなく、相続人同士で話し合い決めることになります。Bさんからの理解が得られる場合、Aさんは希望通り不動産を相続できる可能性があります。
ただし、BさんがAさんの寄与分を認めない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて協議をすることとなります。
過去に被相続人から贈与を受けた人がいるケース
ケースの例
Aさんの父が亡くなり、母とAさん・Bさん兄弟の3人が遺産を相続することになりました。遺産総額は3000万円です。通常ならば母が半分の1500万円、AさんとBさんが750万円ずつ受け取ることになります。しかし、Aさんは過去に住宅を購入するときに父から1000万円の贈与を受け取っていました。
特別受益を考慮した遺産分割を検討しよう
被相続人から相続人に対して行われた生前贈与や遺贈された財産を特別受益といいます。
相続人の中に被相続人から特別受益を受けた人がいる場合、その人が他の相続人と同じ相続分を受けてしまうと不公平になってしまいます。こういった不公平をなくすために、特別受益を受けている相続人はその分少なく相続することがあります。特別受益に明確な基準はなく、相続人同士で話し合い決める必要があります。
今回のケースでは、Aさんが父から1000万円の贈与を受けています。特別受益を考慮に入れて遺産を分配する場合、3000万円に贈与分の1000万円を足した4000万円を3人で分配します。法定相続分は、母が2000万円、AさんBさんが1000万円ずつとなります。Aさんは過去に1000万円の贈与を受けているため、相続財産の3000万円は、母が2000万円・Bさんが1000万円を相続します。
特別受益を考慮して遺産分割するかどうか話しがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて協議をすることとなります。
おわりに
遺産分割によるトラブルを防ぐためには、遺言書を残したり、事前のコミュニケーションが大事です。また、トラブルになった際には、相続に関する仕組みを理解し、冷静に対処するとよいでしょう。このページが遺産分割について参考になれば幸いです。
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