投資物件を「買った金額よりも安く売ったら税金はかからない」ってホント?

昨年頃から東京都心部の物件価格は値上がりしているようで、一部の投資家はこれを機会に売却して利益を確定し始めているようです。高く売れて喜ぶ投資家が多い中、売却した際の「税金」に関して心配をする人からよく質問を受けることがあります。
中でも多いのが「買った金額よりも安く売ったから、税金はかからないですよね?」という確認の質問です。本人は念のために聞いているようですが、実はこの認識は間違っています。そこで今回は、多くの人が勘違いしている投資物件を売った場合の「税金」のかかり方について解説します。
目次
投資物件を売却するとかかる主な「税金」
投資物件を売却すると、「所得税」と「住民税」という2つの税金が課税される可能性があります。売却することを「譲渡」といい、譲渡によって発生する所得に対して課税されるため、譲渡所得税といった呼び方をすることもあります。
税率については、投資物件を保有していた期間に応じて次のように異なります。
短期譲渡所得
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の土地や建物を売ったときは、以下の税率となります。
所得税:30%
住民税:9%
※平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と一緒に納税する必要があります。
長期譲渡所得
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったときは、以下のような税率となります。
所得税:15%
住民税:5%
※平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と一緒に納税する必要があります。
このように、税率については投資物件の保有期間が5年を超えないうちに売却をすると、2倍の税率で課税されてしまいます。
よって、投資物件を売却する際には、できる限り長期譲渡にかかるまでは保有していた方が良いでしょう。
譲渡所得の計算方法
さて、ここからが本題です。
投資物件を売った場合、実は、買った時の金額よりも安く売ったとしても、譲渡所得が発生する可能性があります。
投資家の多くは、2,000万円で買った物件を1,500万円で売っても利益がないから税金はかからない、という認識の方が多いのですが、実はそうではありません。
所得税や住民税が課税される対象となる「譲渡所得」は次の計算式によって算出します。
譲渡所得=譲渡収入金額ー(取得費+譲渡費用)
譲渡収入金額とは、簡単に言うと投資物件を売却した価格です。ここまでは特に間違いないと思いますが、問題は「取得費」です。
取得費は減価償却を差し引いた金額になる
取得費とはすなわち「買った金額」ではあるのですが、ここの認識にずれがある方が多々いるため注意が必要です。
ここで言う「買った金額」とは、当初の投資物件購入金額そのものを指しているのではなく、「減価償却を差し引いた金額」となります。
アパートやマンションは、土地と建物から構成されていますが、このうち「建物部分」の価格については、購入してから毎年減価償却して経費として計上しているはずです。
減価償却とは簡単に言うと「ものの劣化代」のようなもので、耐用年数に応じて徐々に経費化していく仕組みのことを言います。
自分がいくら減価償却しているかわからない、という場合は、直近の確定申告書(不動産所得用)の収支内訳書の裏面を見てみましょう。
そこに、建物部分の「未償却残高」が記載されているはずです。
買った金額より安く売っても税金がかかる理由
未償却残高とは、すなわち、現時点における建物部分の残存価格であり、この金額に土地の価格を合計した金額が「買った金額」ということになります。
土地の価格については、確定申告書に直接記載されていませんが、購入時の建物の価格については確定申告書に記載されているため、購入時の売買代金から建物の価格を差し引けば土地の価格を算出することができます。
場合によっては、土地と建物以外に「建物付属設備」としてさらに内訳を分けて減価償却をしている人もいるため、詳しくは確定申告書を持参して税理士に確認することをおすすめします。
買ってからの保有期間が長ければ長いほど、減価償却が進むため、譲渡所得の計算上の「買った金額」はどんどん下がっていくことになります。
そのため、2,000万円で買った投資マンションでも、減価償却が進んでいれば、たとえ1,000万円で売ったとしても、譲渡所得が発生する可能性があるということなのです。
おわりに
譲渡所得の計算は、買った金額から売った金額を引くという単純なことではありません。 すでに計上が終わっている減価償却分については、譲渡所得の計算においては差し引かなければならないため、保有期間が長くなればなるほど、高く売れた場合の譲渡所得が大きくなります。
長期譲渡所得となれば、税率は低くなりますが、譲渡所得については高くなる可能性があるため、そのあたりの仕組みについて十分理解した上で、いくらでいつ売るべきか判断するようにしましょう。
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