税務調査における「売上」と「仕入」のチェックポイントとは?

事業を行っている人にとっては、避けては通れないのが「税務調査」です。自分では正しく経理処理や税務申告をしていると思ってはいても、税務署がどのような着眼点で指摘を行っているかは気になるところです。
そこでこの記事では、税務調査で指摘されやすい「売上」と「仕入」について、ポイントを絞って解説していきます。
目次
売上におけるチェックポイント
税務調査で指摘されやすい項目として、まずは企業活動の中心となる「売上」が挙げられます。
税務署が売上を確認していく際には、「売上除外がないか」「売上の計上漏れがないか」という点が、基本的なチェックポイントとなります。法人税は、企業の所得に課税されるので、所得を減らすために売上を過少に申告していないかを調べるわけです。
売上金額を少なく申告する売上除外や、売上の計上漏れがあると、場合によっては重加算税が課せられる可能性があります。重加算税はほかの加算税に比べて税率が高く、重いペナルティとなるため、企業としては真っ先に注意を払うべき項目といえます。
それでは具体的に、税務署は売上に対して、どのような着眼点で調査していくのでしょうか。
売上の計上漏れはないか
まず、売上高をチェックする際には、関連する帳簿や実際の在庫の状況と照らし合わせて、矛盾が生じていないかを確認していきます。
つまり、受注状況と製品の出荷記録や、棚卸状況の記録、日々の在庫の受け払い帳簿などと、実際に計上されている売上高を照らし合わせ、売上高に反映されていないものがないかを確認していくのです。
たとえば、棚卸資産の販売について、出荷記録から引渡日が明らかであり、さらに引渡しが完了していることが確認できるのに、代金を全額受領していないという理由で売り上げから除いているという場合は、税務調査においては指摘の対象となります。
また、製品の受け払い(入庫・出庫・移動)などのほかに、売掛金残高や売掛金の推移も調べられます。決済状況をチェックし、売上高がきちんと計上されているのかなども確認していきます。
このほか、売上除外がないかという観点から、領収書の控えなどの伝票と帳簿を突き合わせ、それぞれの取引がきちんと売上に反映されているのかなども調査します。
計上基準日は継続適用されているか
出荷または検収の時期も、重要なポイントです。売上高の計上時期は、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることになった日などがありますが、売上計上は、同じ基準日を継続して適用してしていくことが重要です。
そのため、たとえば今期は利益が多く出そうなので、通常なら出荷基準で計上している売上の一部を、相手方の検収基準にして翌期に回したりすると、税務調査では指摘の対象となってしまいます。
税務調査では、翌期の売上内容を確認し、期ずれとなっていないか、そもそも売上高の計上時期は妥当なものなのか、計上時期は継続適用されているのかといったことを調べます。
仕入におけるチェックポイント
次は、「仕入」における税務調査のポイントを見ていきましょう。仕入は費用に通じる項目となるため、基本的には「多く計上されていないか」という観点で見られることになります。
架空の仕入れがないか
具体的には、架空の仕入れがないか、また、翌期に計上すべきところを当期に計上する仕入額の繰上げ計上がないかといったことを確認していきます。
税務署の着眼点として、仕入は在庫の動きと矛盾なく連動しているか、ということがあります。つまり、日々の入庫・出庫記録や、棚卸資産を調査し、仕入計上額と矛盾しないかを確認していくのです。
棚卸資産については、現場を確認して、保管状況などが帳簿と矛盾しないかを確認していきます。また、帳簿上の期末前後の仕入額を確認したり、売上金額から在庫として計上されている額の妥当性を検証することもあります。その過程で、倉庫への入荷記録がないとして、架空仕入れが判明することもあるのです。
資料で裏付けが取れるか
また、取引先に対する預け在庫がないかということもチェックします。場合によっては取引先に対して「反面調査」を行い、取引先の帳簿と矛盾がないかも確認していきます。
なかでも、現金取引や定例的ではないスポット取引、所在地とは離れた場所で行われた遠隔地取引については、架空仕入れではないかという観点で詳しくチェックされる傾向にあります。そのため、これらのイレギュラーな取引については、架空仕入れではないという資料を、事前に準備しておくことが望ましいといえるでしょう。
さらに、買掛金残高や買掛金などの決済状況や、納品書等の伝票と帳簿を突き合わせて調べることで、架空仕入れがないかどうかも確認していきます。
誤りやすい項目のチェックポイント
このほか税務調査において、誤りが散見される点として、以下のようなポイントがあります。
まず、棚卸資産に付随費用が正しく計上されているかです。また、棚卸資産の評価損を計上している場合は、その妥当性があるかという点について、申告ミスの指摘を受けることがあります。
これらについては関連資料をきちんと確認し、在庫の金額に誤りがないかを、あらかじめ検討することが必要になります。
おわりに
売上と仕入に共通している税務調査のポイントは、関連帳簿や実際の在庫の動きとの整合性を、きちんと説明できるようにしておくことです。
脱税目的で、故意に架空仕入れや売上除外を行うことはもちろん論外ですが、売上・仕入という大きな項目について、各種帳簿との連動を事前に把握しておけば、税務調査が入っても自信をもって説明できます。
いつ税務調査が来てもいいように、関係する帳簿や在庫状況との連動をきちんと確かめておきましょう。
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