【世界の消費税事情】世界からみた日本の消費税は高い?低い?

2019年10月より、消費税が8%から10%に引き上げられる予定です。消費税が10%になると、1万円のモノを購入するのに1千円の税金を支払わなければいけなくなります。
税金の仕組みは国によってさまざまですが、消費税という税金はほとんどの国が導入している税制です。では世界の消費税と比べて、日本の消費税は高いのでしょうか、低いのでしょうか?また、そもそも消費税ってどんな仕組みなんでしょうか?
今回は世界から見た日本の消費税について解説します。
目次
消費税の仕組みって?
消費税とは、消費者がモノやサービスの購入を行う際に負担する税金です。消費税は間接税であるため、納税は負担者である消費者ではなく、モノやサービスを供給する事業者が行うものとされています。
今の日本の消費税は8%ですが、正確には「国税」分の6.3%と「地方消費税」分の1.7%で構成されています。国税は国庫に納付される税金で、地方税は東京都などの地方公共団体に納付される税金のことです。
課税方法には「多段階形式」が採られており、事業者があげた利益部分に課税がされるものとなっています。1万円のマスクメロンを購入した場合を例として、具体的な消費税の仕組みをみてみしょう。
- メロン農家が、マスクメロンを仲卸業者に都内の市場で、5,000円+消費税で買ってもらう。
→ 5,000円 ✕ 8% = 400円 の消費税を農家が納付する。 - 仲卸業者が、マスクメロンをフルーツ小売店に8,000円+消費税で卸す。
→ 8,000円 ✕ 8% ー 5,000円 ✕ 8% = 240円の消費税を仲卸業者が納付する。 - 小売店が、マスクメロンを1万円+消費税で販売する。
→ 1万円 ✕ 8% ー 8,000円 ✕ 8% = 160円の消費税を小売店が納付する。
結果として、発生した総消費税額 400円 + 240円 + 160円 = 800円が、消費者が負担する税額 1万円 ✕ 8% = 800円 に等しくなります。
日本の消費税の歴史
日本ではじめて消費税が導入されたのは1989年4月、竹下登政権のときでした。その後、1997年に5%、2014年に8%へと増税されてきました。それに伴い、消費税の税収は3.3兆円程度から17兆円を超えるまでになりました。
消費税の導入および増税の背景には、社会保障費の増大という問題がありました。社会保障給付費は1980年には24.8兆円、1990年には47.4兆円、2000年には78.4兆円、そして直近の2017年の予算ベースでは120.4兆円と、急激な膨らみをみせています。
現在の消費税の使途は、拡大する社会保障費の財源と決められています。加えてより根本的な課題であるプライマリーバランスの黒字転換、つまり財政健全化のために、一層の消費増税が必要だということが、経済学者や税理士など専門家の間で言われています。
こうした事情を踏まえて、安倍内閣は2018年1月現在で、2019年10月1日から消費税率を10%に増税する計画を推し進めています。
世界の消費税事情
では世界の主要国の消費税事情は、どのようになっているのでしょうか?経済規模の大きな国の消費税について、下表にまとめました。
国・税制名 | 消費税率(太字は標準税率、ほか軽減税率) |
---|---|
カナダ(国税、州税、HST) | 0%〜13%(税金の種類による) |
ブラジル(商品流通サービス税) | 0%〜20%(取引形態による) |
インド(物品・サービス税) | 0%、5%、12%、18%、28% |
イギリス(付加価値税) | 0%、5%、20% |
イタリア(付加価値税) | 0%、5%、12%、18%、22% |
フランス(付加価値税) | 2.1%、5.5%、10%、20% |
中国(増値税) | 6%、11%、17% |
ドイツ(付加価値税) | 7%、19% |
日本(消費税) | 8% |
韓国(付加価値税) | 10% |
ちなみにアメリカでは、多くの州で売上税と使用税という税金が存在します。売上税は消費税のように製造者から消費者まで商品を購入するたびに課税されるのではなく、最終消費者が購入したときだけに課税される単段階形式となっています。
アメリカでは、前述した1万円のマスクメロンを購入した場合の800円を小売店が納付するのみであり、農家や仲卸売業者は売上税を納付しません。アメリカは州により売上税率が異なり、より低い売上税率の州や売上税がない州で物品を購入することにより、売上税率の高い州の店が衰退するのを防止するために使用税が設けられています。そのため、最終消費者は、所得税の確定申告時に他の売上税率の低い州で物品を購入した場合、物品を使用した州において売上税の差額を収めなければなりません。
世界から見て日本の消費税は何番目?
表からは、日本の消費税率は主要国のなかでも低水準であることが読み取れます。実は消費税の標準税率が世界で最も高いのはハンガリーの27%です。そして日本の8%は、世界で141位です。経済大国である割に、消費税率は著しく低いことがわかります。
日本の税金って高いの、低いの?
さらに、世界的には軽減税率を導入している国が多いことも分かります。軽減税率とは、特定の生活必需品などの物品に対して、標準税率より低い税率を課す制度のことです。
軽減税率を導入することで、より消費税の負担を公平なものにすることができると言われています。より高価なぜいたく品に高率の課税をし、必需品には軽減税率を用いることで、所得に応じた効率的な課税になるのです。
この点を踏まえると、「消費税率が世界141位の水準であるから、日本の税金は低くて暮らしやすい」という主張には疑問符が付きます。日本では一律8%の課税ですが、その商品が必需品であれば、海外では軽減された税率になっていることも多くあるのです。
それゆえ、単純に標準税率だけを比較して消費税引上げの余地が大きいと考えることは適切ではないでしょう。
海外の事例
日本の将来の消費増税を見据えて、消費税率が高い海外諸国と日本とでは事情がどのように異なってくるのか比較してみましょう。
例えばノルウェーを始めとする北欧は、消費税率がいずれも25%程度と、非常に高水準です。その分、日本に比べると事業者の経費負担が重く、国全体の消費も活発化しづらいといえます。
他方、豊富な税収にもとづいて北欧諸国では社会福祉の充実化が図られています。国立大学の学費の国家負担や、条件付きで医療費を無償とするなど、国民が多くの保証を受けています。
北欧諸国では原油による貿易黒字が大きい、という財源上の違いもありますが、社会保障の充実に高率な消費税が寄与していることは、フランスなどの先進諸国を見ても示唆されるところでしょう。
おわりに
消費増税に関する見解は識者の間でも分かれることが多く、慎重に論ずるべき問題だといえます。今回は世界との比較で日本の消費税率について説明致しました。国によって経済・財政上の事情は当然異なりますが、日本の消費税率が低水準であること、世界的には軽減税率の導入が主流であることを踏まえつつ、消費税について考えてみましょう。
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