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JTがたばこの値上げ申請、なんでこんなに税金が上がり続けるのか 

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JTがたばこの値上げ申請、なんでこんなに税金が上がり続けるのか 
写真はイメージです(naka / PIXTA)

JT(日本たばこ産業株式会社)は、7月30日、財務省に対して、たばこ173銘柄について値上げの認可申請をしたと発表しました。これは、10月1日からのたばこ税増税に対応したものです。

代表的な紙巻たばこの改定価格は、「セブンスター、ピース」(20 本入)で、現行の560円から600円になります。40円の値上げではありますが、心理的には600円台になると高くなったと感じる人も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は、たばこに関する税金の種類や税収の推移などを紹介し、今後も増税し続けるのかなどについて考察したいと思います。

●たばこの税金にさらに消費税が課せられる構造

たばこに関する税金で代表的なものが「たばこ税」です。たばこ税とは、「たばこ税法」に基づく税金で、製造たばこに対して課せられる間接消費税です。納税義務者は、たばこ製造業者と製造たばこを保税地域から引き取る者なので、日本の場合、「JT」とたばこの輸入業者ということになります。最終的には消費者に転嫁されるため、実質的な納税者は消費者です。

この「たばこ税」は国税ですが、地方税として「地方たばこ税」も課されています。地方たばこ税は、「都道府県たばこ税」と「市町村たばこ税」に分けられます。たばこの製造者や卸売販売業者が小売販売業者に売り渡した場合に課される税金です。小売販売事業者の所在する都道府県や市町村が卸売販売事業者等に税を課しています。

その他、「たばこ特別税」があります。たばこ特別税は、かつて国が管理していた国鉄と林野事業の赤字分を補填するために設けられた特別税です。国鉄と何の関係もないたばこに税を課すことには合理的な根拠はありませんが、健康志向を背景に世論を味方につけて赤字解消の財源としました。

さらに、これら税を含めた小売価格に対して10%の消費税が課せられています。税金に対して消費税の税率を掛けることは二重課税ではないかとの指摘がなされていますが、国税庁は、たばこ税などは販売価格の一部を構成しているとして、個別消費税が課税標準に含まれることは妥当であるとの見解を示しています。

国税庁は、製造業者が納税義務者だから、たばこ税は原価に含めるべきであり、消費税とは別という理屈を主張しています。しかし、消費税も納税義務者は事業者であって、一般消費者ではないことを考えるとその理屈は通りません。結局どちらも負担するのは消費者であって、税金に税率を掛けるのは二重課税以外の何物でもありません。

●たばこの税金は高いが、喫煙者は減っているため大きな反発になりにくい

次に、たばこに関する税の負担割合はどうなっているのでしょうか。財務省の資料「代表的な紙巻たばこ1箱当たりのたばこ税等の税額及び税負担割合」によると、540円のたばこの場合、たばこ税(国税)が126.04円(23.3%)、地方たばこ税が142.44円(26.4%)、たばこ特別税が16.4円(3.0%)、消費税が49.09円(9.1%)、合計333.97円(61.8%)となっています。

画像タイトル 財務省資料より

つまり、たばこの価格の約6割は税金で、540円のたばこの場合、たばこ本体の価格は、206.03円ということです。嗜好品とは言え、税金の割合が高いことは否めません。これだけの税金が課されていても反発の声があがらないのは、喫煙者の数が少ないからです。

厚労省の「厚生労働省国民健康・栄養調査」によると成人喫煙率は、令和元年度で男性が27.1%、女性が7.6%にすぎません。平成元年度は、男性が55.3%、女性が9.4%だったので、ここ30年でかなり喫煙者が減りました。

このように現在では、多数派は非喫煙者なので、たばこにいくら税を課しても反対運動は起こらないわけです。受働喫煙による健康被害の問題などもあるため、たばこに関してはもっと増税して喫煙者を減らすべきだと主張している人も多くいます。

●2兆円の税収がキープされ続けてきた

喫煙者は、年々減少を続けていますが、税収の推移はどうなっているのでしょうか。財務省の資料「たばこ税等の税収と紙巻たばこの販売数量等の推移」によると、紙巻きたばこの販売数量は、平成8年度の3483億本をピークに年々減少し、令和元年度では1181億本と約3分の1にまで落ち込んでいます。

画像タイトル 財務省資料より

一方、国と地方のたばこ税等の税収は、平成8年度以降も2兆円台をキープしています。2兆円を切ったのは平成30年度と令和元年度だけですが、これも10月1日からのたばこ税増税で2兆円台を回復するのではないかと思われます。

つまり、たばこ税等の税率は、税収ありきで考えられており、約2兆円という財源を確保するために、たばこの販売量が減少する度に税率を上げてきているわけです。たばこには中毒性があるため、価格が高くなっても一定数の人は購入します。そのため、税収は安定的に確保できます。喫煙者が少なくなれば、増税に反対する人も少なくなるため、増税しやすいという事情があります。

もっとも、極端に喫煙者が減少すると、2兆円の財源を確保することも難しくなるため、「加熱式たばこ」に対する課税の強化も始まっています。現時点では、「電子たばこ」についてはたばこ税の対象にはなっていませんが、将来的には、電子たばこについても課税対象となるかもしれません。

ドイツ銀行の「Mapping the World's Prices 2019」(Figure 22)によれば、代表的なたばこである「Marlboro」の価格は、最も高いのがオーストラリアで23.1USドル(約2541円)、最も安いのがナイジェリアで1.4USドル(約154円)となっています。日本は、5.4USドル(約594円)で、G7の中では最も安い価格です。そのため、まだまだ値上げの余地はありそうです。

●厚労省 VS 財務省の構図

喫煙は、呼吸器疾患や心疾患などを多くの病気を引き起こす可能性が指摘されており、予防できる死亡原因とされています。そのため、厚労省は、禁煙に向けた取り組みを積極的に行っています。また、受働喫煙による健康被害もあることから、健康増進法により原則屋内を禁煙とするなど、喫煙者に対する締め付けも厳しくなっています。

厚労省が禁煙に積極的に取り組む背景には、医療費の抑制があります。世間的にも喫煙の抑制は望まれていることであり、法による規制がなければ禁煙を進めることは難しいので、禁煙化の動きは社会的には歓迎されています。そのような事情から、たばこ税の増税で喫煙者を減らすべきであると厚労省は考えています。

それに対し、財務省は、JTの監督官庁で価格の決定権を持っています。安定的に2兆円を確保できるので、非常に重要な財源と見ています。増税による極端な価格の上昇は喫煙者の減少につながるため、財務省は慎重なスタンスを採っています。

JTは、元は「日本専売公社」として公的企業でしたが、民営化によって「日本たばこ産業株式会社」となりました。NTTやJRはかなり民間企業に近くなりましたが、JTだけは依然としてたばこの独占事業を行っています。

JTの取締役会長や常勤監査役という要職は、財務官僚の天下ポストになっており、事実上財務省と一体です。世論や厚労省の動きを見ながら、今後も2兆円という財源を維持するために財務省は絶妙なバランスで税率上げていくのではないかと思います。

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