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なぜ日本の会社員は税金を意識しなくなったのか 年末の還付で喜ぶ皮肉な現状

なぜ日本の会社員は税金を意識しなくなったのか 年末の還付で喜ぶ皮肉な現状
写真はイメージです(StudioR310 / PIXTA)

日本のサラリーマンは税金に対する意識が低いと言われています。その原因は、「源泉徴収」と「年末調整」にあります。源泉徴収制度によって、給与をもらう前に税金が天引きされ、年末調整があるため、自分がいくら税金を支払っているのか意識しないようになっているからです。

納税意識がなければ、税金が何に使われているかについて関心がなくなります。これは、政府にとって都合がよいことです。逼迫する財政状況の中、消費税の増税だけが議論され、「景気回復」という大義名分のもと歳出削減の議論はほとんどなされていません。果たしてこのままでよいのでしょうか。(ライター・メタルスライム)

●源泉徴収制度、第二次世界大戦を経て確立

源泉徴収制度が導入されたのは、昭和4年(1929年)の世界恐慌を引き金に、国内の大凶作も重なり、昭和7年(1932年)に地租の滞納が増えたことに端を発します。また、大都市圏を中心に会社勤めをする人が増え、所得税の滞納者が増えてきました。そこで、滞納を防ぐため、昭和15年(1940年)の税制改正で給与に対する源泉徴収を義務付けました。これが、サラリーマンの源泉徴収のはじまりです。昭和16年(1941年)になると、第二次世界大戦による軍事費捻出の必要性が高まり、できるだけ早く確実に税収を確保したいという要請にも合致するものであったため、制度として確立していきます 。

戦後は、GHQの下で税制改革が進められることになります。米国流の申告納税制度が原則となりましたが、戦後の混乱期にあって、税務職員の数も不足しており、すべての申告に対応することは難しい状況にありました。そこで、昭和22年(1947年)の税制改正で、給与所得者に対して年末調整制度が導入されました。この時、GHQは年末調整に反対したとされますが、人員不足は否めず、日本政府に押し切られる形で導入されました。

その後、抜本的な税制改革をするべく、米国の租税法学者であるカール・シャウプが招集されます。シャウプは、米国流の民主的な税制制度の導入について積極的に提言を行い、「シャウプ勧告」を取りまとめました。これが日本の現代租税法の礎になっています。シャウプ勧告では、年末調整事務は税務署にできるだけ速やかに移管すべきとしていますが、現在まで移管されることなく続いています。

財務省の「平成29年度租税及び印紙収入決算額調」によると一般会計の決算額が、58兆7874億円で、所得税の源泉分は、15兆6271億円になります 。割合でいうと「26.6%」で全体の4分の1にもなります。これだけの税収を何の文句も言われず、コストも掛けずに回収できるので課税当局にとってメリットが大きいのです。国民がよほど反対しない限り、源泉徴収制度と年末調整が廃止されることはないでしょう。

●海外との比較、源泉徴収制度は主要国で導入されているが…

海外では、給与所得者に対してどのような徴収方法をとっているのでしょうか。財務省の資料「主要国の給与に係る源泉徴収制度の概要(2018年1月現在)」から、主要国の源泉徴収制度と年末調整の導入状況をみてみましょう。

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源泉徴収制度は、アメリカ、イギリス、ドイツといった主要国においても導入されています。ただ、フランスについては、今年1月から導入されることになっており、導入に際してはかなりの反発もありました 。一方、年末調整制度は、イギリスとドイツはあるものの、アメリカとフランスにはありません。つまり、源泉徴収はされますが、あくまで自分で確定申告をして精算を行うというスタイルです。日本人が当たり前と思っている年末調整も、世界的には必ずしも導入されていません。

●源泉徴収と年末調整、裁判所は消極的な判断

サラリーマンから見て、自営業者は経費としていろいろ認められてうらやましいと思ったことはないでしょうか。この問題について裁判で争った事案があります。それが、「サラリーマン税金訴訟」と言われるものです。

事実の概要は、私立大学の教授であるXが、税務署長Yより課税処分を受け、その取消を求めて提訴したものです。その裁判の中で、必要経費の額が給与所得控除の額をはるかに上回る場合に超過分の控除を認めないのは不合理であるとして憲法14条(平等原則)に違反するとして争いました。

これに対して、最高裁は、憲法14条は、国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって、事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、憲法14条に違反しないとしました。

この事案では、給与所得者はその数が膨大であるため、各自の申告に基づき必要経費の額を個別的に認定して実額控除を行うことは、技術的及び量的に相当の困難を招来し、ひいては租税徴収費用の増加を免れず、税務執行上少なからざる混乱を生ずることが懸念される。そのことから、必要経費の控除について事業所得者等と給与所得者との間に設けた前記の区別は、合理的なものであり、憲法14条1項の規定に違反するものではないとしました。

税に限らず、行政事件については、司法府よりも行政府の方が専門性を有しており、裁判でもその判断は尊重される傾向にあります。サラリーマンにも個別経費を認め、全員が確定申告しなければならないとすれば、世間は大混乱に陥ります。そのことから、裁判所としては消極的判断をせざるを得ないという事情があります。

●年末調整による還付、喜んでいていいのか

これまで見てきたように「源泉徴収制度」は多くの国で採用されています。一方で、「年末調整制度」は、必ずしもどの国も採用しているというわけではありません。その理由は、民主的な納税制度と言われる「申告納税制度」が重要と考えられているからです。源泉徴収されたとしても、最終的に自分で確定申告すれば、いくら納税するかがわかり納税意識が自然に生まれます。そうすることで国民監視の力も働くことになります。それをアメリカやフランスは重要視しています。

それに対し、日本では、年末になると、サラリーマンの場合、生命保険料控除証明書などをかき集め、還付されたと喜んでいます。しかし、それは先に多く取られていた分が返ってきているにすぎません。本来なら利息も付かずに還付されるのだから、決して喜ばしいことではないのです。税金を意識させず、還付によって満足を与えることで、政府にうまくコントロールされているのです。

もっとも、確定申告することは慣れないと大変であることは間違いないので、年末調整を一概に否定するつもりはありません。ただ、源泉徴収票を受け取った時くらい、自分がいくら納税しているのか確認してみて下さい。無条件にいかに多くの税金が取られているのかわかるはずです。

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