アパート経営の落とし穴! 古くなると税金が跳ね上がるって本当!?

平成27年に相続税制の改正があり、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられました。この頃から特に目立って増えているのが、アパート経営による節税対策です。
ただ、この節税対策は、ある時一気に税負担が跳ね上がることをご存知ですか。これを知らずにアパート経営をしていると、将来納税資金に苦しむことになってしまいます。そこで今回は、アパート経営で税金が突然跳ね上がる理由と対策について解説します。
目次
アパート経営で節税できる税金は?
アパート経営をすることで節税できる税金の系統は、主に次の2通りあります。
相続税・贈与税・固定資産税など
土地を所有している場合、何もせずに更地にしておくと、土地の評価額が割高になるため、それをもとに課税される相続税、贈与税、固定資産税も自ずと割高になります。
そこで、更地にアパートを建てることで「貸家建付地」という扱いになり、都内であれば概ね20%程度評価額を引き下げることができます。
さらに、手持ちの現金でアパートを建てた場合、アパートの評価額は「貸家」扱いになるため、もとの現金の30〜40%程度まで評価額を引き下げることができます。
所得税・住民税
アパートを購入した場合、建物部分の価格については、減価償却によって毎年一定割合を経費として計上していくことになります。
仮に新築木造アパートだとした場合、法定耐用年数は22年なので、22年で分割して毎年経費として計上していくことになります。
これによって、毎年の確定申告書上は赤字を作ることができるため、損益通算によって、給与所得などと相殺して所得を引き下げることができるのです。その結果、所得税や住民税が節税できるのです。
なお、減価償却費は帳簿上の経費であって、実際にキャッシュアウトしていくわけではないため、赤字であってもキャッシュを積み上げていくことができます。
この2つのアパート経営による節税効果のうち、税金がある時点で跳ね上がるのは、所得税と住民税です。ではなぜ、そのような現象が起きてしまうのでしょうか。
22年目で訪れる減価償却の終わりと多額の税金
アパート経営によってキャッシュが積み上がっていく理由は、減価償却費のおかげで不動産所得が発生しにくいからです。
例えば、建物価格5,000万円の木造アパートを新築で建てたとします。
これを減価償却した場合、毎年計上ができる減価償却費は230万円です。これだけの経費を毎年計上できれば、不動産所得を大幅に圧縮することができます。
5,000万円✕0.046(耐用年数22年の償却率)=230万円
ところが、減価償却は永遠と続くわけではありません。木造の場合、減価償却は22年で終わりを迎えます。減価償却が終わると、それまで230万円もあった経費が翌年には一気にゼロになってしまいます。
これによって今までゼロ以下に抑えられていた不動産所得が、一気に跳ね上がることになります。所得が発生すれば、当然そこに所得税や住民税の負担がのしかかります。
減価償却とはあくまで概念のため、実際のキャッシュフローはこれまでと変わりありません。収入が増えたからそれに合わせて税負担も増えているのであれば問題ないのですが、アパート経営の場合は減価償却費という帳簿上の経費がなくなるだけなので、単に所得税や住民税の負担だけが増えることになるのです。
サラリーマン投資家の場合は、さらに注意
最近は不動産投資ブームのため、銀行から借り入れをして不動産投資をするサラリーマンもたくさんいます。
マイナス金利の影響で、銀行は不動産向けの貸付に積極的なため、安定収入さえあれば、一般的なサラリーマンでも新築アパートを購入することも夢ではありません。
ただしこの場合は、先ほどの減価償却費に加えて「返済利息」にも注意しなければなりません。銀行でローンを組んで不動産投資を始めた場合、ローン返済額の中の利息部分については経費として計上することができます。そして、返済利息については、毎年徐々に減っていきます。
つまり、ローンの利息分については経費として計上できるため、時間とともに利息という経費が減っていくことになります。
また、不動産投資で一般的な元利金等方式での借入の場合、利息が減っても毎月の返済額は変わらないため、経費が減って税負担リスクだけが高まっていくのです。
この現象が、減価償却費が消滅した時に追い打ちをかけてくるため、さらに税負担が苦しくなるのです。
アパート経営は軌道にのるとその後は利益が非常に出やすい事業です。にもかかわらず節税になるのは、減価償却費といういわば魔法の経費が使えるからなのです。
この仕組みをよく理解しないままアパート経営をしていると、23年目になって突然税金が跳ね上がり驚くことになります。
おわりに
対策としては、損益通算で節税ができるうちに、できる限りキャッシュを積み上げて備えておくか、減価償却が終わる前に売却して買い換えるなど事前に講じておくことがとても重要です。
もしも心配な方は、今年度分の確定申告を税理士に依頼して、今後どのような対策をとっていくべきなのかについて相談することをおすすめします。
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