株式取引の所得区分は?配当金や売却益の確定申告について解説

副業や不労所得を目的に株式取引に取り組もうとしている人もいます。この株式取引にも税金は関係するので、正しく知識を身につけておく必要があります。ここでは株式取引によって生じる所得と税金について見ていくこととします。
目次
株取引によって受け取れる所得の区分
株式取引によって生じる所得にはいくつかの種類があります。具体的には配当金、売却益、株主優待などです。では、これらはどの所得区分に該当するのでしょうか。
配当金(インカムゲイン)は「配当所得」
配当金とは「株式会社等が上げた利益を株主等に分配するお金」のことを言います。配当の有無や金額は株式等を保有する株式会社等の利益状況などによって変わります。また、受け取れる配当金は株式等の保有期間や保有株式数によって決まります。この配当金は所得税法上「配当所得」に含まれます。
株式売却・譲渡益(キャピタルゲイン)は「譲渡所得など」
株式の売却益や譲渡益とは「株式を売買することで生じた利益」のことです。上場株式等の取引であれば「上場株式等に係る譲渡所得」として扱われる一方、それ以外の取引であれば「一般株式等の譲渡所得」として扱われます。株式売却益・譲渡益の所得区分は事業所得、譲渡所得、雑所得とありますが、個人の場合は譲渡所得であるケースが多いです。
株主優待は「雑所得」
株主優待とは「株式会社が株主に対して提供する特典」のことです。具体的には自社サービスの招待券や割引券、食事券や図書カードなど様々あります。こうした株主優待も課税対象として扱われており、申告時には「雑所得」として扱われます。
配当金の課税・申告手続き
配当金を受け取ったら配当所得として申告手続きをします。その際の所得税の計算方法と申告のポイントを確認しましょう。
配当所得の計算方法について
配当所得の計算式は以下のとおりです。
配当所得額 = 収入金額(源泉徴収前のもの) - 株式取得にかかる借入金の利子
配当金の課税においては、この計算によって算出された配当所得額に対して所得税が課されることになります。ただし、配当金の場合は支払いを受ける際に以下の区分に従って、源泉徴収を受けることにもなっています。
上場株式等の配当金:20.315%分が源泉徴収される
上場株式等以外の配当金:20.42%分が源泉徴収される
この源泉徴収額は令和2年(2020年)4月1日現在法令等に適用されているものです。したがって、配当所得が生じている時点で一定の源泉徴収額が生じており、人によっては確定申告によって所得税の還付を受けられる可能性もあります。
配当所得の課税方法は2種類ある
配当所得の課税方法には「総合課税」と「申告分離課税」の2種類が用意されています。それぞれの違いは以下のとおりです。なお、申告分離課税を選択できるのは「上場株式等の配当金等」だけなので注意が必要です。
総合課税:給与所得などその他の所得の合計額に課税する方法
申告分離課税:その他の所得と分けて配当所得のみ課税する方法
このうち総合課税を利用する場合には「配当控除」を適用できますが、申告分離課税では「配当控除」を適用できません。配当控除は課税総所得金額などから決定されており、課税総所得金額が1,000万円以下であれば、下記の計算式で算出されます。
配当控除額 = 一定の配当所得 × 10% + 一定の投資信託による配当所得 × 5%
配当控除は、すべての配当所得を構成する所得で計算するわけではないことにご留意ください。
たとえば、日本の会社の配当による所得は、配当控除の対象ですが、海外の会社の配当による所得は、配当控除の対象ではありません。
確定申告時には、上記の計算式で算出された配当控除を差し引くことができるようになっています。
確定申告不要制度も選択できる
確定申告不要制度とは、配当所得を受け取っている納税者の判断で、確定申告をしないで源泉徴収で済ませる制度のことを言います。この制度を選択すると、配当控除や所得税等の源泉徴収税額の控除を受けられません。
制度を利用できるのは、以下の配当等です。
- 上場株式等の配当金(一定の大口株主を除く)
- 少額配当:1回の配当金が「10万 × 配当計算期間 ÷ 12」以下
- 特定株式投資信託・公募証券投資信託の収益の分配
- 特定投資法人の投資口の配当等
この確定申告不要制度は1回に支払いを受けるべき配当金額ごとに選択できることになっています。もしくは、源泉徴収選択口座内の場合は口座ごとに選択できるので、使い分けて利用することもできるので便利です。
配当所得等にかかる所得税・住民税の課税方式が統一化された
配当所得等について、2022年分までの確定申告では、所得税と住民税でそれぞれ異なる課税方式を選ぶことができました。
所得税の確定申告で配当控除を受けながら、住民税では申告不要とすることで、これらの所得は住民税の計算から外れるほか、国民健康保険料などの計算に影響を与えないようにすることが可能でした。
ところが2023年分の確定申告からは課税方式が統一化され、所得税の確定申告をした場合は、住民税も自動的に申告する方式に変更されています。
これにより、今後は確定申告して税金の還付を受けるか、住民税・国民健康保険料等への影響を踏まえ所得税・住民税ともに申告不要にするかなどの判断をする必要があります。
譲渡所得の課税・申告手続き
株式を売買して受け取った譲渡所得の申告手続きについて確認します。株式等を譲渡した場合は「申告分離課税」によって申告することになるので注意しましょう。
譲渡所得の計算方法について
株式の譲渡所得は上場株式と一般株式(上場株式以外のもの)とに分けて算出することになっています。
上場株式の譲渡所得額 = 譲渡価額 - 必要経費(取得費 + 手数料等)
一般株式の譲渡所得額 = 譲渡価額 - 必要経費(取得費 + 手数料等)
注意すべきポイントは、それぞれは別々に算出することになっているので、上場株式の譲渡所得額を一般株式の譲渡所得額から控除したり、その逆をしたりできないことです。上場株式の費用は上場株式に、一般株式の費用は一般株式に使っていく必要があります。
譲渡所得の課税方法について
譲渡所得の税率は上場株式でも一般株式でも「20%(所得税15%、住民税5%)」になっています。したがって、税額の計算方法は以下の通りになっています。
所得税額 = 上場株式の譲渡所得額 × 20%
所得税額 = 一般株式の譲渡所得額 × 20%
平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。この通りに計算して、それぞれの税額を算出して申告手続きをしましょう。
おわりに
株式取引によって生じる所得には、「配当金による配当所得」や「株式譲渡による譲渡所得」などがあります。これらは所得である以上、法律に則って申告しなければなりません。ただし、中には申告不要な場合もあるので、制度を理解した上で正しく利用してください。
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