よくある4つの事例で学ぶ「遺産分割~不動産編~」

相続が発生し遺産分割を行うとき、簡単に遺産分割できない財産が不動産です。長年住んでいた不動産であれば強い思い入れを持っている人もいるでしょう。また、不動産は一般的に金額が高くなります。そのため、不動産の取り扱いについて、トラブルが起こりやすいので注意が必要です。このページでは、よくある4つの事例をもとに不動産に関する遺産分割のために知っておくべき基礎知識をご説明いたします。
目次
遺産分割トラブルを防ぐため不動産を売却しておくケース
ケースの例
Aさんには4人の子がいます。夫は既に他界しています。財産は持ち家である不動産と貸地、預貯金です。Aさんは子の相続争いを何よりも避けたいと考えています。
不動産などの分割しにくい財産を現金化しておく
子が公平に遺産を分け合うためにも、不動産や土地は売却等を行い、できる限り現金化しておくことが、スムーズな遺産分割につながります。
ただし、貸地には借地人の建物が建っているため、第三者に売却するのは難しい可能性もあります。借地人に買い取ってもらうのがベストですが、借地人の財力に依るところが大きく必ずしも買い取ってもらえるとは限りません。いずれにしても、貸地については早めに対策を講じるとよいでしょう。
特定の相続人に実家を残したいケース
ケースの例
Aさんは、妻を早くに亡くし、子が2人(Bさん・Cさん)います。Bさんは結婚しましたが、Aさんと同居を続け、Aさんの身の回りの世話などをしてくれていることから、相続財産である今の住まい(土地・建物)をBさんに相続させたいと考えています。
遺言による遺贈を行う
Aさんの相続財産は不動産と現金です。相続が発生した場合、Bさんに不動産を残すためには、遺言によって、不動産をBさんに遺贈する旨を記載しておきましょう。
ただし、Cさんには、最低限の財産を相続できる遺留分の権利があります。この点に注意して、Cさんが遺留分を相続できるように準備しておく必要があります。
実家を手放さず住み続けたいケース
ケースの例
Aさんは3人兄弟の長男です。結婚後も家に残り、母との同居を続けてきました。母が亡くなったときに遺産となるのは、現在Aさん家族と母が住んでいる不動産とわずかな預貯金です。Aさんは現在に至るまで母とともに実家に住み続けていること、母の介護なども行っていることを理由に不動産の相続を希望しています。家族の今後の生活もあり、不動産の売却は避けたいと考えています。
寄与分の主張や代償金によって不動産を相続する
このケースのように、遺産がほぼ不動産のみで、複数の相続人で遺産分割をする場合、事前の準備も含めてしっかりと対策を行わなければ、不動産を売却しなければならない状況となってしまう可能性があります。
それを防ぐために、被相続人の事業の手助けや介護などによって、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人が他の相続人よりも多くの財産を相続することができる寄与分を主張したり、また、他の相続人の遺留分が侵害される場合には、他の相続人に代償金を支払うこと等を検討しましょう。
遺産の大半が不動産で納税資金が不足したケース
ケースの例
Aさんは4人兄弟の長男です。父が亡くなり、母と4人の子で遺産を相続することになりました。遺産の大半は不動産です。
遺産の不動産は元々農地でしたが、区画整理事業が行われ、その多くは宅地になりました。その結果、不動産の内訳は宅地・農地・貸地となっています。父は賃貸経営には力を入れていなかったようで、不動産の多くは利用されておらず、また、貸地も収益性に乏しいという現状です。相続する土地が多く、現状では相続税を払うことができません。相続人たちに土地を維持管理していく意思はなく、相続税を払うためにも換金して財産を分配したいと考えています。
生前から土地の整理を検討・進めておく
区画整理された地区にある不動産は、問題なく売却できます。しかし貸地は第三者への売却が難しい財産です。生前からしっかりと相続の対策をしておく必要があります。
一筆(土地の個数を表す単位)に売却する土地と売却しない土地がある場合、分筆を行う必要があります。分筆の際には測量を行って土地の境界線を明確にしなければならないため、費用、時間がかかってしまいます。相続税の申告・納税は被相続人が死亡したことを知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。
申告が遅れてしまった場合には加算税や延滞税が、納税が遅れてしまった場合には延滞税がかかる場合があります。出費を増やさないためにも残す財産、売却する財産の選別は早めに行っておきましょう。
おわりに
不動産が絡んだ遺産分割では、相続人間の意見が揃わずにトラブルになってしまうケースがよくあります。トラブルになってしまうと解決が難しくなり、手放したくない不動産でも手放さざるを得なくなることもあります。そのようなことにならないように、できる限り、生前から準備・対策をしてきましょう。
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