夫の死後に隠し子が発覚! 遺産相続の分配はどうなるの?

大切な家族が亡くなることはとても悲しいことですが、相続という現実はときとして残酷な現実を残された家族につきつけることがあります。その一つが「隠し子」に関する問題です。
隠し子なんてテレビドラマの中の話のように感じるかもしれませんが、死亡と同時に隠し子が発覚することは、実はそこまで珍しくはありません。万が一、夫の死後に隠し子がいることが発覚した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
今回は、被相続人に「隠し子」がいることが分かった場合の対処法について解説します。
目次
なぜ相続が発生すると「隠し子」が発覚するのか?
相続が発生して、まずしなければならないことは「相続人の確定」です。そして相続人を確定させるためには、被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本などをすべて取得して、一つずつ確認をしなければなりません。
この際に万が一、被相続人に隠し子がいた場合、戸籍を取得すると「身分事項」の欄に「認知」という記載があります。一般的に言う隠し子とは、婚姻関係にない男女間に生まれた「認知」された子供のことを言います。
このように、遺産相続が発生すると被相続人の戸籍をすべて取得するため、生前に子供を認知していると、たとえ本人が秘密にしたまま死亡したとしても、すべてバレてしまうのです。
隠し子も相続人になる?
被相続人の子供で相続人となるのは、簡単に言うと次の2つのパターンのいずれかです。
- 婚姻関係にある男女間に生まれた子供:嫡出子
- 婚姻関係にない男女間に生まれたが、その後「認知」された子供:非嫡出子
ですから、たとえ本当は被相続人の子供だとしても「認知」されていなければ相続人になることはできません。
以前は嫡出子と非嫡出子では、嫡出子の方が相続において手厚く保護されていました。そのため、相続分についても非嫡出子は嫡出子の半分の相続分しか認められていませんでした。(民法900条4号ただし書前半部分)
ところが平成25年12月5日に民法の一部が改正され、民法900条4号ただし書前半部分が削除されたため、現在は嫡出子と非嫡出子の相続分は同じになっています。
死亡と同時に認知する「遺言認知」とは?
ちなみに、生前自分の隠し子が家族にバレることを恐れて、認知をしていないケースもよくあります。認知がされていなければ、当然戸籍にも記載されません。
そのような場合は「遺言認知」という手法が使われることがあります。遺言書に隠し子を認知する旨を書いておくことで、相続発生後に遺言執行者が役所に届出て認知が成立します。
ですので、たとえ戸籍に認知の記載がなかったとしても、遺言書に隠し子の認知が記載されていれば、死亡時にさかのぼって認知が成立することになるため注意が必要です。
「隠し子」への遺産相続の割合はどれくらい?
隠し子がいた場合の遺産相続の割合をシミュレーションしてみます。
被相続人の妻と非嫡出子である隠し子の2名が相続人で、相続財産が1,000万円だった場合のお互いの相続分は以下となります。
- 妻:1/2 500万円
- 隠し子:1/2 500万円
妻と隠し子の法定相続分はまったく同じになります。
もし仮に妻と被相続人の間にも子供がいた場合は次のようになります。
- 妻:1/2 500万円
- 実子:1/4 250万円
- 隠し子:1/4 250万円
このように、隠し子がいることで、妻の相続分はもちろんのこと、実の子供の相続分も減ることとなります。
仮に、遺言書で妻や実子に相続させるよう記載があったとしても、隠し子には法定相続分の1/2の遺留分(民法で保護されている最低限の取り分)があるため、まったく遺産を渡さないとすることは非常に厳しいでしょう。
夫の死後、住み慣れた家に住み続けるために
また、現金だけならまだしも、被相続人名義の家に妻や実子が住んでいる場合、隠し子にもその家の所有権の一定割合を渡さなければならなくなる可能性もあるため、非常に面倒な問題に発展する恐れがあります。
場合によっては、住み慣れた家を手放すこともあるかもしれません。夫が隠し子の存在を生前に打ち明けてくれなければ、隠し子がいることを前提にした対策を講じることは非常に難しくなります。
そんな中できることとして、夫の生前に自宅を妻に贈与しておくという方法があります。平均寿命から言っても、男性よりも女性の方が長生きする可能性が高いことが予想されます。夫が高齢になったら、もしものことが起こる前に、夫から自宅を贈与されていれば、隠し子がいたとしても、自宅をとられる心配がなくなります。
居住用不動産贈与の配偶者控除
妻に自宅を生前贈与する際には、「居住用不動産贈与の配偶者控除」が利用できます。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与すると、贈与税の基礎控除110万円とは別に、最高2,000万円まで控除が受けられます。
おわりに
今回は、被相続人の隠し子が発覚した場合の対処法について解説してきました。認知されている隠し子は、非嫡出子と呼ばれ、実子と何ら変わらない相続分や遺留分を有しています。
万が一、夫の戸籍や遺言書に「認知」について記載されていた場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
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