「宅地」や「農地」を相続する際の評価額の計算方法

相続税を計算する際に、財産が預金だけであれば銀行から残高証明書を取り寄せることで、簡単に計算ができますが、そのほかの財産については課税対象となる「評価額」を計算しなければなりません。
特に「土地」については、相続財産に占める価格割合が大きくなる傾向があり、評価額次第で課税される相続税が大きく異なるため、計算する際には注意が必要です。
この記事では、土地を相続する場合における評価額の計算方法について、「宅地」と「農地」に分けて解説します。
目次
宅地の評価額の計算方法
遺産相続において特に相続する可能性が高い土地は「宅地」です。
土地については、同じ面積でもどのような用途の土地なのかによって、評価額の計算方法が異なります。
宅地とは、次のいずれかに該当する土地のことをいいます。
- 建物が建っている土地
- 建物を建てる目的の土地
- その他用途地域内の土地(公共利用されている土地は除く)
たとえば、相続で自宅を相続する場合の土地部分については「宅地」に該当します。
宅地の評価額は、次の計算式によって算出します。
宅地の評価額 = 路線価 × 土地の面積
路線価とは、土地の1㎥あたりの評価額のことで、毎年7月1日に国税局や税務署で「路線価図」として公表され、国税庁のホームページなどで確認することが可能です。
このように路線価を用いて計算する評価方法を「路線価方式」といいます。国土交通省から発表される「公示地価」のおよそ8割が目安となっているため、土地の評価額は、実際の取引価格よりもかなり割安です。
たとえば、路線価30万円で面積が180㎥の場合は「30万 × 180㎥ = 5,400万円」となります。
ただしこの計算式で評価額を算出できるのは、「正方形の土地で、道路に対して垂直に面している」場合であり、それ以外の土地については、一定の「補正率」を加える必要があります。
たとえば、次のような土地については、上記の基準となる評価額から補正率によって、増額または減額されます。
- 評価額が補正率で増額になる土地:2つ以上の道路に面している土地
- 評価額が補正率で減額になる土地:間口が狭い土地・歪んだ形の土地・旗竿地・がけ地
借地の評価額
相続する土地が他人から借りている「借地」だった場合は、土地を借りて建物を建てる権利である「借地権」を相続することになります。
借地権の評価額は、次の計算式で算出します。
借地権の評価額 = 宅地の評価額 × 借地権割合
このように借地権については、宅地を所有している場合に比べ、評価額が借地権割合分低くなるのがポイントです。
貸宅地・貸家建付地の評価額
相続する宅地が他人に貸されている場合を「貸宅地」、宅地にアパートを建てて賃貸している場合を「貸家建付地」といい、それぞれ評価額の計算方法が異なります。
貸宅地 = 宅地の評価額 - (宅地の評価額 × 借地権割合)
貸家建付地 = 宅地の評価額 × {1 - (借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)}
貸宅地は、宅地の評価額から借地権の評価額を差し引くことで算出します。
借家権割合は全国ほぼ一律で30%と定められており、賃貸割合については、専有部分の合計床面積に対して、実際に賃貸している床面積の割合で算出します。
相続のタイミングでたまたま入居者が退去して、一時的に空室となっている場合については、賃貸中とみなして賃貸割合を計算することも可能です。
農地の評価額の計算方法
実家が農家の場合は、農地を相続することになりますが、農地については宅地のように家が建てられないなど用途が制限されるため、先ほどの宅地とは評価額の計算方法が異なります。
相続税の計算においては、農地を次の4つの区分に分類してそれぞれ違った方法によって計算をします。
純農地と中間農地
宅地価額の影響を受けない郊外にある農地のことを「純農地」といい、次のいずれかに該当するものをいいます。
- 農用地区域内にある農地
- 市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地又は甲種農地に該当するもの
- 上記に該当する農地以外の農地のうち、一定の条件に該当する第1種農地
上記に対して都市近郊にある農地のことを「中間農地」といい、次のいずれかに該当するものをいいます。
- 2種農地に該当する農地
- 上記以外で一定の条件に該当する農地
純農地と中間農地の評価額の計算方法は次のとおりです。
農地の評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
固定資産税評価額は、毎年自治体から送られてくる固定資産税の「納税通知書」で、評価倍率については、路線価図と同様に国税庁のホームページで確認が可能です。
このように、評価倍率を用いて評価額を計算する方式のことを「倍率方式」といいます。
市街地周辺農地
市街地周辺農地とは、比較的宅地に転用しやすい農地のことで、次のいずれかに該当する農地のことをいいます。
- 第3種農地に該当する農地
- 上記以外で一定の条件に該当する農地
市街地周辺農地は、次に解説する「市街地農地」として算出した評価額の80%が、市街地周辺農地の評価額となります。
市街地農地
主として市街地にある農地のことで、農地法による転用の許可を受けている農地のことをいいます。市街地農地については、「倍率方式」または「宅地比準方式」によって評価額を算出します。
宅地比準方式による計算方法は次のとおりです。
農地の評価額 = (その農地が宅地であるとした場合の1㎥あたりの価額 - 1平方メートルあたりの造成費の金額) × 農地の面積
つまり農地を宅地に転用したと仮定して、宅地にするための費用を控除した評価額が市街地農地の評価額という意味です。
「その農地が宅地であるとした場合の1㎥あたりの価額」については、路線価が定められていれば路線価、路線価が定められていない場合は、固定資産税評価額をベースに算出します。
また造成費用については、地域ごとに金額が定められており、国税庁のホームページで確認ができます。
おわりに
土地については、今現在の使用状況などによって評価額の計算方法が異なり、また、土地の形状などに応じて補正を加える必要があるため、実際に正確な評価額を算出することは簡単ではありません。
相続に強い税理士であれば、評価額を最小限に抑えられるように、「小規模宅地等の特例」など、節税効果の高い特例制度の適用についてもアドバイスが受けられますので、ひとりで無理をせず、早い段階で相談することをおすすめします。
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