土地の相続で「共有」を選ぶメリット・デメリット

遺産分割は相続人全員の同意が必要になるため、場合によっては相続人間で意見がまとまらず、手続きが進まなくなることも少なくありません。
中でも「土地」の相続については、資産価値が高いだけに遺産分割の際にトラブルになりやすい傾向があるため、妥協案として「共有」という方法を選択するケースがあります。
しかし安易に「共有」を選択してしまうと、後になってトラブルの「火種」となる可能性があるため注意が必要です。
この記事では、土地の相続における「共有」のメリット・デメリットについて解説します。相続財産に「土地」が含まれている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
土地の「共有」とは
財産の所有方法については、自分ひとりで所有する「単独所有」と、複数の人で所有する「共有」の2種類があります。
たとえば100㎥の土地を2人で相続する場合、土地を50㎥ごとに分筆(土地を物理的に分けて別の土地にすること)したうえで相続する方法と、100㎥の土地を2人で「共有」して相続する方法があります。
共有する場合は、必ずしも人数分で割った割合を相続するわけではなく、相続人同士で話し合って自由に割合を決めて相続することが可能です。
この割合のことを「共有持分」といい、相続の場合は法定相続分にあわせて設定することが一般的です。
共有持分は物理的な意味ではなく、権利的な意味での持分割合なので「どこからどこまでの部分が誰の所有」という概念はなく、土地全体に対して持分の範囲内で権利を有することになります。
土地を共有するメリット
遺産分割において土地を「共有」すると、主に次のようなメリットがあります。
公平に分割することが容易になる
土地の共有を選択した場合は、共有持分を自由に設定することができるため、たとえば相続人が妻とその子供の2人であれば、妻1/2、子供1/2というように、法定相続分に準じて決めることができます。
土地自体を分割して分けようとすると、どうしても不公平な部分が出てくる可能性がありますが、共有であれば持分割合を設定するだけなので、遺産分割協議がまとまりやすいのです。
手続きが比較的簡単である
土地を公平に分割する方法として、売却した上で売買代金を法定相続分で分割すること(換価分割)も可能です。
ただし土地を売却するためには、不動産会社に依頼して買主を探す必要があるため、ある程度の時間がかかったり、希望する金額で売れなかったりといったリスクがあります。
共有であれば、売却といった手続きが不要で、共有持分を決めて登記するだけなので、手続きとしては非常に簡単です。
このように、土地の相続における共有は、非常に簡単な手続きだけで法定相続分に従った分割ができるため、相続人全員の同意が得やすい傾向があります。
土地を共有するデメリット
遺産分割方法として土地の「共有」を選択することは、とてもメリットが大きいように感じますが、一方でデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
共有者の意見が揃わないと土地の運用が難しくなる
土地を単独所有している場合は、土地を売ったり他人に貸したりすることはその人の自由ですが、共有している場合はそうもいきません。
共有している土地を運用する場合は、次のように共有者の同意が必要になってきます。
- 土地の売却:共有者全員の同意
- 土地の賃貸:共有持分の過半数の同意
- 土地の管理:各共有者が単独で可能
たとえば相続した土地を「売却」する場合については、共有者全員が賛成しないと売却ができないため、将来的に運用する際に支障が出てくる可能性が考えられます。
土地の権利関係が複雑化する可能性がある
土地を共有するということは、ひとつの土地に対して共有持分に応じた複数の所有者が存在することになります。
将来的に共有者のうちの誰かが死亡して相続が発生した場合、その共有者の共有持分については、遺産分割の対象となります。そのため、もしも相続人が共有を選択すると、共有者がさらに増えることになってしまいます。
共有者が増えてくると、ますます全員の同意を取り付けることが難しくなるため、たとえ利用価値の高い土地だったとしても、意見がまとまらないがために何の運用もできないというケースも考えられるのです。
このように、「共有」を選択すると、その後の運用について支障が出る可能性が高いので、その点も踏まえて判断する必要があります。
おわりに
土地の相続については、遺産分割協議がなかなかまとまらないため、手続きが簡単な共有を選択する「とりあえず共有」というケースが多く見受けられます。
確かに「共有」を選択すれば、容易に法定相続分通り公平に分けることができますが、反面、相続後の運用においては重い「足かせ」となる可能性があるため注意が必要です。
とりあえず「共有」を選択するということは、問題点を将来に先送りすることにもなりかねません。土地を相続する際には、共有、分筆、売却、単独相続のいずれを選択するか、他の相続財産も含め総合的に考慮して、「とりあえず」ではなく「慎重に」検討する必要があるでしょう。
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