【会計的にはどちらが有利?】サーバーで学ぶクラウドとオンプレミスのメリット・デメリット

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【会計的にはどちらが有利?】サーバーで学ぶクラウドとオンプレミスのメリット・デメリット

監修: 松本 献 税理士

サーバーを新たに導入する場合や、既存のサーバーの更新をする際に、頭を悩ますのが、オンプレミス導入するか、クラウド利用するかです。コスト面(初期コストや運用コスト)や会計処理などで、メリット・デメリットを比較検討することになるでしょう。

オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを購入し、自社運用すること、使用者である企業の自社設備内に設置し運用することを意味します。

この記事では、サーバーに関するオンプレミス導入とクラウド利用との会計処理の違いやコスト面などのメリット・デメリットをお伝えします。

目次

オンプレミス(購入して自社設置)の会計処理

オンプレミス導入の場合は、サーバーを購入するので自社設備として資産計上し、その取得価格を使用期間にわたって減価償却という手続きを通して各年度に費用配分を行います。

初期費用が購入時に一度に発生します。購入費用は、サーバーの機能やスペックにより数万円から百万円以上のものまで多岐にわたります。条件に当てはまるものは償却資産とみなされ固定資産税の対象となります。

また、サーバーを購入する場合はIT関連機器としてリース契約することも可能です。初期費用をリース期間に応じて平準化できるなどのメリットがある反面、リース会社の手数料等で支払い総額が高くなり、また中途解約できないなどのデメリットもあります。

クラウド利用の会計処理

クラウド利用の場合は、使用料として支払い総額を費用計上することができます。一般的には初期費用はかからないので、サーバー利用開始時の支出を抑えることができます。利用料は機能やスペックに応じて月額数百円から数万円まで多岐にわたります。毎月の請求金額で経費計上するだけなので会計処理の手間は少なくなります。

オンプレミスのメリット・デメリット

メリット:運用コストが安くなるケースが多い

サーバーを購入すると初期コストが高額になる場合が多いですが、運用にかかる費用が安くなるケースが多いので、たとえば5年間の支払い総額で比較するとクラウド利用より安くなる場合が多いです。また高額な設備やソフトウェアを購入する場合は、条件を満たせば「中小企業経営強化税制」という優遇税制を受けられる場合もあります。

メリット:リースを使えば高額な初期費用を長期間で均等に費用化できる

通常サーバーを購入し、固定資産に計上した場合は、耐用年数にわたり減価償却を通して費用化していくことになります。

リースの場合は、リース料としてリース期間に応じて定額を毎月費用計上することができます。耐用年数より長い期間・短い期間でもリース契約を組むこともできるので、費用や資金繰りの見通しが立てやすくなります。

その他のメリット

インストールできるソフトウェアの制限がない、クローズな環境で利用しやすくセキュリティ面のリスクを少なくできる、などが挙げられます。

大切なことで忘れてはならないことは、あくまでも自社の大切なデータを自社の手許において管理することが可能なことです。自社所有のサーバーに存在するデータですから自社所有のデータとなり、何者にも侵害される心配は通常は無く、クラウドと異なるところです。

デメリット:設備や保守にコストがかかる

自社にサーバー設置する場合、機器調達、可用性・セキュリティ担保、バックアップ、メンテナンス作業を自社で行う必要があります。サーバー本体以外に、スタンバイ用のサーバー、バックアップ用のテープやHDDなどのハードの調達、サーバーのOSやアプリケーションなどのソフトウェア、サーバールームやサーバーラック、電気代などの設備、多くの準備にコストがかかります。またメンテナンス作業にかかる人件費もコストとして捉える必要があるでしょう。

また、最近は上記のような煩雑さを回避するため、自社で取得したサーバーの保守管理を外部事業者に一括して外部委託するケースもよくあります。小口配送大手で有名な運送業者は、サーバーの預り事業(保守管理)を展開しています。

デメリット:固定資産税がかかる場合がある

購入したサーバーが償却資産として固定資産税の課税対象となる場合があります。ざっくりまとめると減価償却費を計上するような資産が課税対象となります。下記に当てはまる場合は課税対象外です。

  1. 取得価額10万円未満の資産で一時に損金処理できる資産
  2. 取得価額20万円未満のうち一括償却資産として3年で一括償却を行えるもの

要するに、購入したサーバーが10万円未満であれば一度に費用計上できるので課税対象外となります。また、10万円以上20万円未満の場合も一括償却資産として3年均等償却を行っていれば課税対象外となります。

10万円以上20万円未満であっても、通常の減価償却計算で費用化している場合には課税対象となります。リース資産の場合や中小企業特例などこの限りではないケースもあるので詳細は税理士に相談するのがよいでしょう。

その他のデメリット

利用開始時の機器の調達やセットアップなど利用開始まで時間がかかる、必要なスペックや機能が変わった場合に対応しにくい、などが挙げられます。

クラウドのメリット・デメリットと注意点

メリット:初期コストがかからない

一般的に初期コストがかからないため、利用開始時の支出を抑えることができます。必要なときに必要なだけサーバーを使うことができるのでコストの最適化がしやすいです。月単位でのプラン変更や解約も可能なので目先の資金繰りを優先する場合のメリットは多いです。

メリット:設備や保守が不要

クラウド利用の場合、機器調達、可用性・セキュリティ担保、バックアップ、メンテナンス作業をクラウド業者が行うため、自社でコストが発生しません。保守管理の人員も不要です。しかし、その分がクラウド利用料に含まれているため、トータルで比べた場合高くつく場合もあります。

メリット:会計処理がラク

毎月の請求金額を通信費などで仕訳を切るだけなので、リースで導入した場合と同様に会計処理が単純で手間がかからないというメリットもあります。

その他のメリット

Webで申し込むだけのサービスも多く、利用開始まで時間がかからない、必要な機能やスペックに応じてプラン変更がしやすい、などが挙げられます。

デメリット:費用が予測しにくい

従量課金プランの場合は、具体的な費用が予測しにくくなります。データ通信量、CPUのスペック、ストレージの容量などに応じて変動します。また定額課金と従量課金を組み合わせたプランなどもあり、費用予測が複雑な場合が多いです。

その他のデメリット

使えるソフトウェアに制限がある場合がある、機密情報を外部業者のサーバーに預けることになるなど。

注意点

クラウドの場合は契約形態にもよりますが、一般的にはあくまでもサーバーの利用契約に留まるので、大切なデータの保守管理等の責任をクラウド業者は負いません。従って、クラウドサービスの質やサポートの内容については、慎重な判断が求められます。

また初期コストが発生する場合は、初期費用が繰延資産に該当する場合があるので、会計処理など詳細は税理士に相談するのがよいでしょう。

結論、どっちがいいの??

資金繰りに余裕が無い場合は、オンプレミスのリース導入又はクラウド利用を選択することになります。利用するソフトウェアやシステムの制約でクラウドが利用できない場合はリースとなります。こうした選択により直近の資金の社外流失を抑えることが可能となります。

支払総額は購入よりも高くつく可能性もありますが、当面の資金繰りが厳しい場合は直近の支払いを少なくすることが求められます。

資金繰りに余裕がある場合は、必要なスペックやサーバーの継続使用期間にもよりますが購入するほうが支払総額は少なく済むことが多いでしょう。ただし、必要なスペックや、数年で陳腐化しリプレイスする可能性がある場合は、中長期的な事業計画でするとクラウドのほうが有利な場合もあるので注意が必要です。

また資金繰りとは別の軸で、サーバーを購入して資産計上するとROA(総資本利益率)が下がるというデメリットもあります。ROAは総資産に対してどれくらい利益を上げているかを図る指標です。ROAは企業の収益性を図る一般的な尺度なので、ROAが下がると銀行などの金融機関をはじめ、株式市場や投資家からの評価が下がる可能性があります。言うまでもありませんが、少ない固定資産で多くの利益を上げる企業が評価されます。

迷ったら・・・

購入するか、リースにするか、クラウドにするか、、、

  • 資産計上した場合の固定資産税はどれくらい発生する?
  • そもそも償却資産の対象になるの?
  • 固定資産の優遇税制があるって聞いたけど、、
  • リースだと高くつくって聞いたけど、、
  • クラウド利用の月額費用と比べたらどっちが安いの?
  • 資金繰り的にはどれが有利?

迷ったら、3つの視点で判断して下さい。

  1. 損得で考える(支払い総額)。
  2. 資金繰りで考える(支払いの平準化)。
  3. データの安全性等で考える(クラウドの契約は単なる利用契約にすぎない)。

このように、厳密に比較しようと思うと専門的な知識と複雑な試算が必要となります。必要なサーバーの要件によって、購入するサーバーの値段が変わりますし、クラウドサーバーの月額利用料も変わります。最近ではクラウド製品などのITに詳しい税理士も増えてきていますので、会計処理や税額計算など含めて詳細に検討したい場合は税理士に相談してみるのがよいでしょう。

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