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「既婚女性は19年11か月で辞めるのが得」ってホント? 加給年金「20年の壁」の正体

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「既婚女性は19年11か月で辞めるのが得」ってホント? 加給年金「20年の壁」の正体
ELUTAS / PIXTA

妻が働くのは19年11か月まで。それを超えると損をするーー。こんな話を見かけたことはないだろうか。一見、都市伝説のようだが、これは「加給年金」という制度に根拠を持つ話だ。ただし、中身を知らずに鵜呑みにすると、かえって大きく損をしかねない。からくりを順に解きほぐしてみよう。

●加給年金の仕組み

加給年金は、いわば「年金版の家族手当」だ。厚生年金に20年(240か月)以上加入した人が65歳から老齢厚生年金を受け取るとき、生計を維持している65歳未満の配偶者がいると、年金に上乗せして支給される。

金額は2026年度で、配偶者分が年24万3800円。これに「特別加算」が加わり、合計で年約42万4000円になる。決して小さくない額だ。

典型的なのは、年上の夫が会社員で、年下の妻を扶養しているケース。夫が65歳になった時点から、妻が65歳になるまでの間、夫の年金にこの加給年金が上乗せされる。(以下、本記事では、このパターンをもとに説明する)

●なぜ「19年11か月」で線が引かれるのか

ここからが本題だ。加給年金には「打ち切り条件」がある。対象である配偶者自身が厚生年金に20年(240か月)以上加入し、自分の老齢厚生年金を受け取れる立場になると、夫の加給年金はそこで止まってしまうのだ。

つまり、妻の厚生年金加入が240か月に届いた瞬間、夫がもらっていた年約42万円が消える。裏を返せば、239か月、つまりちょうど19年11か月で止めておけば、この壁を越えずに加給年金を守れる。これが「19年11か月説」の正体である。

しかも2022年4月からは条件が厳しくなり、妻がまだ年金を受け取っていなくても、20年以上の受給権を持っているだけで夫の加給年金は止まるようになった。「もらい始めていないから大丈夫」は、もう通用しない。

だが、ここに大きな落とし穴がある

では本当に19年11か月で辞めるのが得かというと、話はそう単純ではない。カギは、加給年金が「期間限定」である点だ。

加給年金がもらえるのは、夫が65歳になってから妻が65歳になるまでの間だけ。妻が夫より3歳年下なら、もらえるのはおよそ3年分、合計で約127万円にとどまる。妻が65歳になればどのみち打ち切られ、その後は1円も出ない。なお、妻が65歳になると本来は「振替加算」という別の上乗せに引き継がれる仕組みもあるが、昭和41年4月2日以後生まれの人はこれがゼロ。これから問題に直面する世代に、加給年金に代わるものはほぼないと考えていい。

一方、妻が20年の壁を越えて働き続けると増えるのは、妻自身の老齢厚生年金(報酬比例部分)だ。そして、こちらは一生涯もらえる。加入期間が延びるほど、給与が高いほど、生きている限り受け取る額が積み上がっていく。

整理すると、これは「期間限定の手当(夫の加給年金)」と「一生続く自分の年金」の、どちらを取るかという選択なのだ。

●「得かどうか」は人によって逆転する

どちらが有利かは、主に次の二つの条件で変わってくる。

ひとつは夫婦の年齢差。差が大きいほど加給年金をもらえる年数が延びるので、19年11か月で止めるメリットは大きくなる。逆に年齢差が1〜2歳程度なら、守れるのはその年数分だけで、仕事を辞めてまで守る価値は薄い。

もうひとつは、妻が今後どれだけ働けて、給与がどの程度かという点。この先も何年か働けて収入もそれなりにあるなら、自分の年金を増やすほうが長い目で得になりやすい。長生きするほど、「一生もらえる自分の年金」の価値は高まっていく。

つまり「19年11か月で辞めるのが正解」とは言い切れない。むしろ多くのケースでは、目先の加給年金より、自分の年金を厚くするために働き続けたほうがよい、という結論になりうる。

●2028年からは前提そのものが変わる

制度の見直しも頭に入れておきたい。2025年に成立した年金制度改正法により、2028年4月からは、新たに対象となる人の配偶者加給年金(特別加算を含む)が約1割減額される。

結局のところ、「既婚女性は19年11か月まで」という説は、加給年金の「20年の壁」という事実にもとづいた、半分は本当の話だ。だが、加給年金は期間限定、自分の年金は一生もの。年齢差・給与・あと何年働けるかによって、損得は簡単に逆転する。

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