年収1000万円の独身男性、月々「10万円」を婚活に…「税金面では冷遇」な現実
税金・お金

年の瀬が迫り、街中にはイルミネーションが灯って、仕事の合間にお世話になっているスターバックスの店内はクリスマス仕様。「今年も独り身にとってつらい時期がやってきた」と男性はうつむく。
男性は東京都内にある大企業の正社員。30代で親からの「結婚圧力」もあり、合コンは定期的にするようにしているが、どうもピンと来るひとに出会わない。
人肌恋しさや寂しさが、この男性を合コンへと向かわせる。11月だけで、8回の合コンに参加し費用は1回1万円で計8万円。次につながる保証はないが、毎回、男性側が費用をもつルールとなってしまっている。「どこに運命のひとがいるかわからない」と、婚活アプリにも複数登録している。あわせて毎月1万6000円がかかっているという。
男性の年収は1000万円だ。同僚の既婚男性からは、「独身なんだから自由に金を使えていいな」と羨ましがられるが、「独身だともらえない配偶者手当や配偶者控除があるじゃないか」とつい反論してしまう。
「企業も税務当局も独身には冷たい」というのが、この独身男性がかねてから感じていることだ。勤め先では毎月2万円の配偶者手当があり、子どもがいれば「子ども手当」として1人につき毎月1万円がもらえる。
一定の所得制限があるにせよ、配偶者控除という税制上のメリットを受けられないことも気になる。実際、独り身は「冷遇」されていると言えるのか。独身男性について、安藤由紀税理士に聞いた。
●独身者への優しさは感じない
ーー実際、独身の男性は冷遇されていると言えるのでしょうか
「はい。ずばり冷遇されています。私は日々、税金を計算していますが、税金の世界では、寡夫(妻と死別したひとり親など)である以外、独身者に対する優しさは、ひとかけらも感じません」
ーーそんなに優しくないのですか
「はい。妻に対する配偶者控除や配偶者特別控除、(年齢制限はあれど)子どもに対する扶養控除はすべて対象外となっています。この差は結構大きいです。
仮に年収500万円の場合、独身者と既婚者(専業主婦の妻と20歳の子ども1人を扶養)の場合で、税金支払額は約16万円も変わります。さらに年収1000万円の場合はなんと約28万円もの差になります(金額は目安)」
ーーそこだけ見れば、すごく気の毒な差ですね
「そうです。同じだけ働いて、税負担がこれだけ変わるのは気の毒な気もしますね。もちろん、教育資金など子育てには一定のお金がかかるから、当たり前だという意見もあるでしょうけれど」
●万が一、「独身税」が導入されたら
ーー税制面では独身男性に希望はないのでしょうか
「希望とはまた別の話にはなってしまいますが、ここで、勝手ながらひとつ提案したいと思います」
ーーなんでしょうか
「既婚でも独身でも平等なのが、年収1220万円を超える場合です。1220万円を超えると配偶者(特別)控除は一切なくなります。また、この年収であれば、『子ども手当て』も制限にひっかかり、もらえないでしょう。
結婚しないなら、年収1220万円以上を目指してはいかがでしょうか。『結婚しても税金変わらないから、独身でいいわ』と言えるのです」
ーーなるほど。もう懸念はありませんか
「ひとつあるとしたら、これまでに議論を巻き起こしたことがある『独身税』です。つまり、独身でいるひとに対して課税することになれば、独身でいる限り、税負担は重くなります。『独身税』が導入されて、独身者の暮らしを苦しめないことを祈ります」
【取材協力税理士】
安藤 由紀(あんどう・ゆき)税理士
大学卒業後、銀行勤務を経て2008年に税理士登録(簿記、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法の5科目合格)。大学講師、セミナー、執筆など業務は幅広い。経理初心者向けのわかりやすい解説に定評あり。(ブログ : https://ameblo.jp/ando-tax/ Twitter :@andoyuki_)
事務所名:安藤由紀税理士事務所
事務所URL:http://www.ando.jdlibex.jp/index.html