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鬼怒川温泉に10年以上残り続ける「廃墟ホテル」、解体は「1棟2億円超」で身動き取れず

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鬼怒川温泉に10年以上残り続ける「廃墟ホテル」、解体は「1棟2億円超」で身動き取れず
つり橋「滝見橋」から見た、鬼怒川温泉の廃墟ホテル群

関東でも有数の温泉街として国内外の観光客でにぎわう、栃木県日光市の鬼怒川温泉。歴史ある街並みの一方で、たびたびテレビなどで、営業が停止され廃墟になったホテル群がクローズアップされています。観光地としてマイナスイメージになる、このような施設がなぜ残されているのでしょうか。実際に鬼怒川温泉を歩き、日光市に取材しました。(ライター・国分瑠衣子)

●「歓迎」の文字残る看板

8月上旬、東武鉄道の鬼怒川温泉駅前は、日光さる軍団のショーに歓声を上げる子供たちや、足湯でくつろぐ人など多くの観光客でにぎわっていました。駅前のレストランは順番待ちの行列ができています。

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しかし一歩、温泉街に入ると、シャッターを下ろしたままの飲食店や、空き家が目に入るようになります。交通量の多い国道121号沿いを歩くと、はがれかけた看板がかかったままの高層ホテルが現れました。「鬼怒川観光ホテル東館」です。黄色い規制線がはられ、営業していないことが分かります。シャッターには落書きが残されていました。

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さらに国道沿いを歩き続けると同じく廃業した「鬼怒川第一ホテル」「きぬ川館本店」が建ちます。鬼怒川第一ホテルの入り口には、温泉街のホテルでよく見掛ける「歓迎」の看板がかけられたままで、つい昨日まで営業していたかのような印象を受けます。

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すぐ隣の「きぬ川館本店」は、1927年(昭和2年)創業で、「かっぱ風呂」の愛称で親しまれてきました。しかし1999年に30億円の負債を抱え、経営破綻しました。今も看板には、愛嬌のあるカッパの絵が描かれています。この三つのホテルは廃業してから10~20年がたっています。

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鬼怒川の上にかかる吊り橋「滝見橋」に立つと、左手に廃墟ホテル、右手に営業中のホテルが並び、寂しい印象です。地元に長く住むという男性は、老朽化した建物を見上げながら「鬼怒川のイメージが悪くなってしまうので、早くどうにかしてもらいたい。でも、取り壊すには何億円もかかると聞いている」とため息をつきます。

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●バブル崩壊で団体旅行が激減

鬼怒川温泉は、江戸時代に発見され、当時は僧侶や大名だけが入ることを許された歴史のある温泉です。明治以降に一般開放され、鬼怒川渓谷沿いには旅館やホテルが建ち並ぶ大型温泉地として発展しました。アルカリ性の単純温泉で、柔らかな泉質に定評があります。

鬼怒川温泉だけの宿泊客数のデータは過去3年ぐらいありませんが、鬼怒川と隣接する川治温泉と合わせた年間の宿泊客数は、ピークの1993年は約341万人でした。しかし、バブル崩壊で団体旅行が減り、減少傾向が続きました。さらに2003年に足利銀行が経営破綻し、主な融資先だったホテルや旅館の経営が悪化しました。

2011年の東日本大震災では、原発の風評被害の影響で、宿泊客数は約148万人にまで落ち込みました。しかし、近年は外国人観光客が多く訪れるようになり、2018年は約180万人まで回復しました。

●源泉や国道にも影響?

日光市は2004年から5年間、地域再生事業として国の補助金を活用し、鬼怒川温泉と川治温泉の5棟の経営実態がないホテルや旅館の土地を買い取り、公園や遊歩道に整備しました。

今問題になっている3棟のホテルも同じように整備しないのでしょうか。日光市企画総務部は「解体するには1棟につき、最低でも2億円かかり、市の財政負担を考えると、簡単にできることではありません」と説明します

場所の問題もあります。3棟のホテルが建つ場所は、国道と鬼怒川に挟まれた比較的狭い土地です。日光市は「ホテルが建つ下には源泉もあり、国道への影響も考えられるため、慎重に調査をしなければいけない場所」と指摘します。また、5市町村が合併した、広い日光市内には鬼怒川温泉の他に、老朽化した経営実態のないホテルが15カ所ほどあるといい、優先順位をつける必要もあります。

空き家を行政代執行する場合には、解体費用は国と市がそれぞれ5分の2ずつ、所有者が5分の1を負担します。しかし、実際は所有者と連絡がとれないケースが大半のため、実際は5分の3が市の負担になります。担当者は「多くの老朽化した施設を、一つの自治体で解体するには限界がある」と訴えます。

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<グーグルアースで見た廃墟群の上空>

●固定資産税未納でも「税収あり」

もう一つ、廃墟は、地方自治体が国から受ける普通交付税にも影響してしまうのです。当然ですが、廃墟になったホテルでも固定資産税は発生します。日光市は「個別の建物の評価額、納税の有無については、お答えできない」との立場ですが、鬼怒川温泉の廃墟ホテル群は、どう考えても固定資産税が納められているとは考えにくいケースです。

国から自治体に配られる、普通交付税は、自治体の行政サービスに必要な額(基準財政需要額)から、固定資産税や自動車税といった自治体の税収(基準財政収入額)を引いて、足りない額に応じて配分されます。日光市によると、基準財政収入額を決める時は、固定資産税が納められていない場合でも「税収がある」とみなされてしまいます。つまり、所有者から固定資産税が納められていない場合は、市の税収が減るだけではなく、交付税の額にまで影響してしまうのです。

総務省交付税課は「基準財政収入額を算定する時には、全国の上位3分の1の市町村の固定資産税の標準徴収率を掛け合わせているので、全く考慮していないわけではありません」と説明しますが、成績の良い『トップランナー』の数字が、全ての自治体に当てはまるわけではありません。廃墟になったホテルや旅館は鬼怒川温泉だけではなく、全国にあります。防災や街づくりの面でも対策が急がれます。

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