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フィンランドではマイナンバーが日常生活で大活躍、なんで日本とこんなに違う?

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フィンランドではマイナンバーが日常生活で大活躍、なんで日本とこんなに違う?
フィンランドのケラカード(ElenaNoeva / PIXTA)

国連が発表する「世界で最も幸せな国ランキング」で4年連続トップの北欧・フィンランド。幸せの鍵の一つは、全ての公共サービスに対応する個人識別番号「マイナンバー」にあるようだ。日本では普及率がいまだ約3割と低迷するマイナンバーカードも、フィンランドでは全国民が持ち、日常生活のあらゆる場面で大活躍している。5月下旬、フィンランド大使館が開いたセミナー「フィンランド、デジタル化成功の秘訣」を取材し、日本のマイナンバー制度と何が違うのかを考えてみた。(ライター・国分瑠衣子)

画像タイトル フィンランド大使館が主催したセミナー(提供 フィンランド大使館)

●1960年代には個人IDを導入、デジタル国家へ

セミナーはフィンランドの財務省や国税庁のDX(デジタル・トランスフォーメーション)担当者や、国のマイナンバーの担当官らがオンラインで登壇した。

「フィンランドは、ムーミン、オーロラ、サウナで知られているかもしれないが、高いレベルでデジタル化が進んでいることはあまり知られていない」。モダンなデザインの北欧家具が並ぶ東京・広尾のフィンランド大使館で、ペッカ・オルパナ駐日フィンランド大使はこう説明した。

オルパナ大使は、フィンランドが「世界で最も幸せな国」のトップを走っているのは、教育や医療といった行政サービスのデジタル化のレベルが高く、国民が安心して生活できるからだとみる。

フィンランドのデジタル化の歴史は古い。1960年代には既に個人識別番号(個人ID)が導入された。日本のマイナンバーにあたるもので「当時から個人IDとコンピューターによる情報処理とを結び付けることも想定されていて、先見の明があった」(オルパナ大使)。

それから約60年がたち、フィンランドの個人IDは社会保障や収入、税金、医療などあらゆる個人情報と紐づき、情報は国が一元管理する。

デジタル国家の象徴の一つが、通称「Kela(ケラ)カード」だ。カードには個人IDが記載され、医療や子育て手当、住宅手当、年金など社会保障全般にオンラインで対応する。出生と同時に交付され、外国人も1年以上フィンランドに居住すると発行される。日本のマイナンバーカードや健康保険証と近いが、身分証明書の代わりにはならない。

最近では病院で処方された薬を薬局で受け取る時など、ケラカードを持っていなくても個人IDだけで事足りるようになってきているという。「物理的なカードありきという発想から離れて考えてほしい」(フィンランド大使館)。

フィンランドの国民は、住所変更や結婚などの手続きで役所に出向く必要はなく、オンラインで完結できる。また、個人IDは銀行など民間とも共有されているため、一度住所変更の届け出をすれば、銀行で同じ手続きは不要になる。

●転出のためのオンライン申請、3分で終了

昨年秋に日本に赴任した、フィンランド大使館の報道・文化担当参事官のレーッタ・プロンタカネンさんが自身の体験を話してくれた。プロンタカネンさんは赴任前、フィンランド外務省で、広報官としてイギリスのEU離脱(ブレグジット)問題に取り組んできた。

赴任直前まで多忙な日々で、転居の手続きがスムーズにできるか心配だったという。「それでもマイナンバーでオンラインシステムにアクセスし、住所変更をすると、その情報が保険会社や薬局、銀行などに反映され、転出のための申請は5分どころか3分で済んだ」と話す。

マイナンバーを担当するフィンランドデジタル住民登録センターサービス部のティモ・サロヴァーラ部長は「マイナンバーは大きな行政イノベーションだ」と語る。

国民からの申請を受けるだけではなく、行政側のオンラインでの発信も活発だ。新型コロナウイルスのワクチン接種では、国や自治体がポータルサイトを通じて、個人向けにワクチン接種のスケジュールを知らせる。また、首都ヘルシンキでは、就学前の6歳の子どもが入るプレスクールの場所の確認を、紙からオンラインに変更。ショートメールを使って3言語で保護者に送り、これまで2カ月近くかかっていた時間を大幅に短縮できた。回答率も約9割に達した。

画像タイトル ヘルシンキはオンラインで、子どものいる家庭にプレスクールの通学意思を確認する取り組みを始めた

フィンランド財務省で行政のICT化を担当するマリア・ニッキラ氏は、国がデジタルサービスを提供する上で大事なことは「使いやすさ、アクセスが簡単、情報漏洩のリスクの低減」の3つだと強調する。フィンランドでは以前からデジタル教育に力を入れていて、国民のデジタルへの理解度も高い。今は、フィンランド国内だけではなく、EU全体で共通IDを構築するための議論に入っているという。

画像タイトル マリア・ニッキラ氏

●日本のマイナンバーカードの普及率は3割、低い関心

それでは日本のマイナンバー制度では何ができ、私たちはどんな行政サービスを受けることができているのだろうか。日本に居住する人は全員12桁のマイナンバーを付与されている。ただ、国は法律で社会保障、税、災害に関連した事務だけにマイナンバーの利用を認めている。マイナンバーを使える事務はマイナンバー法の別表で細かく定められているが、非常に細かく、事務を担当する自治体にとって使いにくいものになっている。

さらにフィンランドで全国民が持つケラカードに近い、マイナンバーカードの日本の普及率は、全人口の約3割にとどまる。カードを使って利用できる行政サービスは、コンビニでの住民票の写しの発行や、確定申告の時のe-Taxぐらいで利便性を感じる機会は少ない。国は健康保険証や運転免許証として使えるようにする仕組みづくりを進めるが、カード普及の動きは鈍いのが現状だ。

マイナンバーのポータルサイト「マイナポータル」はもっと知られていない。2019年7月の朝日新聞の報道によると、マイナポータルのサーバーの利用率は国の想定件数のわずか0.02%だった。

もちろんその後、コロナ禍での10万円の現金給付や、今年4月まで行われたマイナンバーカードを持っていれば、キャッシュレス決済で5000円分のポイントが還元されるマイナポイント事業でマイナポータルが使われ、2019年当時よりも利用率は上がっているだろう。だが、筆者の周囲でもマイナポータルという名前自体聞いたことがないという人が多い。

●「国への信頼があるからフィンランドでデジタル化が進んだ」

フィンランドのマイナンバー制度で気になるのが個人情報の漏洩や国民の抵抗だ。国や金融機関などに個人情報が筒抜けになってしまうことに、国民は不安を感じないのだろうか。サロヴァーラ氏は「国が国民に個人情報利用の許可をとらないことに驚くかもしれないが、公共サービスへの満足度が高い国ということ、これまで大きな不正や情報漏洩がないことから国民の信頼の基に構築されている」と説明する。

フィンランド財務省のマリア・ニッキラ氏も「フィンランドでデジタル化が進んだのは国や政府に対して国民の信頼があるから。『国民のためのサービス』ということを理解してくれている。これまで情報漏洩がなく、国民に対して約束したことを国がきちんと行ってきたため」と強調した。「信頼」という言葉は、セミナーの他の登壇者も使っていた。

日本ではマイナンバー制度を語る時に、「情報が漏洩する」「プライバシーが侵害される」という声が上がる。マイナンバーの制度設計に携わった専門家に取材をすると、日本のマイナンバーは住基ネット訴訟や、納税番号を振り、脱税を防ぐ「グリーンカード構想」などが批判された「負の歴史」を受けて、情報漏洩のリスクがないように対応策を徹底しているという。

それにもかかわらず、マイナンバー制度への不信感は根強い。フィンランドのセミナーの登壇者が繰り返した国への「信頼」が日本ではいまいち感じられない点が、制度が浸透しない一番の理由なのかもしれない。

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