社用車を買うと節税になる?仕組みと税務上のポイント

「社用車を購入すると節税になる」と聞いたことがある方も多いと思います。しかし、ただ社用車を購入するだけでは、思ったような節税効果は得られないかもしれません。節税効果を高めるには、どんな車を購入するかが重要になります。
この記事では、節税対策として社用車を購入するときのポイントを解説します。
目次
社用車購入が節税になるしくみ
社用車を購入することがなぜ節税になるかというと、社用車の購入費用を減価償却によって経費計上できるためです。経費として計上することで利益が圧縮できるため、その分の法人税等を抑えることができます。
減価償却とは、資産ごとに定められた「法定耐用年数」に応じて、数年〜数十年にわたって経費計上していく方法です。そのため、購入した年に一括で経費計上することはできません。
ただし中古車の場合は、取得価額を一括で経費計上できる場合もあります。法人の節税対策で使われる社用車購入は、この中古車を使った方法です。詳細は「社用車購入時の節税ポイント」で解説します。
取得価額に含めるもの
取得価額には、以下のものが含まれます。これらの合計金額を法定耐用年数に応じて減価償却していくことになります。
- 車両価格
- 付属品
- 自動車取得税
- 法定費用
- 引取運賃
- 荷役費
- 運送保険料
- 購入手数料 など
ただし、以下の費用は取得価額に含めずに経費計上することができます。
- 自動車取得税
- 検査登録費用
- 車庫証明費用
- 検査登録・車庫証明手続き代行費用 など
購入時の仕訳
社用車を取得した際の仕訳は、以下のように行います。
■頭金・・・10万円(1)
■車両・付属品・・・432万円(2)
■自動車取得税・重量税・・・10万円(3)
■自賠責保険・任意保険料・・・10万円(4)
■検査登録等代行費用・・・32万4千円(5)
■リサイクル預託金・・・2万円(6)
借方 | 金額 | 借方 | 金額 |
---|---|---|---|
(1)仮払金 | 10万円 | 現金 | 10万円 |
借方 | 金額 | 借方 | 金額 |
---|---|---|---|
(2)車両運搬具 | 432万円 | (1)仮払金 | 10万円 |
(3)租税公課 | 10万円 | 普通預金 | 476万4000円 |
(4)保険料 | 10万円 | ||
(5)支払い手数料 | 32万4千円 | ||
(6)預託金 | 2万円 |
(6)の預託金は、自動車廃止時に支払手数料などの費用科目に振替えて費用処理をします。
減価償却の方法
減価償却は、「定額法」と「定率法」の2種類があります。定額法は、減価償却の期間中は毎年一定額で償却していく方法です。定率法は定められた償却率により毎年一定割合で償却していく方法で、法人の場合は原則として定率法で減価償却をします。
社用車の減価償却の計算は、「新車」「中古車」で異なります。
【新車の購入】
新車の法定耐用年数は、普通自動車の場合は6年、軽自動車の場合は4年となっています。そのため、たとえば300万円の普通自動車を新車で購入した場合は、300万円を6年かけて経費計上していくことになります。
【中古車の購入】
中古車については、耐用年数を法定耐用年数ではなく、購入後の使用可能期間として見積もられた年数とすることができます。ただし、使用可能期間の見積りが困難な場合には、以下の式で算出した年数を使用可能期間とすることができます。
法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 20%
※1年未満は切り捨て、2年に満たない場合は2年とする
たとえば3年落ちの普通自動車を中古で購入した場合、上記の式に当てはめて計算すると「(6年-3年)+3年×20%=3.6年」となります。1年未満は切り捨てるので、この車の耐用年数は3年となります。
同じ300万円の普通自動車でも、中古車であれば早期に経費計上を行うことができるということです。ここでいう経過年数とは、新車登録されてから経過した年数のことをいいます。
法定耐用年数の全部を経過している場合には、使用可能期間は法定耐用年数の20%となります。
なお、自家用車を社用車に転用するときは、個人から法人に売却するという流れになるため、減価償却の計算方法は上記の計算と同様になります。
自家用車の転用については、プライベートでのみ使用している車を社用車とし、諸費用を計上することはできません。業務で使用していない個人名義の車を節税目的で名義変更してしまうと、税務署から指摘される可能性が高いので注意しましょう。
社用車購入時の節税ポイント

節税目的で社用車を購入する際は、以下のポイントを意識しておくとよいでしょう。
4年落ちの中古車がおすすめ
節税対策として社用車を購入する場合は、4年落ちより古い中古車がおすすめといわれています。
前述したとおり、中古車の法定耐用年数は「(法定耐用年数 - 経過年数) + (経過年数 × 20%)」という式で求めることができます。
(6年 - 4年)+(4年 × 20%) = 2.8か月 = 2年(1年未満の端数は切り捨てる)
法定耐用年数が2年の場合、定率法における償却率は「1.0(償却率)×購入費用」なので、初年度で全額分の減価償却が可能ということです。
たとえば取得価額が4,320,000円の新車を購入した場合、初年度の経費算入額は1,801,440円(償却率0.417で計算)となります。一方、4年落ちの中古車を購入した場合は、1円の備忘価額を残して4,319,999円を初年度の経費として計上することができます。
初年度の経費算入額 | |
---|---|
新車の場合 | 1,801,440円 |
4年落ちの中古車の場合 | 4,319,999円 |
差額 | 2,518,559円 |
※実際には、購入年度の減価償却費は月割計算することになります
本当にオトクなのは3年10か月落ちの「新古車」
法人の節税として社用車を購入する場合は、3年10か月落ちの「新古車」が最もおすすめです。
計算上では、3年10か月落ち以上だと一括で減価償却ができます。
- 3年9か月落ち:(6年 - 3年9か月)+(3年9か月 × 20%)=3.2か月 = 3年
(1年未満の端数は切り捨てる) - 3年10か月落ち:(6年 - 3年10か月)+(3年10か月 × 20%)=2.11か月 = 2年
(1年未満の端数は切り捨てる)
新古車とは、新車登録はされているが未使用の車(または走行距離が短い)のことをいいます。主に、ディーラーが販売実績を増やすためにナンバー登録(新車登録)を行った車などで、新車同様ですが中古車と同じように減価償却することができます。
資産価値の落ちにくい車を選ぶ
社用車を購入する際は、資産価値の落ちにくい車を選ぶことをおすすめします。
販売価格の下落率が低いメーカーや車種を選び、売却時に高値で売ることができれば、資金繰りが急に厳しくなったときの「保険」にもなり得ます。
カーナビなどはあとからつける
節税対策として社用車を購入するのであれば、カーナビなどの車両オプションは後からつけることをおすすめします。
社用車購入と同じタイミングでオプションをつけると取得価額(減価償却資産)に含まれてしまいますが、あとからつけることで消耗品(10万円未満)もしくは少額減価償却資産(30万円未満)として一括で経費計上ができるためです。
また、自動車取得税は取得価額の3%が課税されるため、カーナビをあとから購入して取得価額を抑えれば、その分税金も抑えることができます。
ベンツやフェラーリを経費にするには
ベンツやフェラーリなどの高級車も、条件次第では社用車として認められる可能性があります。
税務署はあくまで実態で判断するので、業務で必要だったという証拠があれば経費にすることも可能です。たとえば、会社の役員が利用する社用車であれば、役職上必要であるとして認められる可能性があります。一方で、一般の従業員が使用するような作業車であれば、その妥当性が認められない可能性が高くなります。
そのほかにも、車が事業の収益に見合っていなかったり、事業用であることが証明できなければ経費として認められない可能性が高いでしょう。
このような支出は税務署に目をつけられやすいものです。このような支出が社長への「賞与」だと判断された場合は、法人税や源泉所得税を追加で徴収されることになります。
リースと購入はどっちが得?
社用車を保有するには、リースするという方法もあります。
毎月のリース料には、車両代だけでなく自動車税や自賠責保険料などの諸費用が含まれます。そのため、資金計画が立てやすい、初回の資金負担が少ないというメリットがありますが、初年度に経費となるのは「1年分のリース料」のみです。
前述した4年落ちの中古車の購入と比べると、一回に節税できる金額は少ないですが、決算期末直前にリース契約をしても1年分のリース料を計上できるため、タイミング次第では節税効果が期待できます。
社用車節税の税務上の注意点

必要不可欠でない社用車の購入は、税務調査でも指摘されやすい部分です。
税務調査で社用車が会社の資産ではなく役員の私物であると判断されると、減価償却費が認められなくなるだけでなく、購入費用が役員賞与となります。役員賞与は損金とはならない上に、役員個人としても給与課税されてしまいます。また、源泉所得税の徴収漏れも加わります。
そうすると、法人としては法人税と源泉所得税が追加で発生し、役員個人としては所得税が追加で発生することになります。さらに加算税などのペナルティが課される場合もあります。
そのようなことにならないためにも、税務調査の対策として最低限しておくべきことを解説します。
自家用車の売買は適正価格で
自家用車を転用するときは適正な時価で売買する必要があります。外部のディーラーなどに、今実際に売却したとしたらいくらになるのかを見積もってもらいましょう。
公私の区別をつける
社用車を経費として計上する場合には、公私の区別をしっかりとする必要があります。
個人利用分は按分計上すれば良いですが、経費の計算がややこしくなるので、なるべくプライベートでは使わないほうがよいでしょう。
個人利用分は按分計上する
もしプライベートでも使う場合には、適正な按分計算を行い、社用部分のみを経費として計上する必要があります。その場合には車の使用記録などを残しておき、按分計算の根拠も説明できるようにしておきましょう。
また、ETCカードを利用している場合には履歴が残りますので、ETCカードを会社用とプライベート用で使い分けるなど適切に管理しましょう。
高級車の場合は正当性が重要
社用車購入時の節税ポイントの部分でも解説しましたが、社用車を会社の資産として計上する場合には、正当性が必要となります。
ここでの正当性は実態で判断されます。「会社名義だから」「会社のカードから支払われているから」といって必ず会社の資産として認められる訳ではありません。
会社としてその高級車を「実際に業務に使っていること」が客観的に証明できる状態でなければなりません。
過去の国税不服審判所の裁決では、事業用として使用していたことが対外的に証明されたうえで、社長個人も高級車を所有していることなどから、高級車の購入は必ずしも不当ではないということで、認められたことがあります。
ただし、似たような状況でも認められないこともあるため、高級車を社用車にしたい場合は税理士とよく相談してからにしましょう。
社用車購入を検討するタイミング
社用車を購入する際には、多額の出費をすることになります。また、購入代金だけではなくその他の諸費用がかかるということを考慮しないと、場合によっては経営が圧迫されることにもなるので、購入のタイミングはよく考える必要があります。
社用車の保有にかかる費用
社用車を保有することで、下のような維持費がかかります。
- 車検代
- 車両重量税
- 自賠責保険料
- 自動車税
- 任意保険料
- 駐車場代
- ガソリン代
- オイル交換費用
車を保有すると、上記のような費用が年間約数十万円かかることになります。社用車の購入を検討する際には、これらの維持費も考慮しなければなりません。
おわりに
社用車を購入することで、購入費用をはじめとした諸費用を経費として計上することができるため、大きな節税効果が期待できます。自社の資金繰り状況や節税計画を考えて、適切な値段の車を購入しましょう。
社用車の購入は大きな買い物ですので、経営的な視点、税務的な視点から見てどのタイミングでの購入がベストなのか、また、購入がいいのかリースがいいのかなどを節税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
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