相続における「準確定申告」の手続きとトラブル回避のための5つのポイント

1年間しっかりとがんばった仕事の成果は、12月31日で一度「区切り」となります。さらに、1年間で受け取った報酬に対する「所得税」の支払い金額が確定する時期です。
主に自営業の人は勤務先の会社がないため、自分自身で前年の所得を計算し、税務署へ申告すると同時に納税を行います。これが「確定申告」です。
ところで、1年の途中で税務署へ申告すべき人が亡くなった場合の所得税はどうなるのでしょうか? 今回は相続人が亡くなった方に代って手続きを行う「準確定申告」の内容や注意点について解説します。
目次
相続における「準確定申告」とは?
準確定申告は、亡くなられた方(被相続人)の死亡時点までの当年の所得を計算し、相続人の方が税務署への申告を行います。人が亡くなったとき、所有していた資産は、配偶者や子どもなどの相続人へ引き継がれます。このときに当年の所得も相続の範囲となるため、準確定申告の算出値をもとに相続税が課税されます。
また、相続時には相続税の計算や遺品の整理など、とても煩雑な手続きが多いのですが、準確定申告の申告と納税期限は、被相続人の死亡による相続の開始から4か月以内と短いため、早めに専門家などに相談することをおすすめします。
相続人が準確定申告に対して準備すべきこと
準確定申告を円滑に進めるためには、申告について知っておくことが大切です。必要な書類および手続きを確認してみましょう。
相続人が2人以上いる場合は「確定申告書付表」を添付する
準確定申告も確定申告と同じ用紙を使用します。相続人が2人以上いる場合には、原則「確定申告書付表」を添付して提出します。
また、相続人同士が常に仲が良いケースばかりとは限りませんので、相続人同士が別々に申告書を提出することも可能です。その場合は、ほかの相続人同士に行った準確定申告の内容を伝えることが条件となります。
各控除を提出する
被相続人の死亡時をもって有効な控除も提出する必要があります。医療費控除や社会保険控除、生命保険料控除です。
特に生命保険料控除は、年末になると加入している生命保険会社から控除証明書が送られてきますが、被相続人が亡くなられた際には、相続人から生命保険会社へ書類の請求をする必要があります。
準確定申告の注意点!相続人同士のトラブルを避けよう!
準確定申告はいくつか注意点があります。ここでは代表的な5つのポイントをご紹介します。
申告は被相続人の住所地
準確定申告は相続人の住所地ではなく、被相続人の住所地を所轄する税務署で手続きを行います。
被相続人の死亡に際し、相続手続きをするものの、準確定申告までは気が回らない場合もあります。放っておくと、相続人のなかでも被相続人の住所に近い人の負担がかかる場合や、実家(被相続人の居住していた場所)への往復なので時間がとられる可能性がありますので、相続人が被相続人とまったく別の地域に居住している場合は特に注意しましょう。
マイナンバーが必要
2016年から、相続人全員のマイナンバーが必要となりました。マイナンバーカードがない場合、身分証明書の提示、もしくは写しの添付も必要となります。
相続人同士でマイナンバーのやり取りする必要があるので、自分のマイナンバーを他人に知られたくない相続人もいる可能性があります。その場合には、前述したように各個人で準確定申告を行うことになります。
準確定申告と相続税の関係
準確定申告の結果、納付する所得税は相続における控除の対象になります。
一方で、所得税が還付されることによって相続人が得た資産は相続資産に加算されるため、相続税の計算においても変わってくる可能性があるので注意が必要です。
相続放棄をした相続人は準確定申告が不要
相続が発生した際に、相続人のなかには相続放棄をする人もいるかもしれません。相続放棄をする際は、原則、被相続人が死亡して相続が発生してから3か月以内と定められています。準確定申告の期限は相続発生から4か月です。
相続放棄をした相続人は、初めから相続人ではなかったものとみなされるため、準確定申告の義務はありません。
死亡後に相続人が支払った医療費
被相続人が生存中に支払った医療費に関しては準確定申告にて医療費控除をすることができます。しかし、被相続人の死亡後に相続人が支払った医療費は、被相続人の医療費控除の対象にすることはできません。
ただし、その医療費の請求の基となった治療等を被相続人が受けた時に、相続人と被相続人が生計を一にしていたのであれば、その医療費は、相続人の医療費控除の対象となるので注意が必要です。
まとめ
確定申告は近年、インターネット技術の進歩により、専門家の税理士に相談しなくても簡単かつ迅速に完了することが可能となりました。しかし、申告者が死亡した際に相続人が行う準確定申告は、普通の確定申告とは期限も手続きも違います。手続きが不安な場合は、税理士を利用することが賢明な選択といえるでしょう。
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