へそくりや知的財産は相続できる?どこからどこまでが相続財産になるの?

相続財産とは、被相続人が持っていたすべてのものが該当します。このため、預貯金・土地・不動産・株式・貴金属・義務・権利などが相続財産となります。でもこれって相続できるの?相続税かかるの?と疑問なものも中にはあるでしょう。そこで今回は、相続できるかできないか、相続した場合どうなるか悩むものをご紹介したいと思います。
目次
資格は相続できない
権利も相続財産になりますが、権利のひとつといえる資格については相続財産とならないものもあります。医師免許・運転免許・生活保護受給権・親権者の地位などが該当しますが、このようなその人だけに認められる権利を一身専属権といいます。この一身専属権に該当するものは相続できないことになっています。
また、お墓は祭祀財産と呼ばれるものになるので相続自体はできますが、相続税の対象にはなりません。
著作権や特許などの知的財産権の相続ってできるの?
知的財産権とは、工業所有権に著作権を加えたものの総称をいいます。簡単にご説明をすると、創作で生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度のことです。知的財産権も相続の対象になります。
知的財産権の内容によって、手続きや存続期間などに違いがあります。相続できる知的財産権とは、具体的にどのようなものを指すのかご説明いたします。
工業所有権
工業所有権とは、「特許権・実用新案権・意匠権・商標権」の総称のことで、特許庁長官に相続したという届けを速やかに提出する必要があります。それぞれの概要は以下の内容になります。
特許権
- 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの。つまり物の発明や方法の発明を指します。
- 所管官庁:特許庁
- 法律:特許法
- 存続期間:出願日から20年
実用新案権
- 自然法則を利用した技術的思想の創作であって、物品の形状、構造・組合せに係る考案のことを指します。
- 所管官庁:特許庁
- 法律:実用新案法
- 存続期間:出願日から10年
意匠権
- デザイン(意匠)を新しく創作した人に対して意匠権を一定期間発生させるものを指します。物品の形状、模様、色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもののことをいいます。
- 所管官 :特許庁
- 法律:意匠法
- 存続期間:設定登録日から20年
商標権
- 自己(自社)で取扱う物やサービスを他と区別するために、マーク・ネーミングなどを使用して保護することを目的とするものです。文字・図形・記号・などの商標が該当します。
- 所管官 :特許庁
- 法律:商標法
- 存続期間:設定登録日から10年(更新可)
著作権
著作権は、著作物を創作した時点で発生します。登録の手続きなどは必要ありません。著作権法で定められた一定の事実があった場合にその内容を登録することができる。とされています。
- 思想や感情を音楽・絵・建築・映画・ソフトウェア・小説などに創作的に表現したもの等を指します。著作人格権と著作権(財産権)に分けられます。
- 所管官庁:文化庁
- 法律:著作権法
- 存続期間:著作物の創作の時から著作者の死後50年。映画の著作物の場合のみ公表後70年間。
例えば、音楽で印税収入を得ていた場合、その印税を貰える権利が著作権となり、それが相続の対象となるということです。権利の移転手続きをする必要はなく、話し合いにより相続人の中で誰が相続するか決定します。
ただし、著作人格権については一身専属権にあたるので相続できません。
著作人格権とは、自己の著作物を公表するかどうか決定することや、公表する際に著作者名を実名やペンネームなどで表示するか決定すること。そして著作者の意に反した作品の変更等を受けないことの権利です。
遺産分割協議書に記載しましょう
著作権の相続を、口頭だけで済ませた場合、後になってトラブルが発生する可能性があります。そのため、遺産分割協議書を作成することをオススメします。
また、例外として著作権を複数の相続人で分け合う場合は、著作権の移転手続きが必要です。この場合は、文化庁に対して、「著作権・著作隣接権の移転等の登録」の申請を忘れずに行いましょう。
知的財産権の相続税はいくら?
財産の評価により、相続税が決定します。知的財産権の評価方法は、原則として年平均印税収入額の半分に、評価倍率をかけて算出される価額によって評価される、となっています。
借金を相続した場合って誰が支払うの?
相続されるのはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も対象となります。このようなときの対処方法が2種類用意されています。
ひとつ目が、プラスの財産も借金も一切相続しないことで、これを相続放棄といいます。
ふたつ目が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することで、これを限定承認といいます。相続財産のマイナスがプラスよりも多いときには相続放棄、どちらか分からないときに限定承認を選択すると良いでしょう。
借金をはじめ、被相続人の未払金(税金・家賃・光熱費等)などの負債を、法定相続分の割合で引き継ぎます。そして、各相続人がそれぞれ自分で支払うことになります。
借金や未払金だけでなく、なんらかの保証人になっていた場合も、その責任を法定相続分の割合で引き継ぐことになります。ただし、身元保証に関しては、一身専属権にあたるので対象外になります。
へそくりも相続財産になる
相続申告をするにあたり、見落としがちなのがへそくりです。
例えば、妻が夫から受け取っていたお金を自身の口座に預貯金していた場合、妻名義の口座であっても、法律上は夫名義の財産と判断されることがあります。
相続の税法上では、誰の名義かではなく、誰がその財産をつくり出したかを重要としています。専業主婦・主夫の方の口座に何百万円と預金があれば調査の対象となる可能性が高いといえますので注意が必要です。
税務調査が入ってから指摘されると「所得隠し」としてペナルティを課せられる可能性もあります。そうならないように、へそくりではなく育児・家事などでの正当な対価として贈与されたという証拠を残しておくことをおすすめいたします。
おわりに
通常の財産だけではなく、知的財産や借金、へそくり等も相続の対象になります。その内容は素人には難しいものが多く、意図せず余計な税金がかかったり、相続できる財産を見逃してしまったりするかもしれません。相続がややこしくなりそうな際は、一度税理士などに相談することをおすすめ致します。
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