役員退職金の件でお教えください
地方で株式会社を経営している取締役の者ですが、代表取締役である父が病気で命はあまり長くない理由から、生前に退職金を支給するか、死後、遺族に死亡退職金を支払いするか悩んでおります。確かに生前に退職金を支給すると所得税等は低いと聞いておりますが、遺族に死亡退職金を支払うと500万円×法定相続人の人数までは相続税は非課税と聞きました。そう考えると死亡後に死亡退職金を支給する方が税金面では有利と思いますが、一般的にはどうでしょうか?ちなみに2千万円ぐらいを考えておりますが法定相続人は4人ですので死亡後支給なら相続税はこの分は非課税になるかな思います。よろしくお願い致します。
税理士の回答
ご認識のとおり、死亡後3年以内に支給額が確定する死亡退職金は相続税の対象となりますが、相続人が受け取る場合、
500万円 × 法定相続人の数
まで相続税が非課税となります。
したがって、法定相続人が4人で、死亡退職金の総額が2,000万円、かつ受取人が相続人であれば、死亡退職金2,000万円については原則として全額が非課税枠の範囲内となります。死亡退職金について所得税も課税されません。
一方、生前に実際に退職して2,000万円の役員退職金を受け取る場合には「退職所得」となり、勤続年数に応じた退職所得控除があり、原則として控除後の金額の2分の1に課税されるため、通常の給与等より税負担は軽くなります。
ただし、お父様が退職金を受け取った後、短期間で亡くなり、そのお金が預金等として残っていれば、その残額は通常の相続財産になります。死亡退職金の「500万円×法定相続人」の非課税枠は使えません。
そのため、今回のように余命が限られており、法定相続人4人、退職金2,000万円という条件だけをみれば、死亡退職金として支給する方が税務上有利になる可能性は高いと思います。
もっとも、お父様の勤続年数が長ければ、生前退職金について退職所得控除だけで2,000万円の大部分又は全額をカバーできる場合もありますので、勤続年数を確認して比較する必要があります。
また、生前退職金の場合には実際に代表取締役を退任することが前提となります。死亡退職金の場合も、生前退職金の場合も、会社側で損金算入するには、在任期間、退職事情、同業同規模法人の支給状況等からみて2,000万円が適正な役員退職金であることが必要です。
したがって、①お父様の勤続年数、②現在の役員報酬、③会社の利益状況、④相続財産全体を確認し、生前支給と死亡後支給の税額を比較してから決めるのがよいでしょう。
荒川直宙
結論から申し上げますと、ご相談者様のお考えのとおり、今回のケース(退職金2,000万円・法定相続人4人)であれば「死後に死亡退職金として支給する」方が多くの場合で有利であり、実務上も一般的です。
生前支給との税金の違いや実務上の注意点を整理いたしました。
【1】税金面での比較(死亡退職金が有利な理由)
◆ 死亡退職金として支給する場合
・遺族側:所得税はかかりません。相続税の対象となりますが、「500万円×法定相続人4人=2,000万円」の非課税枠があるため、相続人が受け取れば2,000万円全額に相続税がかかりません。
・会社側:適正額の範囲内であれば全額を損金(経費)に算入でき、法人税を軽減できます。
個人・会社ともに税負担を最も抑えやすい形になります。
◆ 生前に退職金として支給する場合
・お父様本人:退職所得として分離課税され、退職所得控除を超える部分には所得税・住民税がかかります。
・将来の相続税:税引き後の手取りがお父様の預金に残るため、将来本来の相続財産として相続税の課税対象になります。
・非課税枠の不使用:死亡退職金の非課税枠(2,000万円)を活用できません。
【2】税務リスク面での比較
生前に役員退職金を支給する場合、病気療養中であっても「実質的に経営から完全に退いたか」が厳格に問われます。実質的な経営権の移譲が不十分とみなされると、税務署から役員賞与(損金不算入)と認定されるリスクがあります。
一方、死亡退職金であれば死亡による当然の退任となるため、退職の実態について見解が分かれるリスクがありません。
【3】実行にあたっての重要な注意点
死亡退職金を確実に損金算入し、支給するために以下の点をご確認ください。
◆ 適用要件と手続き
非課税枠を使うには「相続人が受け取ること」および「死亡後3年以内に支給額を確定させること」が必要です。会社の役員退職給与規程を確認し、規程がない場合も死亡後の株主総会・取締役会で決議して支給します。
◆ 適正額の確認
役員退職金が過大と判断されると超過分が損金不算入になります。「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」などの計算式で妥当な範囲か顧問税理士にご確認ください。
◆ 弔慰金の活用
死亡退職金とは別に、業務外の死亡なら「最終報酬月額の6か月分」までの弔慰金も相続税非課税かつ損金算入が可能です。
◆ 会社の資金繰り
実際に現金を支払うため、法人の手元資金や法人保険の受取予定を事前に確認しておくことが大切です。
ご推察のとおり、死亡後に支給する方針が合理的な選択といえます。
少しでもお役に立てましたら、ベストアンサーに選んでいただけますと幸いです。
藤倉真人
お世話になります。
税金面だけで比べれば、ご認識のとおり、亡くなられた後にご遺族へ死亡退職金として支給する方が一般的に有利です。法定相続人が4人であれば非課税限度額は2,000万円となり、2,000万円の死亡退職金であれば全額が相続税の非課税枠に収まります。
死亡後3年以内に支給が確定した退職金は「みなし相続財産」(相続財産とみなされるもの)として相続税の対象となり(相続税法第3条第1項第2号)、相続人が受け取る分は500万円×法定相続人の数まで非課税です(同法第12条第1項第6号)。相続税の対象となるため所得税はかかりません(所得税基本通達9-17)。なお、支給確定が死亡後3年を過ぎると、受け取った遺族の一時所得となります。
一方、生前に支給すると退職所得として所得税・住民税がかかります(所得税法第30条)。計算は(収入金額−退職所得控除額)×1/2で、退職所得控除額は勤続20年以下なら40万円×年数、20年超なら800万円+70万円×(年数−20年)です。役員としての勤続年数が5年以下の場合は1/2の適用がありません。さらに、手取り額はお父様の財産として残るため、相続時に改めて相続税の対象となります。
ただし、次の点にご注意ください。
・非課税枠は相続人が受け取った分にのみ適用され、相続を放棄した方や相続人以外の方が受け取った分には適用されません。
・会社側で損金(経費)にできるのは、不相当に高額でない部分に限られます(法人税法第34条第2項、同法施行令第70条第2号)。金額は最終報酬月額・在任年数・功績倍率などを踏まえて決め、定款または株主総会決議(会社法第361条)で定める必要があります。
・生前支給の場合、お父様が役員を退任するなど、実質的に退職したといえることが前提です。
・別途、弔慰金として一定額(業務外の死亡なら死亡時の普通給与の6か月分)までは相続税がかからない取扱いがあります(相続税法基本通達3-20)。
相続税の負担は財産全体の額で変わりますので、他の財産も含めて試算されることをおすすめします。
死亡後3年以内に支給額が確定する退職金で、相続人が受け取り、他の死亡退職金がない等の条件を満たせば、法定相続人4人の場合の非課税枠は合計2,000万円となります。ただし、支払日が死亡後というだけでは判断できず、金額の確定時期・受取人の確認が必要です。生前支給も勤続年数等によって税負担が異なるため、一概に有利とは決められないと考えられます。退職の実態、会社側の適正額・資金繰り、相続財産全体を含め、顧問税理士等に両案の比較を依頼されるとよいと思います。
※本回答は一般的な情報提供を目的としたものです。詳細な判断は管轄の税務署への確認や、税理士への個別相談をお願いいたします。
山本快夫
お世話になります。
すでに複数の税理士から回答済ですので、以下補足させていただきます。
ご質問の前提から株主構成が不明ですが、株価への影響の違いも、死亡保険金がある場合は大きな影響がないと考えますが、株価への影響の違いも、念のため試算されることをおすすめ致します。
生前退職金はタイミングによっては類似業種比準価額に影響するケースがありますし、死亡退職金は類似業種比準価額に影響しません。
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
本投稿は、2026年10月28日 08時43分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







