海外移住することになったら、不動産はどうするのがいい?売却時の注意点とは?

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海外移住することになったら、不動産はどうするのがいい?売却時の注意点とは?

著者: 竹内 英二 不動産鑑定士・中小企業診断士

グローバル化に伴い、転職、結婚等で海外移住をする人が増えています。またリタイア後の第二の人生を海外で過ごす人も増えてきました。海外移住をすると、日本国内に不動産を持っている人は、国内に資産を残すことになります。

実は、海外の居住者が日本の不動産を売却や賃貸する場合、通常の売買にはない特殊なルールが存在することをご存知ですか。

今回は、海外移住者が日本国内に所有する不動産の取扱についてご紹介します。

目次

家は放っておくと価値が下がる

家はとても寂しがり屋です。放っておくと、すぐに痛みます。誰も住んでいなくても床は埃まみれとなり、定期的に空気も入れ替えないと部屋はカビ臭くなります。

また、庭も雑草が生い茂り、周りから見ても「この家には誰も住んでいない」ということが分かるようになります。特に、残された家が一戸建の場合、誰にも管理を頼まない、または誰にも貸さない状態だと、家はどんどん傷むという性質を持っています。

海外に移住する場合、残された家は何もしないと価値が下がります。そのため、以下のような対策を立てる必要があります。

売却する
賃貸する
空き家として管理委託する等

海外に移住すると税金はどうなる?

海外に移住すると、その人は税法上の非居住者として扱われます。非居住者とは、原則として、「日本国内に住所がなく、かつ、現在まで引き続いて1年以上日本国内に居所がない人」のことです。

非居住者による国内不動産の売却や賃貸で、所得が発生した場合、その所得は所得税の課税対象となります。つまり、海外移住後に残してきた日本の不動産が所得を生んだ場合には、日本に所得税を納めなければならないということです。

海外在住者が不動産を売却する際のポイント

かつて、非居住者が日本国内の不動産を売却し、売買代金を国外に持ち逃げする事例が散見された時代がありました。

そこで、非居住者が国内の不動産を売却する場合、売主の確定申告漏れを防ぐため、現在は次のような措置が取られています。

  • 非居住者が売主となる不動産売買では、買主は支払金額のうち、10.21%相当額を源泉徴収して税務署に支払い、残りの89.79%相当額を売主へ支払います。
  • ただし、買主が、(1) 個人で、(2) 購入者本人又は購入者の親族の居住用、かつ(3) 売買代金が1億円以下のときは買主による源泉徴収義務はありません。
  • 売主は確定申告をすることによって、所得税の還付請求を行うことができます。

国内にいる買主が先に源泉徴収によって多額の税金を納めることで、売主が確定申告で還付請求をせざるを得ない状況を作りだし、売主の確定申告漏れを防止するというような制度です。

海外在住者が不動産を賃貸する際のポイント

売却と同様に、非居住者が国内の不動産を賃貸する場合も、貸主の確定申告漏れを防ぐために、次のような措置が取られています。

  • 非居住者が貸主となる不動産賃貸では、借主は賃料の支払金額のうち、20.42%相当額を源泉徴収して税務署に支払い、残りの79.58%相当額を貸主へ支払います。
  • ただし、借主が個人で自己またはその親族の居住の用に供するためのものである場合には、源泉徴収の必要はありません
  • 賃貸の場合も、貸主は確定申告をすることにより、源泉徴収された金額を精算することができます。

いずれにしても、売却や賃貸も非居住者の確定申告漏れを防ぐために、買主や借主が源泉徴収をする制度があります。

海外在住者が不動産を相続する際のポイント

海外移住の場合、自分の不動産を国内に残さなくても、相続によって海外移住後に国内の不動産の所有者となってしまうことがあります。

被相続人が国内に居住している場合、非居住者が相続すると、国内外の全財産が課税対象となります。

相続で取得した不動産も、そのままにしておくといずれ相続人の子供たちの相続財産となります。財産が複雑になることが懸念される場合には、売却することで日本の相続税の課税対象から外しておくことも対策の1つです。

居住用財産の売却の注意点

国内に残してきた不動産が居住用財産(マイホーム)の場合、売却時期には注意が必要です。居住用財産の場合、売却時に3,000万円特別控除という特例が使えます。特例を使った場合の譲渡所得は次のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

この特例が認められる居住用財産の要件としては、「転居してから3年後の12月31日までの譲渡」になります。この期間を超えて売却した場合には、3,000万円特別控除が使えませんので、注意が必要です。

なお、3,000万円特別控除を適用しても、譲渡所得がプラスの場合には、所得税が発生します。その際は、さらに税率にも注意が必要です。税率は所有期間が5年超、10年超を境に下がります。

転居してから3年後の12月31日までの間に、5年と10年の節目を迎える人は、所有期間のタイミングも考慮することで、さらに節税になります。

居住用財産の3,000万円特別控除の特例や軽減税率の特例に関しては、自分の不動産が特例の要件に合致しているかどうかを事前に確かめる必要があります。また相続で得た空き家も3,000万円特別控除を使える場合があります。

おわりに

海外在住者の不動産と税務について解説いたしました。非居住者の不動産の売却や賃貸は特殊なルールが多いので注意が必要です。売却や賃貸を行う場合は、事前に税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

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