大家さん必見!確定申告でよくある質問や気をつけるポイントとは?

アパートやマンション経営で家賃収入がある大家さんは、毎年確定申告をしなければなりません。
会社勤めの方であっても、区分マンションを購入してワンルーム投資をしているなどの場合には、会社が行う年末調整とは別に、自身での確定申告が必要です。
そこでこの記事では、家賃収入などの不動産所得がある大家さんやサラリーマン投資家の方が、確定申告をするときに気になる疑問、質問にお答えします。
目次
よくある疑問1:減価償却って何?
大家さんとなって初めての確定申告をする際に、多くの方がつまずくのが「減価償却」です。
不動産所得の確定申告に必要な「青色申告決算書」の第三面に、所有している不動産の減価償却費の計算を記載する必要があるのですが、減価償却の意味を正しく理解していないと、誤って記載をしてしまう恐れがあるため注意しなければなりません。
減価償却とは、建物など時間の経過とともに劣化していく資産について、取得価額を耐用年数に分割して経費化していくしくみのことです。
たとえば、建物部分が1億円の木造アパートがあるとすると、木造建物の法定耐用年数は22年なので、単純計算で1億円を22年に渡って460万円ずつ、毎年確定申告の際に不動産所得の経費として申告することになります。
ポイント1:法定耐用年数について
減価償却費を計上する法定耐用年数については、建物の構造によって次のように決まっています。
鉄筋コンクリート(RC)造 | 47年 |
---|---|
鉄骨造 | 34年 |
木造 | 22年 |
また、中古物件については、次の計算式に当てはめて法定耐用年数を算出します。
- 法定耐用年数の全てを経過している場合:法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過している場合:(法定耐用年数 ー 購入までの経過年数)+(経過年数 × 20%)
たとえば、築19年の木造アパートを購入した場合、「(22 ー 19)+(19 × 20%)=6.8」となり、1年未満の端数は切り捨てとなるため、6年で償却することになります。法定耐用年数が短いほど、短期間でより多くの経費を計上できるため、所得が多い方にとっては節税効果が高くなります。
ポイント2:土地と建物の按分方法
減価償却して経費にできるのは不動産のうち「建物」のみになります。劣化しない「土地」については減価償却できないため、減価償却費の計算から価格を除外する必要があり、売却しない限りは帳簿上に資産として残ることになります。
売買契約書に土地と建物の価格が分けて記載してあれば問題はありませんが、合算して表記されている場合については、次のいずれかの方法によって、建物部分の価格を算出することが可能です。
・消費税から逆算する
消費税は建物部分にしか課税されないため、売買契約書に記載されている「消費税」の金額から、建物価格を求めることが可能です。
計算式は次のようになります。
建物価格=(消費税額 ÷ 8%(購入時の消費税率))+ 消費税額
・固定資産税評価額の比率で按分する
建物と土地、それぞれの「固定資産税評価額」を確認して比率で按分することで、建物価格を算出できます。
たとえば、建物2,000万円、土地4,000万円の固定資産税評価額だった場合、比率は1:2となりますので、アパート全体の価格が1億2,000万円であれば、建物部分の価格は4,000万円となります。
よくある質問2:経費はどこまで認められる?
不動産所得を申告する際には、かかった経費についてきちんと申告することで節税につながります。ただ、むやみに経費として計上してしまうと、後で税務署に否認される恐れがあります。
一般的に、次のような費用については、原則として不動産所得の経費として認められます。
- 税金(固定資産税、都市計画税、不動産取得税、印紙税)
- 火災保険料
- 管理会社に支払う管理費
- 減価償却費
- 修繕費用
- ローン金利
一方で、次のような費用については、不動産所得の経費として否認される可能性が高いです。
・車両費
物件現地までの交通費については認められますが、よほど物件が多くない限り、ガソリン代、駐車場代、保険代など自家用車の維持費すべてを経費として計上することは難しいでしょう。
・通信費
通話料については、通話明細を取得して、不動産会社などと連絡を取り合った部分の金額のみ提示できるのであれば認められる可能性がありますが、それ以外の通話については否定される可能性が高いです。
・青色事業専従者給与
家族を従業員とし、給与を支払っている場合、その家族が賃貸経営に専ら従事している実態を証明できないと経費としては認められない可能性が高いです。
どうしてもこれらの費用を経費にしたい場合は、賃貸事業を「法人化」することを視野に入れたほうがよいでしょう。
- 【不動産所得の節税まとめ】家賃収入で経費になるものは?具体例と会計処理の注意点
- 家族への給与が経費になる「事業専従者控除」「青色事業専従者」とは?
- アパート経営するなら法人が有利!?法人化する3つのメリットとは?
よくある質問3:不動産を売却した場合の申告
アパートなどを売却した場合に生じた「譲渡所得」については、不動産所得とは分離して課税されるため、別途譲渡所得の申告が必要になります。
不動産を売却した場合の譲渡所得は、次の計算式によって算出します。
譲渡所得=譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡価格については、購入した時の金額から減価償却した金額を差し引いて求めます。よって、買った金額よりも安く売れたとしても、減価償却分があるため、場合によっては譲渡所得が発生する可能性があります。
短期譲渡と長期譲渡
譲渡所得の税率については、物件を所有していた期間に応じて次のように税率が異なります。
・短期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以内の場合)
所得税:30%
住民税:9%
・長期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えている場合)
所得税:15%
住民税:5%
このように、5年を超えているかどうかで所得税、住民税ともに税額が2倍違ってきますので、物件を売却する際には、1月1日時点で所有期間が5年を越えているかどうか事前によく確認しましょう。
おわりに
不動産所得は、赤字部分を他の所得と相殺できる「損益通算」が可能なので、給与所得などがある方については、確定申告をすることで節税効果を発揮できます。
ただ、減価償却費などは、初心者が独学で計算するとミスが起こりやすく、税務調査の対象となる可能性もあるため注意が必要です。経費についても自己判断で申告して、後で否認されないよう、一度税理士に確認してもらうことをおすすめします。
また、将来的に相続税対策を講じたいと思っている方については、相続が発生したタイミングで税理士に相談するよりも、毎年の確定申告を依頼しておくことで、税理士も資産状況を事前に把握できるため、より適切なアドバイスが受けられるでしょう。
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