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「中退共制度」とは?メリット・デメリットや節税効果を解説

優秀な人材を確保すべく、給与水準を向上させたり、福利厚生を充実させようと努めている中小企業は少なくありません。たとえば退職金制度を設けていれば、採用の際にセールスポイントとなり、社員の定着率も向上します。しかし、退職金の支給は一度に多額のキャッシュアウトをすることになるため、資金繰りに余裕のない中小企業の場合は、なかなか独自で退職金制度を運用することは難しいのが現実です。

そんなときに検討するとよいのが、中退共制度と称される「中小企業退職金共済制度」です。

目次

中退共(中小企業退職金共済)制度のしくみ

中退共(中小企業退職金共済)制度とは、独力では退職金制度を設けることが困難な中小企業を対象につくられた国の退職金制度です。

厚生労働省所管にあたる、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中退共(中小企業退職金共済)事業本部が運営しています。中小企業に勤務する人々の福祉の増進を図り、中小企業の振興に寄与することが目的です。

制度利用の流れとしては、まず事業主が中退共本部と退職金共済契約を締結し、毎月の掛金を金融機関に納付します。そして、従業員が退職した際に、その退職した従業員に対して中退共本部から退職金が給付されることになります。

2018年10月末時点で、中退共制度の状況は以下の通りとなっています。

  • 加入している企業:369,128か所
  • 加入している従業員:3,478,914名
  • 運用資産額:約4.8兆円

掛金について

従業員1人あたりの月々の掛金は、以下の16段階の中から企業の「資金事情」「従業員数」「定着率」「経営者の人材や退職金に対する考え方」などに応じて自由に設定できます。

5,000円|6,000円|7,000円|8,000円|9,000円|10,000円|12,000円|14,000円|16,000円|18,000円|20,000円|22,000円|24,000円|26,000円|28,000円|30,000円

なお、労働時間が週30時間未満のパート・アルバイト等については「2,000円|3,000円|4,000円」のいずれかで設定することも可能です。

掛金は加入後に「月額変更申込書」を提出することで増額変更できます。しかし、減額変更の場合は手続きに手間がかかるので掛金の設定には注意しましょう。

給付される退職金額

従業員に給付される退職金の金額は、「基本退職金+付加退職金」となります。

基本退職金とは掛金の金額と納付した月数に応じて支払われる退職金です。

付加退職金とは、中退共本部における運用収入に応じて付加される退職金です。掛金納付月数の43か月目以降、12か月ごとの基本退職金額に、以下の割合を掛けた金額がプラスされます。

  • 2013年度:0%
  • 2014年度:0.0182%
  • 2015年度:0.0216%
  • 2016、2017年度:0%
  • 2018年度:0.0044%

掛金の納付期間と退職金額の相関は以下のようになっていて、24か月以上勤務した従業員には、掛金総額と同額もしくはそれを上回る退職金が給付されます。

納付期間退職金額
0~11か月給付されない
12~23か月掛金総額を下回る
24~42か月掛金総額と同じ
43か月以上掛金総額を上回る

中退共制度のメリット6つ

中退共で退職金の資金を積み立てると、以下のような6つのメリットがあります。

メリット1)人材確保と定着化につながる

求人情報で差がつくポイントのひとつとして「退職金制度の有無」が挙げられます。退職金制度は事業主にとっては必須事項ではないこともあり、設けていない場合もあります。

ですので求人情報に退職金制度がある旨が記載されていると、「長年にわたって勤続した社員を大切にする会社」「定年退職後も安心して暮らせる会社」というイメージを持たれやすく、他の競合企業と差別化が図れ、よい人材を確保できる可能性が高まります。

メリット2)福利厚生を充実させられる

中退共は、福利厚生の充実化にも役立てられます。

通常、中小企業が福利厚生を自前で用意するには多額のコストがかかります。しかし中退共に加入している場合、その事業所で働く従業員は提携ホテルやレジャー施設、各種サービスなどを割引料金にて利用できます。これは退職金積み立てと同様に従業員の定着化に寄与すると言えるでしょう。

メリット3)退職金管理の負担がない

退職金の管理は会社にとって大きな負担になります。そんな負担を軽減できるのが中退共制度です。会社は掛金を中退共に納めるだけで、従業員の退職時には中退共から従業員に直接支払われるので、退職金管理の負担をなくすことができます。

メリット4)掛金の一部が助成される

中退共に新規で加入した場合は加入の4か月目から12か月間、1人あたり掛金金額の2分の1まで国から助成を受けられます(1人あたり上限5,000円)。

たとえば、従業員20人で1人あたりの掛金が10,000円の場合、以下のように助成金が計算されます。

(掛金10,000円 × 1/2 )× 20人 = 100,000円
100,000円 × 12か月 =1,200,000円

以上のように、1年間で1,200,000円もの金額が助成されます。

さらに、月額掛金を増額した場合、12か月間にわたって増額分の3分の1の助成を受けられます(掛金金額18,000円以下に限定)。

たとえば、従業員20人で1人あたりの掛金を10,000円から16,000円に増額する場合、以下のように助成金が計算されます。

(増額分6,000円 × 1/3 )× 20人 =40,000円
40,000円 × 12か月 = 480,000円

以上のように、掛金を増額した場合にも1年間で480,000円もの金額が助成される計算になります。

なお、元の掛金が20,000円以上の場合は増額しても助成の対象にはなりません。また、同居親族のみ加入するなど、例外的に助成の対象外となるケースがあります。親族のみを雇用する事業主(個人事業、法人)についても助成の制度がありません。

ここで挙げた国の助成以外にも、各市区町村で独自に中退共制度の掛金を補助する助成金制度を設けているケースがありますので各自治体で確認してみてください。

メリット5)積み立て金額以上の退職金が給付される

中退共加入後から2年以上勤務した従業員は掛金総額の100%を退職金として受け取ることができます。さらに3年6か月を超えると、積み立てた掛金総額よりも多い退職金を受け取ることが可能です。長年にわたって勤務する従業員ほど、中退共のメリットを享受できるといってもいいでしょう。

メリット6)損金算入による節税効果がある

中退共の掛金は、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費として計上でき、全額非課税となります。また、従業員の給与所得にもなりません。

さらに中退共で積み立てた退職金は中退共本部から従業員に直接支払われるため、会社の決算数字に影響を及ぼしません。

掛金の仕訳

中退共制度の掛金は先述の通り、法人の場合は「損金」、個人事業主の場合は「必要経費」として処理します。勘定科目は一般的に「福利厚生費」が使用されます。

また、助成金に関しては「雑収入」として計上します。

中退共制度の節税効果シミュレーション

では、中退共制度に加入すると、どのくらい節税効果があるのか簡単にシミュレーションしてみましょう。

たとえば、従業員1人あたりの月々の掛金が30,000円だった場合、従業員数100人の企業であれば、年間で(30,000円 × 12か月)× 100人 =3,600万円を経費として計上できます。

ここで法人税を30%だとすると、本来3600万円に対して課せられるべき税金額=3,600万 × 30% = 1,080万円の節税効果が望めるという計算になります。

受け取った退職金は控除が受けられる

退職金を受け取った従業員側の税金について考えてみましょう。

退職金は通常「退職所得」として税金がかかります。そこで、退職金の受取時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで退職所得控除が受けられるのです。控除額は勤続年数によって異なり、次のように計算されます。

  • 勤続年数(納付年数)20年未満の場合
    「控除額= 40万円 × 勤続年数 ※80万円に満たない場合、控除額は80万円」
  • 勤続年数(納付年数)20年以上の場合
    「控除額= 800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)」

つまり、受け取った退職金額が控除額より少ない場合は税金がかからない、ということになります。

中退共制度のデメリット5つ

中退共には多くのメリットがある一方でデメリットも存在します。メリットとデメリットの双方を理解して導入を検討しましょう。

デメリット1)従業員に直接給付されてしまう

中退共の掛金は、一度支払ったら会社とは分離され、従業員個人にひもづけられます。

たとえば、従業員が入社2年未満で退職し、掛金総額を下回る額しか退職金が給付されなくても、その掛金の差分が会社に払い戻されることはありません。なぜなら、掛金は運用の手数料として、中退共事業本部が相応に利用しているからです。

また、懲戒解雇により従業員が退職することになった場合でも、掛金に応じた退職金が給付されてしまいます。中退共で積み立てた退職金を不支給、減額支給させたい場合は、厚生労働大臣の認定を受けなくてはならないため、所定の手続きが必要となります。

なお、従業員は退職後、中退共制度に加入している事業所にふたたび勤務すれば、掛金を引き継いでもらうことが可能です。

デメリット2)掛金の減額手続きが煩わしい

中退共の加入後に掛金を減額するには、以下の条件が求められます。

  • 従業員全員の同意を得て、署名または押印をもらう
  • 厚生労働大臣から、現在の掛金を支払い続けることが「著しく困難」だと認定を受ける

これら条件が厳しいことを鑑みると、掛金の減額手続きは困難だと認識しておきましょう。

デメリット3)貸付制度がない

中退共制度の掛金を支払っている間に、ときには会社の資金繰りが厳しくなることもあるでしょう。

たとえば生命保険に加入している場合には「契約者貸付制度」というものがあり、資金難の際には生命保険の解約返戻金の中から70~90%の範囲で借り入れることができます。また、保険料の支払いが困難になっても、解約返戻金の範囲内で生命保険会社に保険料を立て替えてもらえる制度もあります。

ところが中退共にはこのような貸付制度はありません。資金不足などにより掛金の支払いが一定期間以上滞ってしまうと、強制的に解約されてしまいます。

デメリット4)死亡退職金としては不十分

一般的に退職金制度を設ける際、従業員が亡くなったときに遺族に対して支給される「死亡退職金制度」も合わせて制定するケースが多くあります。

ところが、中退共制度は死亡退職金として十分な金額になるとは言い難いです。たとえば、毎月の掛金が10,000円で、勤続24か月の従業員が亡くなった場合、退職金はそれまで積み立てられた10,000円 × 24か月 = 240,000円しか給付されません。

死亡退職金としては総合福祉団体定期保険や業務災害補償保険といった、保険料が割安な掛け捨て保険を併用するなどの方法を検討しましょう。

デメリット5)給付金額が積み立て金額を下回ることがある

中退共制度は、従業員の加入期間次第では、給付額が掛金を下回ることがあります。

掛金納付月数が11か月までの場合は、従業員に対して退職金は給付されません。掛金納付月数が12か月以上23か月以下の場合は、納付した掛金総額の約2分の1から3分の1に減額されて給付されます。いずれの場合でも、減額された差額分が会社に払い戻されることはありません。

以上のことから、従業員が入社から1~2年以内で退職してしまうケースが多い会社は、中退共制度の導入はおすすめできません。

中退共制度への加入方法

加入資格

中退共へ加入するには「資本金(出資金)の金額」あるいは「従業員数」のいずれかが以下の基準を満たす必要があり、条件を満たせば個人事業主や医療法人なども同様に加入できます。

業種資本金等総額従業員数
製造業、建設業等一般業種3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

従業員は原則全員加入となり、パートタイマーやアルバイトも対象となります。特定の社員だけを加入させることは認められません。ただし、以下のような従業員は加入させなくてもよいとされています。

  • 期間限定の従業員
  • 試用期間中の従業員
  • 休職期間中の従業員
  • 定年間近の従業員

ここでいう「従業員」とは、雇用期間が2か月を超える従業員を指し、期間限定の日雇い従業員は対象外です。

また、加入後に資格が失われた場合は制度を解約しなければなりません。その際、従業員には解約手当金が配当されますが、金額によっては「一時所得」として課税対象となり、従業員に納税義務が発生する場合があります。

なお、資格が喪失される前に積み立てた資金は、確定給付企業年金など、ほかの共済金制度へと移換することが認められています。

手続き方法

中退共制度の加入申し込みは、取引のある金融機関をはじめ、商工会議所などの委託事業主団体を通じて行います。申込書に記入して窓口へ提出し、受理されると「共済手帳」が交付され、以後、口座振替にて掛金を納付します。

加入証明書の交付

一部の事業では、中退共制度の加入証明書が必要となることがあります。その場合、中退共制度の加入申し込みから1か月前後で送付される「退職金共済契約関係書類綴」を用意し、電子申請・自動交付システムまたは郵送にて交付申請を行います。

退職金の請求方法

従業員の退職が決まったら、中退共本部に対し「被共済者退職届」を提出し、退職者の掛金振替を中止します。退職者に対しては、事業主記入欄に記入・押印した「退職金請求書」を渡します。退職者はその請求書を金融機関へ提出することで退職金を受け取ることができます。

その際、請求書に金融機関の確認印を受け、マイナンバー入りの住民票を添えて中退共本部へ送付することで退職金の請求処理が完了します。

そのほかの共済制度

中小企業の節税対策に効果がある共済制度はほかにも設けられています。

  • 特退共(特定退職金共済)制度
    従業員向けの退職金制度、という点で中退共と似ていますが、運営主体が商工会議所、商工会などとなります。また、加入期間が1年未満でも退職金が支払われるなどの違いもあります。
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)
    取引先の倒産により不良債権が発生した際に、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできる制度です。中退共制度と同様、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
  • 小規模企業共済
    小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための退職金制度です。国の機関である中小機構が運営しており、掛金は全額を所得から控除できるため、高い節税効果があります

おわりに

以上のように中退共制度は、中小企業の「退職金制度を充実させたい」「従業員の定着率を高めたい」という希望をかなえてくれる制度です。しかしメリットとデメリットが存在し、企業によって制度との相性があります。中退共制度は自社にマッチしているのかどうか、導入を検討する際は節税を得意とする税理士に相談してみましょう。

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