個人事業主の節税方法10選|正しい税金対策で無理なく手元にキャッシュを残す方法

小規模であっても、なんらかの事業を行っている方は、個人事業主として申告・納税(確定申告)をする必要があります。個人事業主が納める税金は所得税・住民税だけでなく、個人事業税や消費税も発生するケースがあります。
「お金を手元に残したい」「税金はできるだけ少なく済ませたい」と考えたときに、何から手を付けたらいいかわからないという方も多いでしょう。この記事では、フリーランスなどの個人事業主が知っておくべきの節税の基礎知識と具体的な対策を紹介します。
目次
個人事業主が納める税金って?
個人事業主に課税される税金は「所得税」や「住民税」が多くの割合を占めますが、課税対象となる売上が1,000万円以上になると消費税についても課税対象となります。
また、事業所得と不動産所得の合計が一定以上ある場合は、業種に応じて「個人事業税」も課されるほか、保有している資産に応じて「固定資産税」などの税金が発生します。
個人事業主におすすめの節税方法
ここからは個人事業主におすすめの節税方法について、初歩的なものから順番に紹介します。確定申告の直前でもできる対策がありますので、ぜひ参考にしてください。
経費の計上漏れがないかを確認
個人事業主の節税でもっとも初歩的なのは、必要経費の計上漏れをなくすことです。
計上漏れが起きる原因のほとんどは、領収書やレシートの単純な確認ミスによるものなので、普段から定期的に記帳して漏れのないようにチェックしましょう。
記帳まで手が回らないという方は、税理士などに記帳代行を依頼することをおすすめします。報酬がかかるので、売上規模や事務負担のバランスを考えて検討するとよいでしょう。
領収書がないものを経費にする方法
必要経費として計上するためには原則として「領収書」の保管が必須です。
万が一、領収書を紛失してしまった場合には、次のいずれかの方法で対処することで経費として計上できます。
- 領収書の再発行、もしくは購入証明書や支払証明書の発行を依頼する
- レシートを保管する
- カードの利用明細を保管する
- メールや招待状などを保管する
また、電車代やバス代など領収書が出ない少額の交通費については、利用した日時、区間、目的などについて交通費明細として記録しておく必要があります。
家賃や光熱費を按分計上する
単純な計上漏れのチェックが終わったら、経費として認められる支出がないか確認をします。
たとえば自宅兼事務所にしている場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上することが可能です。このように事業とプライベートの両方で利用する費用のことを「家事関連費」といい、インターネットや携帯電話の通信費、自動車関連費、業務に使用する備品の減価償却費なども家事関連費に含まれます。
ただし経費として計上できるのは家事関連費の全額ではなく、事業として使用している部分のみですので、その割合を算出(按分比率)する必要があります。
医療費控除など適用できる控除を把握
経費計上の次に重要なのが「所得控除」の正しい適用です。
所得控除とは所得から一定額を差し引ける制度のことで、次のようにさまざまな種類の控除があります。
このほか、「住宅ローン控除(減税)」「家内労働者等の必要経費の特例」などもあります。
正しく所得控除を適用することで課税負担を低減することができますので、確定申告時にはどの控除が適用できるのかきちんと把握しておきましょう。
保険料や家賃などを年払いする
決算直前でどうしても節税したい場合は、保険料や家賃などを前倒しで年払いすることで、その年の損金に計上して節税することが可能です。このように、前払いした費用をその年の損金にできる特例のことを「短期前払費用の特例」といいます。
年払いにはキャッシュアウトが伴うため、一時的な支出負担があることに注意しましょう。
ふるさと納税をする
税金対策として最近よく利用されているのが「ふるさと納税」です。
ふるさと納税とは自分の好きな自治体に寄付(納税)することで、その地域のふるさと納税とは自分の好きな自治体に寄付(納税)することで、その地域の特産品などの返礼品がもらえるだけではなく、寄附金控除が受けられるというメリットもあります。というメリットもあります。
寄付先については、総務省のホームページや専用のふるさと納税サイトなどで見つけることができます。
国民年金基金やiDeCoへの加入
国民年金基金は、個人事業主が任意で加入できる国民年金の上乗せ年金です。掛金の上限は月額6万8,000円までで、国民年金基金は、個人事業主が任意で加入できる国民年金の上乗せ年金です。掛金の上限は月額6万8,000円までで、全額が社会保険料控除の対象となります。となります。
iDeCo(イデコ)とは、正式には「個人型確定拠出年金」とよばれる私的年金のことです。支払った掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となり、全額所得から控除できるの対象となり、全額所得から控除できるため、国民年金基金などと同様に年金の積立をしながら節税することが可能です。
とくにiDeCoは月額5,000円という少額から積立が可能な点もメリットといえます。
小規模企業共済など共済制度への加入
小規模企業共済とは、簡単にいうと経営者や個人事業主の「退職金制度」のことで、毎月一定の掛金を支払うことで、退職時にまとまった共済金が受け取ることができます。さらに、いざというときには低金利かつ無担保・無保証人の貸付制度を利用できます。
月額1,000円という少額から積み立てられ、支払った掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
生命保険や介護医療保険への加入
生命保険に加入することで、支払った保険料のうち年間最高12万円まで生命保険料控除を受けることができます。控除の対象となる保険料は、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3種類です。
未加入の方はもちろんのこと、すでに加入している方についても、プランの見直しも含めて検討してみるとよいでしょう。
青色申告制度の特典を使う
事業所得を得ている個人事業主は、白色申告または青色申告のいずれかを選択して確定申告をします。
必要書類が少なく帳簿付けも簡単な白色申告に対し、青色申告は複式簿記での記帳が原則となり、提出書類も複数あるため簿記の知識を要します。
白色申告に比べて事務的な手間はかかるのと、事前に税務署に青色申告承認申請書を提出する必要がありますが、その分さまざまな特典を受けられるので、個人事業主である程度の利益が出ているのであれば青色申告がおすすめです。
青色申告の特典としては次のようなものがあります。
最大65万円の特別控除
青色申告を選択し、複式簿記で記帳を行い、損益計算書と貸借対照表を提出することで「青色申告特別控除」として、65万円の控除が受けられます(それ以外の場合は控除額が10万円となります)。
赤字の繰越控除と繰戻還付
青色申告している場合、赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺できる「純損失の繰越控除」が利用できます。
反対に、黒字で所得税を収めた年の翌年が赤字になった場合は、翌年の赤字を前年に繰り戻して所得税を再計算できる「純損失の繰戻還付」が利用でき、差額の所得税が還付されます。
このように、前後の年に幅をもたせて赤字を流用できるため、極端な税負担を回避できるのです。
配偶者や親族を雇って専従者給与を支払う
配偶者や家族を青色事業専従者として届けを出している場合、専従者に対する給与を経費として計上することができます。ただし、白色申告の場合、個人事業主が家族に支払った給与のうち必要経費にできるのは、配偶者86万円、その他の家族は50万円までという制限があります。
一方、青色申告の場合は、一定の要件を満たすことで給与全額を必要経費にできます。
詳しい要件などについては、下記記事を参考にして下さい。
少額減価償却資産の特例
備品を取得した場合、10万円未満であれば一括で経費計上することができます。ただし、10万円を超える場合は減価償却資産となり、10万円を超える部分は数年かけて減価償却しなければならないため、初年度は必要経費として計上できる額が少なくなります。
一方、青色申告をしていれば30万円未満の償却資産までその年の必要経費として一括で計上できる「少額減価償却資産の特例」を利用できます。
なお、少額減価償却資産を取得した場合、一括で経費計上するか、固定資産税として計上して減価償却するかは、選択することができます。その年の利益が少なく、あまり経費を計上する必要がなければ、固定資産として計上するといいでしょう。
法人化(法人成り)する
事業の規模がある程度拡大してきたら、法人化(法人成り)することも検討しましょう。法人化には、個人事業主にはない節税のメリットが多くあります。
個人事業主で必要経費として計上できる範囲は、その事業をするために直接的に関係する支出に限定されます。一方、法人の場合は役員報酬や生命保険、退職金、役員社宅など、広い範囲の支出について必要経費(損金)として認められます。
法人化すると、課される税率が所得税から法人税のものに変わります。所得税率の上限は45%ですが、法人税は23.2%のため、所得額が多い人は法人化することで、税負担が軽くなる可能性があります。
青色申告をしている場合は、65万円の青色申告特別控除が受けられますが、法人化すると、所得に応じて65万円から220万円までの給与所得控除が受けられるようになります。
また法人化すれば、節税効果だけでなく、社会的な信用度が向上することで、取引先の新規開拓や資金調達がしやすくなるといったメリットもあります。
おわりに
節税をすることが目的になってしまい、結局手元にキャッシュが残らないということにならないように、適切に上手に節税することを心がけましょう
何から手をつけていいのかわからない、ということであれば、最も単純な「経費の見直し」から始めると良いでしょう。そして、個別の節税方法を用いる中で疑問が生じた場合には、税理士に相談してみることをおすすめいたします。
また、確定申告直前に慌ててしまわないように、普段から会計処理を正確にしたり、領収書の整理をするなどしておきましょう。今は便利な会計ソフトなどもありますし、また税理士に依頼することもひとつの手ですので検討してみてください。