家事按分とは?按分比率の計算方法と注意点をわかりやすく解説

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家事按分とは?按分比率の計算方法と注意点をわかりやすく解説

監修: 西方 太地 税理士・公認会計士・社会保険労務士

フリーランスや副業で在宅ビジネスをされている方などであれば、自宅を仕事場として利用されている方も多いのではないでしょうか?

自宅にかかる家賃や光熱費、携帯電話など、プライベートと仕事の両方で使用しているものについては、「家事按分」して経費計上することになります。

家事按分をきちんと理解することで、効果的な節税と正しい税務申告をすることができます。

目次

家事按分とは

家事按分とは、費用を事業用として使用している分(事業経費)とプライベート用として使用している分(家事費)に分ける按分計算のことをいいます。

個人が、仕事と私用のどちらとも利用する費用を「家事関連費」といい、原則としてその全額を必要経費にすることはできません。

ただし、それぞれの項目について「家事按分」することで、その一部を必要経費とすることができます。

家事按分の対象になるもの

家事按分の対象となる家事関連費とは、以下のような費用のことです。また、仕訳で使用する勘定科目についても説明します。

家賃

賃貸住宅を自宅兼仕事場として利用している場合は、家賃を家事按分することができ、「地代家賃」として計上します。

持ち家の場合は、一度固定資産に計上してから、減価償却費を家事按分することになります。

ローンの金利は「支払利息」として、固定資産税は「租税公課」として、家事按分をしますが、住宅ローンの元金は経費にできません。

また、明確に家事按分するためにも、パーテーションなどで仕事での使用部分を区切ったりして、仕事外で使用する領域と分離しておくことをおすすめします。

【仕訳例】
借方貸方
地代家賃2万円預金2万円

摘要欄:家賃10万円、按分比率20%

住宅ローン控除の適用を受けている場合

持ち家の減価償却費を家事按分する際は、住宅ローン控除の適用ができない可能性があるということを覚えておきましょう。

住宅ローン控除の適用要件のひとつに「住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上の部分を居住のために使用していること」という内容があります。そのため、事業割合を50%以上にすると要件から外れてしまうことになります。

また、経費として計上している部分は、住宅ローン控除の適用外となるため、申告する際は注意しましょう。なお、事業割合が10%以下の場合は、住宅ローンの全額を控除の対象としてよいと定められています。

家事按分と住宅ローン控除のどちらが節税になるかよく考えてから、計上するようにしましょう。

電気代

電気代については、特にクリエイターやトレーダーなど、パソコンを必需品とする事業主の方にとって、重要な経費となります。

家事按分すれば、夏場の冷房代、冬場の暖房代も合わせて「水道光熱費」として認められます。

ガス、水道代

ガスや水道代については、ほとんど仕事とは無関係の項目なので、基本的に経費としては認められません。

ただし、事業を行う上でガスや水道が必要不可欠ということであれば「水道光熱費」として家事按分が認められます。

ネット関連費

インターネット関連費には、携帯代や電話代以外にもプロバイダ料金やインターネット接続代も含まれます。これらの費用は「通信費」として必要経費にすることができます。

しかし、携帯についてはプライベート用と仕事用の区別があいまいになりやすいため、家事按分の割合には注意が必要です。

自動車関連費

仕事で車を使っている場合、自動車関連費は家事按分の対象となりますが、勘定科目は以下のように異なるため、会計処理には注意が必要です。

  • 車検代、駐車場代、ガソリン代:車両費または旅費交通費
  • 自動車税:租税公課
  • 自動車の購入費:減価償却費
  • ローンの金利:支払利息

自動車税の加算金や延滞金、ローン返済の元金部分は必要経費として認められません。

家事按分の計算方法

家事按分の割合については、明確な規定があるわけではなく、使用時間面積などから算出することになります。重要なのは、事業経費と家事費を合理的に按分することです。合理的であるが故に、事業としての経費性が認められることになります。

使用面積、使用比率から求める

まず、使用面積から使用比率を求める方法です。

全体の面積のうち、パソコンや資料が置いてある机や棚などの、仕事として使用している床面積を割り出します。

そして、仕事として使用している床面積を、自宅の床面積で割れば按分比率が算出できます。

たとえば、自宅が30m²、仕事スペースが9m²、家賃が8万円だった場合で考えてみます。

9m²(仕事スペース)÷30m²(自宅)=0.3(按分比率)

按分比率は30%となります。

8万円(家賃)×30%(按分比率)=2.4万円(計上額)

8万円の30%である2.4万円を、経費として計上することができます。

使用時間、日数から求める

ほかには、使用時間日数から求める方法もあります。

まず使用時間の場合は、業務時間の合計を求めて、それを全体の使用時間で割れば、按分比率が算出できます。

業務時間(週の合計) ÷ 全体の使用時間(週の合計) = 按分比率

使用日数で計算する場合は、業務日数を7日で割ると按分比率が算出できます。

使用日数(週の合計)÷7日(全体日数) = 按分比率

使用量から求める

使用量から求める場合、たとえばガソリン代であれば、走行距離(使用量)から計算します。

ガソリン1リットルあたり何km走るかを把握しておき、仕事で使用する都度走行距離を記録する必要があります。

走行距離 ÷ 1リットルあたりの走行可能距離=使用したガソリンの量

電気代であれば、コンセントの数から計算することもできます。

その場合、仕事で使用しているコンセントの数を、自宅にあるすべてのコンセントの数で割ったものが按分比率となります。

たとえば、自宅にあるすべてのコンセントが15箇所、仕事で使用しているコンセントが3箇所だとすると以下のように計算できます。

3箇所(仕事使用分)÷15箇所(全体)=0.2(按分比率)

家事按分するときの注意点

家事按分については、税務調査でもよく見られる部分です。以下に注意点をまとめたので、よく確認し、適切に処理するようにしましょう。

採用した計算方法は継続して使う

家事按分するための按分比率は、納税者自身が自由に決定することができます。また、使用状況に応じて按分比率を月ごとに変えることもできます。

しかし、月によって使用時間で計算したり使用量で計算したり、頻繁に変えてしまうと、計算の根拠が定かではなくなってしまいます。

税務署に指摘される原因にもなるので、一度採用した計算方法は継続して使うようにします。

計算根拠の証明

きちんと計算せずに、根拠なく半分を経費にするなどすると、必要経費として認められなくなってしまいます。

税務署で指摘された場合に、なぜその計算をしたか答えられるように準備をしておきましょう。

  • 公共料金などの領収書の保管
  • 家の間取り図の記録
  • 業務で使用するコンセントの数を決めておく
  • パソコンのログイン、ログアウト時間、作業履歴の記録
  • 車両の走行距離や駐車場の使用履歴の記録
  • クライアントとの通話履歴やメールでのやり取りを記録
  • 過去に家事按分として認められた事例を準備

白色申告と青色申告での違い

白色申告と青色申告では、必要経費として計上できる範囲が変わってきます。

所得税法第九十六条によると、必要経費として計上できるのは、「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」です。

白色申告の場合、上記の判断は「その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうか」で決まります。

青色申告の場合、50%以下でも事業相当額を合理的に区分できれば、必要経費として認められます。

そのため、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、その他の資産の利用状況等を総合勘案して、明確に家事按分できる状態にしておかなければなりません。

前述のように、仕事用のコンセントを決めておいたり、取引があればその都度記録をしておきましょう。

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