【税理士Q&Aも】確定申告期間の延長や助成金など、新型コロナウイルスの影響まとめ

新型コロナウイルスの影響により、確定申告期間が延長されたり、各種制度で特例措置が設けられたりといった対策が講じられています。また、想定外の事態により健康面以外でも不安や疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。そこで税理士ドットコムでは、事業面や税務に関する対応についてまとめるとともに、冨田 建税理士にケース別の事業問題についてお話を伺いました。
※情報は2020年3月9日時点のものです。今後も何らかの措置が講じられる可能性があります。(随時アップデート予定)
目次
確定申告期限や振替日の延長について
確定申告期間中は、税務署にたくさんの人が集まるということなどを考慮して、申告および納付期限が延長されることが決定しました。これに伴い、振替納税の振替日や自治体によっては課税免除などの延長も同時になされます。
過去には、東日本大震災での被災者などを対象に延長されたことがありましたが、全国一律に申告期限が延長されるのは初めてのことです。
確定申告・納付期限の延長
2020年3月4日時点で延長が確定しているのは以下のとおりで、期限が2020年4月16日(木)まで延長されます。
従来の期限 | 延長後の期限 | |
---|---|---|
申告所得税 | 2020年3月16日(月) | 2020年4月16日(木) |
個人事業主の消費税 | 2020年3月31日(火) | |
贈与税 | 2020年3月16日(月) |
住民税(都道府県民税や市町村民税)についても、ほとんどの自治体において4月16 日(木)までの延長を決定しています。
相続税は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から起算して10か月以内」が期限で、新型コロナウイルスの影響に関する延長措置はありません。
振替納税の振替日の延長
口座振替にて税金を納付する「振替納税」というしくみがありますが、こちらも期限が延長されることが公表されています。ただし具体的な日付は現時点で未発表です。
振替日 | 延長後の振替日 | |
---|---|---|
申告所得税 | 2020年4月21日(火) | 未定 |
申告所得税(延納) | 2020年6月1日(月) | |
個人事業主の所得税 | 2020年4月23日(木) | |
贈与税 | 振替納税なし |
課税免除・減免などの申請期限の延長
自治体によっては、個人事業税や不動産取得税などに関わる手続きの申請期限を延長するなどの措置をとっています。
下記は北海道の例です。
- 個人道民税及び個人事業税の申告期限
- 個人事業税の課税免除及び不均一課税の申請期限
- 農地等の一括贈与に係る不動産取得税の徴収猶予の申請期限等
- 不動産取得税の減免対象となる不動産の贈与契約の取消・解除期限
このように様々な対策が取られているため、お住まいの地域の自治体ホームページをよくチェックすることをおすすめします。
法人税等は延長なし
法人に課される法人税等については、新型コロナウイルスに関する延長措置はありません。
通常の措置として、決算申告のみであれば「申告期限の延長の特例の申請」を行えば、最大1か月まで期限を延長することができます。 ただし、納付期限は延長できないので注意しましょう。
酒税やたばこ税など
そのほか事業主に関わる税金としては、「酒税、たばこ税、揮発油税、ゴルフ場利用税、宿泊税」などがありますが、これらは毎月納付するもので、特に延長については言及されていません。
【税理士Q&A】新型コロナウイルスに関する事業問題
事業を行う人にとって、新型コロナウイルスによる影響は様々考えられます。そこで状況別の具体的なケースについて、冨田 建 税理士にお話を伺いました。
Q1.在宅勤務の社員に対する特別手当は非課税になりますか?
弊社では在宅勤務を推奨することになりました。そこで社員のために通信費などの特別手当を出したいのですが、こういった手当は非課税で支給できるのでしょうか
A.非課税扱いは難しいでしょう。
給与所得の一部として課税対象と見られかねず、今回のような特殊な背景があるとしても非課税扱いは難しいと考えられます。
現実的には、大勢の従業員に一括してテレワーク等を求める形態になるかと思いますので、その従業員たち全体の通信ネットワーク代を会社が通信業者と契約し、確実に損金計上できるように対処する方が合理的と思われます。
なお、東京都は、3月5日付けで新型コロナウイルス感染症等の拡大防止対策として「常時雇用する労働者が2名以上999名以下で都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等」に対し、令和2年3月6日よりテレワーク環境整備を支援する助成金の募集を開始しています。
このような制度を活用すると同時に、他の自治体についても今後、何らかの助成金の制度ができる可能性がありますので、そのような情報にもアンテナを張った方がよいでしょう。
Q2.キャンセルが相次ぐ飲食店。仕入れの廃棄損は特別損失としてよいでしょうか?
飲食店を営んでいます。昨今の新型コロナの影響でキャンセルが相次いでいるのですが、この廃棄損は特別損失になりますか?
A.はい。なります。
もちろん、損金計上もできます。
通常想定しているレベルではないロスなので損益計算書上も特別損失として計上する事が妥当でしょう。
Q3.ウーバーイーツでの所得が一時的に増えそうなのですが、平均課税制度は使えますか?
ウーバーイーツを行う個人事業主です。外出制限などの影響でサービスの利用が多くなってきているのですが、所得が一時的に増えた場合、平均課税制度は使えるのでしょうか?
A.該当しないと考えられます。
平均課税制度は、元々、所得の変動が極端になりがちな一部業種(作曲料、原稿料、漁獲関連等)に限定されています。
このため、一部業種に該当しないウーバーイーツは該当しないと考えられます。
Q4.助成金の特例措置や新たに設けられた融資制度について教えて下さい
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける一定の要件を充足する事業主は、雇用調整助成金において特別措置が適用されると聞きました。具体的には、どのような内容になるのでしょうか。
A.
まず、雇用調整助成金の特例措置については以下のとおりです。
・生産指標(売上高等10%減)の確認対象期間を最近3か月から最近1か月に短縮
・雇用指標(最近3か月の平均値)が対前年比で増加している場合も対象
・事業所設置後、1年未満の事業主も対象
通常は給付を受けようとする月の前月までに提出が必要ですが、今回は1月24日以降の休業について、前年同月と比較し10%減なら5月31日まで事後提出が可能とのことです。
なお、創立一年以内の企業は「前年との比較」ができませんが、その場合はたとえば昨年12月など、新型コロナ発生前との比較で10%減かで考えるケースが多いようです。
ただし、新型コロナの感染の程度が他より顕著であるなどの理由から、一部地域では追加措置が検討されているようですので、各自治体の雇用調整助成金の担当部署に都度、制度を確認すべきでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症の発生により、一時的な業況悪化から資金繰りに支障を来しており、次のいずれにも該当する旅館業、飲食店営業及び喫茶店営業を営む方は、日本政策金融公庫による新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付がなされているようです。
条件としては、下記の2つです。
- 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して10%以上減少しており、かつ、今後も売上高の減少が見込まれること
- 中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること
その際、あくまでも融資ですので当然に審査があり、ゆえに売上減が主に新型コロナに起因するもので、新型コロナが落ち着いたら回復し返済の見込みがあることが合理的に説明できるよう、融資を受ける側としても十分に準備をすべきと考えられます。
※2020年3月16日(月)更新
下記についても支援策が拡充されることとなりました。
おわりに
冨田税理士によると、
「“税理士は未来を創るパートナー”ですので、前述の制度の活用や判断については、一人で悩まず、特に資金繰りや税務的な判断の点でお困りの場合は税理士への相談を推奨したいと思います。
特に、雇用調整助成金の活用をする方向となった場合は月次決算が必要です。顧問税理士がいる場合は顧問税理士と相談しながら早急に月次決算を行う配慮を要請しつつ、社会保険労務士とも提携の上で、速やかに手続きを開始する等を推奨したく思います。」
とのことです。
また、税理士ドットコムでは、無料で税理士に税務相談ができるQ&Aサービス「みんなの税務相談」を提供しています。
この記事で書かれたケース以外でも、新型コロナウイルスの影響による税務の疑問や不安があればぜひご活用ください。
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日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」では、テレワーク導入にかかる費用負担や休業を命じられた場合の補償など、新型コロナウイルスに関する労働者のお悩みをQ&Aの形にまとめています。
労働に関する法律問題については、ぜひこちらをご参照ください。
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