2015年1月の税制改正前に知っておきたい相続の手順

2015年1月1日から施行される税制改正により、相続税の課税対象が大幅に広がります。改正前は相続財産が6,000万円以下であれば税金はかかりませんでしたが、改正後はその下限が3,600万円に引き下げられます。
3,600万円であれば、不動産や有価証券などを持っていればすぐに達してしまう金額です。このため、多くの人にとって相続は身近な問題になります。
そこでこの記事では、いざ相続となったときにどのような手順を踏めば良いのかを解説します。
相続の手順
相続の主な手順は以下の通りです。
それぞれのステップについて、ご説明します。
1.相続の開始
被相続人が死亡した(ことを知った)日から相続が開始します。遺言書の確認日や分割協議の日にちではなく、死亡日を基準にするということに注意してください。
2.遺言書の確認
まずは遺言所の有無を確認しましょう。遺言書(公正証書遺言を除く)を発見したときは、家庭裁判所に提出し、検認を受ける必要があります。検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するために、形状・加除訂正の状態、日付、署名などの内容を確認することを指します。この検認をせずに遺言書を勝手に開けてしまわないように注意してください。
遺言書があった場合には、基本的にその内容にしたがって相続が行われますが、遺言書がなければ法律で定められた分配割合を元に相続人が財産を相続します。
3.相続の意思決定
相続人が、財産を相続するか否かを決定します。相続では、残された不動産などのプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産も相続されます。このため相続人には相続をするかどうかを判断することができます。
相続人は、資産も負債も引き継ぐ「単純承認」、権利・義務を一切放棄する「相続放棄」、財産の範囲内で債務を相続する「限定承認」の3種類を選ぶことができます。以下のようなことが想定される場合には、相続放棄や限定承認を検討したほうがよいでしょう。
- 被相続人の資産よりも負債が多いため、相続しても金銭的にマイナスになる
- 不動産等を相続しても、相続税を支払うための現金がない
- 相続財産をめぐる親族間の争いやトラブル
なお、相続放棄または限定承認を行う場合は、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行ってください。それを過ぎると、資産も負債もすべてを引き継ぐことになってしまいます。また、この手続きを行う前に、相続財産を使ったりしてしまうと、単純承認したとみなされるので注意してください。
4.相続人の所得税の申告・納付
被相続人が死亡した年に所得があり、かつ確定申告義務がある場合には、相続開始から4ヶ月以内に確定申告を行います。
5.「遺産分割協議書」の作成
相続人の間で遺産分割の話をまとめて、遺産分割協議書を作成します。
これは合意内容を明確にし、後で相続人の間で紛争が起こらないようにする他、不動産等の名義変更に利用したり、相続税の申告に添付するなどの用途があります。
不動産がなく、かつ相続税のかからない財産の場合は必須ではありませんが、紛争防止の役割もありますので作成することをおすすめします。
6.相続税の申告・納付
相続税の申告書は、相続開始から10ヶ月以内に、被相続人の死亡時における住所を所轄する税務署長に提出します。相続税の納付場所は、最寄りの金融機関(銀行、郵便局等)または所轄税務署です。
相続税の申告書は、各相続人が共同で作成して提出することができます。 ただし、各相続人の間で連絡がとれない場合やその他の事由で申告書を共同で作成して提出することができない場合は、別々に申告書を提出しても問題ありませんので各相続人の間で相談して決めるようにしましょう。
相続税の納付は、納付場所に用意してある納付書に住所、氏名、税額、申告書を提出した税務署名などを記入し、現金に納付書を添えて納税窓口で納付することができます。
おわりに
税制改正によって一気に身近になる相続税。まずは全体の流れと注意するポイントをざっくりとでも把握しておくことが大切です。
実際の相続対策等は、税理士が専門家としてサポートしてくれます。不安をお持ちの方はお気軽に問い合わせください。
税理士をお探しの方は税理士紹介サービスをご利用ください。
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