区分記載請求書等保存方式とは?記入例や注意点を解説【2019年10月〜】

2019年10月1日から消費税が10%にアップすると同時に、「軽減税率」が導入される予定です。それに伴い、価格の表示などさまざまな点に変更があります。そのひとつが、日々発行している請求書についての変更。この記事では、「区分記載請求書等保存方式」について解説していきたいと思います。
目次
消費税の基本的な計算方法
消費税は「間接税」に分類され、税金を納める義務がある人(納税者)と、税金を負担する人(担税者)は別となります。
消費税の課税対象となるのは、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等とされており、生産および流通のそれぞれの段階で、商品や製品などが販売される都度、その販売価格に上乗せされますが、最終的に税を負担するのは消費者です。
一方、税金を納めるのは事業者です。仕組みとしては、課税事業者が納付する消費税額は、課税期間中の課税売上げ等に係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算します。
ざっくりとした表現をするならば、事業者は課税期間中に売上等と一緒に消費税を預かり、そこから仕入に関して支払った消費税額を差し引き、残りを税金として納めています。
仕入に関して支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいますが、この適用を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿及び請求書等の両方を保存する必要があります。
なお、免税事業者は仕入税額控除を適用することはできません。
「区分記載請求書等保存方式」と現行の「請求書等保存方式」との違い
仕入税額控除を適用するために必要な帳簿および請求書の保存について、軽減税率導入とともに変更があります。
現行は「請求書等保存方式」といわれるものですが、2019年10月1日から2023年9月30日までの間は「区分記載請求書等保存方式」となり、2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」となる予定です。
本記事では「区分記載請求書等保存方式」について解説していますが、この方式は現行方式を基本として項目の追記が求められることになります。
簡単に言うと、現行の請求書の項目に加えて軽減税率の対象の場合はその旨を明示すること、そして軽減税率と標準税率との税率が異なるごとに区分して合計した額を記載することが求められます。
具体的な現行の請求書との比較は次のとおりであり、赤字部分が追加された項目となります。
請求書等保存方式(現行) | 区分記載請求書等保存方式 | |
---|---|---|
帳簿 | ・課税仕入れの相手方の氏名又は名称 ・課税仕入れを行った年月日 ・課税仕入れに係る資産又は役務の内容 ・課税仕入れに係る支払対価の額 | ・課税仕入れの相手方の氏名又は名称 |
請求書等 | ・書類作成者の氏名又は名称 ・取引年月日 ・取引内容 ・取引金額(税込) ・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 | ・書類作成者の氏名又は名称 ・取引年月日 ・取引内容 (軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨) ・税率ごとに合計した取引金額(税込) ・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
請求書等の具体的な記載例
区分記載請求書等に記載する「軽減対象資産の譲渡等である旨」については、軽減対象資産の譲渡等であることが明らかであるといえる程度の表示がされていればよいとされています。
たとえば個々の取引ごとに10%や8%の税率を記載するほか、記号や番号でまとめ、注釈のような形で軽減税率の対象である表示をする方法や、税率ごとに商品を区分して記載する方法、税率ごとに請求書を分けて発行する方法などがあります。
記号、番号を使用して記載した請求書の例
以下の例では軽減税率対象品目には「※」を付けて記載し、表外に軽減税率対象品目であることを記載しています。また、合計の下部に税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込)を記載しています。

同一の請求書内で、税率ごとに商品を区分して請求書を発行する記載例
以下の例では軽減税率対象品目と標準税率対象品目を区分して記載しています。そしてそれぞれの税率の承継として、税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込)を記載しています。

税率ごとに区分記載請求書等を分けて発行する記載例
以下の例では税率ごとに請求書を分けて記載しています。そして、軽減税率対象の請求書にはその旨を明示しています。


追加項目が記載されていない請求書等の交付を受けた場合
ここまでで解説したとおり、軽減税率が適用される取引について仕入税額控除を行うために保存すべき請求書等に追記事項が求められていますが、請求書はあくまでも相手からもらうもののため、これらの記載事項がない請求書が相手より渡される可能性があります。
このような場合には、その請求書の交付を受けた事業者が、その取引の事実に基づいて、次の項目を追記し保存することで、仕入税額控除をすることが認められます。
- 軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨
- 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額
なお、保存すべき区分記載請求書等の記載事項のうち、請求書等の交付を受けた事業者による追記が認められるのは、上記の2項目のみであり、当然ながら他の項目についての追記や修正は認められていないため、その点留意が必要です。
おわりに
消費税アップと軽減税率導入に伴い、様々な変更点が現れてきています。実際に対応が必要なのか、対応するならばどのような方法を取ればいちばん円滑に業務が進むのか、事前に検討すべきことが数多くあります。
いざ導入となった際に混乱を招かないよう、早めに税理士などの専門家と連携・相談をしておきましょう。
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