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増税に振り回される居酒屋、「キャッシュレスはやりたくない」と語る理由

消費税

増税に振り回される居酒屋、「キャッシュレスはやりたくない」と語る理由
「素揚げや」を運営する株式会社D&Fの宮崎明社長

消費税の増税と軽減税率制度が10月1日に始まってから、1カ月以上が経過した。事業者にとってはこの1カ月はどのようなものだったのだろうか。レモンを凍らせてアイス代わりにする「(元祖)最強レモンサワー」で人気の 「素揚げや」を運営する株式会社D&Fの宮崎明社長(51)に聞くと、中小事業者の苦悩が伝わってきた。(ジャーナリスト・松田 隆)

●10月1日を境に「ガラッと変わった」

素揚げやは2013年に江戸川区小岩で開店し、現在、小岩に2店舗と祖師ヶ谷大蔵(小田急線祖師ヶ谷大蔵駅、世田谷区砧)に1店舗の合計3店舗を構えている。鶏の素揚げが人気で、テレビや雑誌、ネット媒体でも多く取り上げられてきた。客単価4000円程度の庶民的な居酒屋と言っていい。

しかし、人気店でも増税の影響は避けられなかった。「10月1日を境にガラッと変わりました。特に祖師ヶ谷大蔵店です。売り上げは8掛けぐらい。開店直後の時間帯が特に悪く、そこは7掛けぐらいになっています。家族連れが多い時間帯だったのですが、それらの人々がごっそり減りました」と言う(以下、コメントは全て宮崎明社長)。

客単価4000円としても、増税によって増える支払額は4320円から4400円と1人あたり80円しか変わらない。それでも客足が遠のいたのは「増税があったので手控えよう、外食のような贅沢を控えようというマインドが働いているのではないでしょうか」と分析する。他地区からの流入が少なくない小岩の2店舗は家族連れよりは仕事帰りのサラリーマンが主流で、売上は9掛け程度に踏みとどまっているという。

●キャッシュレス決済「ボディブローのように効いてくる」

消費税率引き上げに伴う需要平準化対策の1つとして、キャッシュレス・ポイント還元制が導入された。消費者にとっては登録事業者の店舗であれば2%もしくは5%のポイント還元があるのは、魅力的に映る。もっともキャッシュレス決済をしている中小事業者は決して多くない。それは平均で4%と言われる手数料や、機器導入、機器のスペースをとることなど導入のためのハードルが低くないからである。

「客単価3000円から4000円の中小の飲食店事業者にとって、キャッシュレス決済は厳しいです。仮に月商300万円として、4%なら12万円持っていかれます。店の家賃分に相当します。ですからキャッシュレス決済を始めると、ボディーブローのようにジワジワと効いてきます。だからといって価格に転嫁して、お客様に負担を強いることはできません。消費税8%から10%にアップしただけで客足が遠のいているわけですから、カードの手数料分の値上げなんてしたら、それこそ波が引くようにお客さんが来なくなります。客単価4000円程度の店のお客様はそのあたりは敏感です」

このポイント還元については、本店のある小岩の商店街では利用できる店舗は少ないという。理由は以下。

(1)手数料が高くキャッシュレス決済を導入できない
(2)ポイント還元の事業者に登録する必要があり手続きが煩雑
(3)事業者に登録しても期間が9カ月と限定され、効果が限定的
(4)キャッシュレス決済の手段が多すぎて年齢層が高い商店街の事業者には対応が困難

中小事業者にとって専用端末を設置するスペースの確保も問題となる。様々な種類の決済手段を無理なくこなすスキルを求めるのは年齢層が高い経営者にはハードルが高い。現場でスムーズな決済ができないリスク、端末の不具合等のアクシデント等も考え、素揚げやでは全て現金決済としており、同様の考えの店舗は少なくないという。

このキャッシュレス・ポイント還元制では10月以降、混雑時には現金決済しか認めない店舗や、一定の手数料を求める店舗も出て、システムの機能不全を起こす店舗も発生している。この点については「カード使えると謳っているのに特定の時間帯には使えない、あるいはカードのお客様から手数料をいただくというのは店として不誠実です。そういう商売はいけません。それをするぐらいなら、最初からキャッシュレス決済をやらない方がいいと思います」と言う。

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●インボイス制度の影響

2023年からはインボイス制度が始まる。免税事業者が発行した請求書は、仕入税額控除の対象にならなくなるため、免税事業者との取引が多い店舗では、これまでは控除されていた税額についても、負担が求められることになる。「産地直送」や「漁師さんから直接買い付け」を売りにしている店舗は、その直撃を受ける場合が多くなる。

素揚げやでは以前から取引先は法人を主にしていたという。これは会計や税務の処理を業の一部として行っている取引相手の方が、様々な面で安心できるため。もっとも同店の人気の「京野菜」については個人から仕入れており、インボイス制度が始まれば店で全額税負担することになる。

「無理を聞いてもらって仕入れている野菜で、代わりになるものがありません。税を全額負担してでも、お客さんに提供したい商品です。そうした事情を比較衡量、天秤にかけた結果、引き続き仕入れるということです。経営判断です」

宮崎氏は京野菜がメインとなる食材でないから可能であること、また、主力の食材となるレモン(瀬戸田レモン)は当初から組合との取引にこだわり、そのことがインボイス制度でも特に影響を受けない結果となった点も明かした。

●政府に一言「もっと事業者のことを考えて」

以上のように中小の事業者は10月1日以降、様々な点で対応を迫られている。宮崎社長は言う。

「増税の影響はありますし、ポイント還元制度では憤りを感じます。政府が消費者の方を向くのはいいですが、そちらばかり向いて事業者に対するケアも手厚くしてほしいです。もっと事業者のことを考えてほしいですね」

【プロフィール】
松田隆(まつだ・たかし) 1961年、埼玉県生まれ。青山学院大学大学院法務研究科卒業、ジャーナリスト、駿台法律経済&ビジネス専門学校講師。主な作品に「奪われた旭日旗」(月刊Voice 2017年7月号)
ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/

素揚げや店主ブログ:https://ameblo.jp/kizahashinoenishi/

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