物価高と賃金上昇で起きる「ステルス増税」1.9兆円の試算、なぜなのか? - 税理士ドットコム

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物価高と賃金上昇で起きる「ステルス増税」1.9兆円の試算、なぜなのか?

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物価高と賃金上昇で起きる「ステルス増税」1.9兆円の試算、なぜなのか?
おくやまひろし / PIXTA

物価高により、生活が苦しいという声が上がっていますが、一方で賃金も上がっています。それでは、税金はどうなっているのでしょうか。最近、「ステルス増税」という問題が注目されています。

なぜ、「ステルス増税」が起きるのでしょうか。その背景には、長い間据え置きになっている所得税の税率の区分(ブラケット)があります。

物価上昇と連動して、賃金が上がると、「税率だけが上の区分」になってしまいます。インフレ調整がないと、賃上げほどに手取りが伸びないことになります。

第一ライフ資産運用経済研究所の星野卓也氏の試算によると、2019年から2025年までの間に、所得税の限界税率区分が上がった人は合計で約820万人と推計されています。内訳は、5%から10%への移行が約412万人、10%から20%への移行が約271万人などです。

このような「隠れ増税」の規模は、トータルで年間1.92兆円(2025年時点)に達すると試算されています。

今回、星野氏の試算を紹介しながら、ステルス増税の発生を招いている現状の所得税の仕組みを解説します。

●賃上げの恩恵が薄く感じられてしまう仕組みに

現在の所得税は「稼ぐ額が増えるほど、税率も上がる」仕組みになっています。税率は年収そのものではなく、各種控除を差し引いた後の「課税所得」に適用されます。課税所得が194万9000円までは税率5%、195万円からは10%、330万円からは20%という具合に、7段階に設定されています。

ここで重要なのは、この「段階の境界線」がいつ決まったか、です。195万円・330万円・695万円といった現在の区分の骨格は、2006年(平成18年)の税制改正で設けられたものです(平成27年分以後については、課税所得4000万円超の部分について45%の税率がもうけられました)。

物価が下落・安定していた時代はそれで問題ありませんでした。しかし今は違います。物価が上がって賃金も上がると、所得区分の段階の境界線を超えてしまう人が出てきます。

たとえば、課税所得が329万円台だった人が331万円になれば、330万円以上の部分には20%の税率が適用されます。

本来なら物価高に合わせて税率の境界線も引き上げられるべきですが、据え置かれたままだと、このように高い税率が適用される人が増えてしまいます。結果として、賃上げによる増収の一部が税負担の増加に吸収され、物価高ほどには手取りの伸びを感じにくくなります。

2019年から2025年までの物価上昇率(CPI累積)は約11.9%にのぼりますが、その間、区分の境界線はほとんど動いていません。星野氏の試算では、ブラケット(税率区分)の未調整分だけで年間約0.98兆円、給与所得控除の未調整分(0.69兆円)や住民税の基礎控除の未調整分(0.25兆円)も加えると、インフレ調整がなされた場合と比べて、年間1.92兆円の税負担が生じている形となります。

なお、2026年度の税制改正では、「年収の壁」の見直しとして、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低額が引き上げられ、今後は物価上昇率に合わせて2年ごとに見直す仕組みが設けられました。

ただし、これは課税される最低ラインの引き上げにとどまるものであり、5%→10%、10%→20%といった上位の区分の境界線については調整の仕組みが整っていません。

星野氏は「既存の枠組みのままで閾値が据え置かれたまま物価・賃金の上昇が続く場合、『隠れ増税』が年々増加していくことになる」と指摘しています。

<参考記事>
ブラケット・クリープによる「隠れ増税」の試算(星野 卓也)
https://www.dlri.co.jp/report/macro/598540.html

税率・税負担等に関する資料(財務省)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b02.htm

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