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産み控えを招く言い伝え「丙午」って何? 1966年に出生率激減、実は今年も該当

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産み控えを招く言い伝え「丙午」って何? 1966年に出生率激減、実は今年も該当
厚労省「人口動態統計」より

「丙午(ひのえうま)生まれの女性は気性が激しく、夫を不幸にする」。今ではほとんど耳にしなくなったこの言い伝えが、かつて日本の人口統計を大きく揺さぶったことをご存じだろうか。そして、暦をたどると、60年に一度巡ってくる丙午は、実は今年2026年がまさに該当する。

●「丙午」とは

丙午は、十干(甲・乙・丙……)と十二支(子・丑・寅……)を組み合わせた干支のひとつで、60通りある組み合わせが一巡するため、60年ごとに巡ってくる。「丙」も「午」もともに火の性質を持つとされ、火が重なる年として古くから「火災が多い」と考えられてきた。

これが女性と結びついたのは江戸時代だ。1682年の大火(いわゆる「お七火事」)にまつわる放火事件で処刑されたとされる八百屋お七が丙午生まれと伝えられたことから、「丙午の女は気性が荒く、男を食い殺す(夫の命を縮める)」という俗信へと姿を変えた。科学的根拠は一切ないが、縁談や結婚に関わる迷信として根強く語り継がれてきた。

●1966年、出生数が約50万人も減った

この迷信が統計上はっきりと表れたのが、前回の丙午である1966年(昭和41年)だ。同年の出生数は約136万人で、前年比およそ25%減。前後の年と比べて約50万人も少なかった。指標となる合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの数)で見ると、その落ち込みはさらに鮮明だ。

1965年に2.14だった出生率は、丙午の1966年にはわずか1.58まで急落し、翌1967年には2.23へと戻っている。1966年だけが、ぽっかりと谷になっているのだ。「丙午生まれの娘は嫁の貰い手がなくなる」と心配した親たちが出産そのものを控えたためとされる。

注目すべきは、これが世界でも例を見ない「迷信が人口動態を動かした」現象だという点だ。中には、生まれた女児の生年を前後の年に偽って届け出たケースもあったといわれる。情報も医療も発達した戦後の時代に、これほど明確な「産み控え」が起きたことは、人々の暮らしに迷信がいかに深く根を張っていたかを物語っている。

●2026年、再び激減は起きるのか

そして今年2026年は、その丙午に60年ぶりに該当する。さすがに現代では迷信を本気で信じる人は少ないとみられるが、それでも専門家の間では、親世代からの何気ない一言や心理的な影響で、出生数がわずかに下振れする可能性も指摘されている。

少子化が深刻化するなか、この1年の数字がどう動くのかは静かに注目を集めている。

●丙午の影響があってもなくても、止まらない少子化

結局、報道などを見る限り、迷信そのものを本気で信じる人は今やわずかで、丙午を理由に出産を見送る動きは大きな潮流にはなりそうにない。

だが、ここにこそ現代の深刻さがある。かつては「迷信」という一時的な要因で一年だけ谷ができ、翌年には2.2台へと回復した。ところが今の日本は、迷信に左右されるまでもなく、低い出生率が当たり前のように続いている。

合計特殊出生率はすでに1.1台にまで落ち込み、2025年の出生数は70万人を割り込んでいる。1966年に「異常事態」として記録された136万人の、さらに半分の水準だ。丙午の1年だけが谷だった時代から、平時がまるごと谷であり続ける時代へと、構図はすっかり変わってしまった。

出産・子育てには現実的なコストがかかり、それを支える制度、たとえば出産育児一時金(50万円程度)、出産関連費用の一部が対象となる医療費控除、児童手当など――は確かに用意されている。こうした仕組みを正しく知り、賢く使うことは大切だ。だが税や手当の話に踏み込むほど痛感するのは、個々の制度だけでは到底追いつかないほど、少子化が構造的な問題になっているという現実だ。

60年に一度の丙午は、かつて迷信が統計を動かした年として記憶される。しかし今、私たちが向き合うべきは、迷信が消えてもなお続く「静かな谷」のほうなのかもしれない。

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