早期退職した場合の退職金控除とIDECOについて

・大前提：iDeCo一時金も「退職所得控除」の対象
iDeCoを一時金で受け取ると、その税金は退職所得として計算され、退職所得控除が使えます。
このときの「勤続年数」は、企業型DC＋iDeCoの通算加入者等期間で見ます。
ですので、「転職後4年間だけが対象」というご友人の説明は制度上は誤りです。
・5年前の退職金800万円で控除枠はどうなったか
32年勤務での退職金控除額は、概ね
800万円＋70万円×（32年－20年）＝1,640万円
となります（ざっくり計算）。
受け取った退職金は800万円なので、控除額の範囲内で税金はほぼ出ていないはずですが、これは「32年分全部の控除枠を使った」のではなく、
税法上は“800万円に相当する勤続年数分だけ使った”とみなされます。
（イメージとしては「約20年分だけ消費し、残りの年数分はまだ使える」という考え方です。）
・問題は「19年ルール」
確定拠出年金（企業型DCやiDeCo）の一時金については、その年および「前年以前19年内」に他の退職金を受け取っていると、勤続期間が重なる部分の退職所得控除が調整されるというルールがあります。
55歳のときに退職金800万円（前の退職金）
60歳でiDeCo一時金2,000万円を検討
ということは、「前年以前19年内」に前の退職金がありますので、iDeCo側の退職所得控除は、前の退職金で既に使った期間分だけ差し引き調整されます。
つまり、「32年＋その後のiDeCo加入期間すべての控除が丸ごと残っている」わけではない、かといって「転職後4年分しか使えない」というのも間違い、という中間的な状態です。
・一時金と年金、どちらが有利かの考え方
ざっくり比較すると：
一時金
退職所得として分離課税
（収入－退職所得控除）×1/2 に税率をかける形で、長期加入だとかなり有利になることが多い
年金受取
公的年金等に係る雑所得として総合課税
公的年金等控除はあるものの、他の所得と合算されるため、所得状況によっては税率が高くなりうる
今回のように通算加入期間が長く、前の退職金も控除枠の範囲内であれば、
一時金で受け取っても「損」とまでは言えず、むしろかなり有利になる可能性もあります。

・結論
「転職後4年間分の退職金控除しかない」というご友人の説明は誤り
32年勤務分の控除の“使い残し”はありますが、5年前の退職金との重複期間について19年ルールで調整が入るため、正確な控除額の計算が必要
一時金が本当に「損」かどうかは、
①前職退職金の源泉徴収票の内容
②DC・iDeCoの通算加入者等期間
③他の所得状況
を前提にシミュレーションしないと判断できません
なので、
一時金を検討されるなら、前の退職金の源泉徴収票とiDeCoの加入期間資料を揃えた上で、税理士かiDeCo運営管理機関に具体的な試算を依頼することを強くおすすめします。
感覚的には、「控除が4年分しかないから一時金は損」というほど悲観的な状況ではない可能性が高いですよ

詳細なご回答をいただき大変ありがとうございます。前の退職金控除枠が使えるとのご回答でまずは安心いたしました。実際に一時金を受け取る際はアドバイスの通り必要な資料を準備し、しかるべきところに相談いたします。大変ありがとうございました。