【保存版】個人事業主の「法人成り」で必要な手続き・期限・届出先のまとめ

個人事業主から法人を設立して、その事業を法人に譲渡することを法人成りと呼ぶことがあります。この法人成りを行うときには、必要な手続きがいくつかあります。このページでは、その必要な手続きの一覧とその対応時のポイントをまとめました。法人化を検討中の方や法人成りを予定している方は、参考にしていただけると幸いです。
目次
法人成りを行うメリット
法人成りを行うメリットとしては、信用と節税があります。個人事業主よりも法人の方が信用力があるため、取引の拡大や採用活動、資金調達などにその効果が見込めます。また、一定の利益または売上の規模になると消費税などの納税額も増えるため、法人成りをすると節税につながることもあります。
法人成りに必要な手続き一覧
法人成りに必要な手続きと、その手続きを行う時期は以下のとおりです。
手続き | 届出先 | 手続きの時期・目安 |
---|---|---|
会社設立の手続き | 公証役場・法務局 | - |
会社設立後に必要な手続き | 税務署・都道府県等 | - |
財産の移行 | 公証役場・法務局 | 定款作成まで |
名義変更 | 銀行・電力会社・水道局等 | 会社設立後停滞なく |
個人事業の廃業手続き | 税務署・都道府県等 | 税務署は1月以内 都道府県税事務所は10日以内 |
個人事業の確定申告 | 税務署 | 翌年3月15日まで |
会社設立の手続き
会社設立の手続きとして、定款認証、資本金の払込、会社設立登記などの手続きが必要です。
会社設立後に必要な手続き
会社設立の手続きが終わると、税務署や都道府県、労働基準監督署などに、様々な手続きが必要となります。
財産の移行
個人事業から法人事業に移行する際、事業内容だけでなく財産も移すことが出来ます。
どの資産や負債を会社が引継ぐかは、事業主と会社との間で任意に決めることが出来ます。ほとんどの資産と負債は会社へ引継ぐことが出来ます。賃貸借契約のものは、オーナーやリース会社へ名義変更をして良いか、確認をしましょう。
引継ぐ際には事業譲渡契約書や財産目録を用意し、わかりやすくしておきましょう。
3種類の移行方法
移行は3つの方法に分けられます。
いずれも引き継ぐ財産はすべて時価で計算します。
売買契約
個人事業主から会社へ財産を売却します。売買契約書を締結して、金銭の受け渡しを行います。手続き自体はわかりやすいのですが資金が必要となります。
現物出資
個人事業主から会社へ金銭以外の資産を出資します。会社の資本金を増加させることが出来ます。
賃貸借契約
個人事業主から会社へ資産を貸します。賃貸借契約書を締結して、賃貸料のやり取りを行います。
移行方法の選び方とポイント
財産の種類と価格によって引継ぐ方法を分けましょう。納税金額や手続の複雑さが違います。事前に試算してどの方法が良いか確認をしましょう。主な財産と移行方法の手続きのポイントは以下のとおりです。いずれの移行方法をとっても時価の算定が必要となります。税理士などの専門家への相談・依頼も検討しましょう。
棚卸資産
売買契約か現物出資で引継ぎます。個人事業では「収入」として処理をします。通常価額の70%に満たない金額で売却した場合、低額譲渡とみなされ税が課せられることがあるので注意が必要です。通常販売する価格で売れなくなった商品(時期もの、傷もの)は、時価を評価できないため引き継がず、個人事業内で処理します。
固定資産
売買契約か現物出資で引き継いだ場合、個人事業にとっては「譲渡所得」となり、事業所得とは別計算されます。50万円までなら特別控除により非課税となります。建物や土地は所得税だけでなく、会社側は不動産取得税・登録免許税がかかることになります。
賃貸借契約の場合は、個人事業として収入が継続する為、確定申告を続けることになります。
売掛金/貸付金/買掛金
売買契約か現物出資で引継ぐことができます。手続が複雑となるので専門家への相談を検討するとよいでしょう。自身で対応する場合、個人事業として回収支払いの手続き等を行います。
借入金
売買契約か現物出資で引継ぐことができます。事前に金融機関などの債権者に、名義変更の相談をするようにしましょう。
名義変更
引継ぐ財産も含め、様々なものの名義変更が必要になります。以下に名義変更が主な必要な契約を列記しました。参考に手続を進めてください。
- 銀行口座
- 事務所や店舗、工場、駐車場などの賃貸借契約
- 車両および車両保険の名義変更
- 機械などのリース契約
- 水道光熱費やネット回線
- 借入金
また、取引先との契約も個人名義から会社名義へと変更になります。挨拶状とともに売掛金の入金先の変更についても忘れずに連絡しましょう。
個人事業の廃業手続き
会社設立のために必要な手続きを進めるとともに、個人事業を廃止する届出書を提出します。
廃業届の種類と提出先の一覧
廃業届けは各所に以下の書類を提出する必要があります。また、関連する手続きを含めて以下にまとめました。提出期限に注意して下さい。
廃業しても、廃業した年の事業所得を確定申告します。その際なるべく多くの経費が計上できるように、廃業日を年末に設定するのが税務上有利です。廃業日に考慮して手続しましょう。
届出書類 | 提出先 | 提出期限 |
---|---|---|
個人事業の開業届出・廃業等届出書 | 税務署 | 廃業後1ヶ月以内 |
事業廃止届出書 | 速やかに | |
青色申告の取りやめ届出書 | 3月15日まで | |
給与支払事務所等の廃止届出書 | 廃業後1ヶ月以内 | |
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 | 第1期分および第2期分の減額申請は、その年の7月1日~7月15日 第2期分のみの減額申請は、その年の11月1日~11月15日 | |
事業開始(廃止)等申告書 | 都道府県税事務所 | 都道府県によって異なる (10日以内のところが多い) |
事業開始(廃止)等申告書 | 市区町村窓口 | 市区町村によって異なる(東京23区は都税事務所のみ) |
「事業廃止届出書」は消費税の納税義務者であった場合に提出します。
資産の引継ぎに賃貸借契約をとった場合は確定申告を継続する為、必要な届出書が異なります。「給与支払事務所等の廃止届出書」と「」所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」のみ提出します。
- {howto-id: 1013}
個人事業の確定申告
個人事業主としての最後の確定申告を行う必要があります。
最終年度の確定申告も所得税は翌年3月15日、消費税は翌年3月31日までに申告します。
- 最終年度は廃業後1ヶ月以内に、所得税の申告とは別に事業税の申告をしなければなりません。ただし、事業主控除の範囲(290万円の月割額)ならば申告・納税の必要はありません。
- 事業を廃止した場合の必要経費の特例として、廃業後にかかった経費でも必要経費については計上することが出来ます。事業を廃止した年と、前年分の所得の必要経費に算入出来ます。申告後に分かった場合は更正の請求を提出しましょう。
- 翌年度の事業税の金額を見込み計上し、経費とすることが認められています。
おわりに
法人成りをすれば税理士は必要となりますし、廃業の手続自体は簡単ですが、財産の移行や確定申告を考えると、法人成り前から相談しておくことをおすすめします。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!