2015年に義務化されたストレスチェックとは?その重要性は?

現代社会はストレス社会と呼ばれることがあります。これは、個人的な問題だけではなく、社会・経済にも大きく影響しているそうです。メンタルの不調(うつや自殺問題)による企業の経済損失は、数兆円にも達するという見解もあります。
このことから社員の健康管理は企業の業績を伸ばすためにも非常に重要であるともいえるでしょう。身体・精神共に健康的に仕事ができる環境をつくるために、企業としてできることはなんでしょうか?
目次
義務化されているストレスチェック
メンタルヘルスケアの一環として「ストレスチェック」というものがあります。
2015年12月に、常時50人以上の労働者を雇用する企業が実施対象として、この「ストレスチェック」を行うことが義務化されました。これは、ストレスに関する質問票・調査票等に労働者自らが記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査のことです。
義務化されたストレスチェックでは、全ての労働者が対象であり、年に1度行います。このときの「労働者」には、パート・アルバイトや派遣労働者等(派遣労働者の場合は派遣元が実施義務を負います)も含まれています。義務化後の初回の実施は、2016年11月末までに1度行う必要がありますので、まだ行っていない企業は期限までにストレスチェックを行いましょう。
現段階では、このチェックを怠っても直接罰則を受けることはありませんが、万が一行わないでメンタルヘルス不調者が出た場合は「安全配慮義務違反」になる可能性があります。その場合は、賠償金を支払うことになったり、信用損失等のリスクが伴うことになるでしょう。
このため、従業員数が50名以下でもストレスチェックの実施や、後述するメンタルヘルスケアの実施を検討してみてもよいでしょう。
高ストレス者がいた場合
そして、高ストレス者がいた場合には対象者に対して、面談・面接指導を実施していきます。もしくは、契約している産業医などを通じての面接指導の申し出も可能です。
企業側は医師からの意見を聴取して、必要な措置や対策を検討していきます。そして、再発・悪化の防止に努めていかなければなりません。
メンタルヘルスとは
「mental health(メンタルヘルス)」とは、精神的健康・心の健康・精神衛生などといわれる、精神面における健康状態のことです。
ビジネスという観点から見てみると、メンタルヘルス不調による休職や退職の問題は非常に大きいといえるでしょう。
休職・退職者に対する各種手当や補償金の支払い、本来その者が生み出すはずだった利益が得られないなどの金銭的な損失や、現場の混乱・社員からの信用損失や企業イメージの低下など様々な問題が想定できます。
そこで、近年では「メンタルヘルスケア」というものが重要視されています。社員の精神的健康状態(メンタルヘルス)を守るために、定期的なストレスチェックなどを行い、未然にメンタルヘルス不調を防ぎ、健康的に仕事ができる環境をつくろうというものです。
メンタルヘルスケアの方法
上述でも触れましたが、メンタルヘルスケアとは言葉の通り、精神の健康状態をケアする(健康に保つ)ということです。そのために企業や個人(従業員)ができる方法があるので、いくつかご紹介していきます。
自分自身でケアする(セルフケア)
最も身近なのが「セルフケア」です。個人(従業員)が自身の状態を把握して、普段から心身の健康管理を行うことを指します。
ストレス耐性を高めたり、上手に発散する方法を身に着けたりすることによって、心の病を防ぐことができるといえます。例えば、悩みを相談できる相手をプライベートや職場で見つけることも1つの方法でしょう。
そして企業側は、メンタルヘルスケアを社員自身でマネジメントできるように、社員教育を行っていくことも大切です。
管理者によるケア(ラインケア)
「ラインケア」とは、部長や課長などの管理監督者(管理職)が社員のメンタルヘルスを把握し、ケアを行う方法のことを指します。
管理職である立場の人は、部下にあたる社員の状況を日常的に把握することができるといえるので、具体的なストレスの要因を知ることができます。よって、早い段階でそのストレスの改善を図ることが可能であるといえます。
しかし、管理職の立場である人が部下の状態や、ケアの方法を把握していないとラインケアができません。ラインケアの実現のために、企業は管理者に関連するセミナー受講の支援をする等の対策を検討するとよいでしょう。
ラインケアセミナーの平均的な費用
セルフケアやラインケアだけではなくコミュニケーション研修であったり、様々な研修を専門的に行っている一般企業があります。
ラインケア研修の場合の料金は、2~3時間の内容が15~30名程度まで受けられて20万円~30万円程度が平均的なようです。
1人からでも参加可能なところは2万円~3万円ほどで、まれに無料で開催しているところもあるようです。
専門家によるケア(内部・外部EAP)
セルフケアやラインケア以外に、専門家によるケアがあり、契約しているカウンセラーやメンタルヘルス支援会社などを利用したケアの方法で、「EAP」というものがあります。最近は、企業向けのメンタルヘルス対策を提供するEAP会社が増えているようです。
EAPとは「Employee Assistance Program」の略称で、メンタルヘルスケアなどを通じて企業の活力を向上させる従業員支援プログラムのことです。
もともとは、1960年代にアメリカで発展したもので、従業員のアルコール依存症や薬物依存症等を解決することを目的としたプログラムのことでした。
日本では1980年の終わり頃から徐々に浸透しています。現在はメンタルヘルス対策以外にも健康増進や法令遵守など様々な目的でEAPを導入する企業が増えているようです。
EAPの特徴とメリット
EAPを導入している企業では、従業員の仕事のパフォーマンスが向上し、職場の環境が改善されたということが実証されているそうです。メンタル不調の対象者にカウンセリング等を行うだけではなく、その人が属する企業に対してもアドバイスを提供したりします。
他にもメリットとして、「外部の人や専門家に相談できるという安心感がある」「従業員側は費用の負担なく自由に相談できる」「メンタル不調の早期発見・早期解決につながる」などがあります。
EAPの形態
企業内にEAPスタッフが常駐する「内部EAP」とEAP会社が企業から業務委託を受ける「外部EAP」の2つにわかれます。
内部EAPは衛生管理者やカウンセラーを会社で雇用するという方法のことです。外部EAPであれば、社外にサービスがあるので従業員が、より相談しやすいということもあるでしょう。特に職場でストレスを感じている人は、上司や同僚に相談できない場合がありますので、ラインケアやセルフケアだけでなく、EAPもとても重要であると考えられます。
ここ数年こういったサービスのニーズが高まり、EAP会社が増えてきました。メンタルヘルス専門のところや、健康増進やキャリアカウンセリング等に力をいれているところもあるので、よく調べてから契約することをおすすめ致します。
おわりに
義務化されたストレスチェックですが、実際はそのチェック自体がストレスであると感じている方や、形式的なものであまり意味がないと感じている方も多いようです。少しでもメンタルヘルスが良好な状態であるように、その企業や従業員に合わせた最適なストレスチェックの方法を検討することが大事でしょう。
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