一般社団法人の給料はどうなる?理事などの役員報酬の決め方と注意点

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一般社団法人の給料はどうなる?理事などの役員報酬の決め方と注意点

監修: 堀内 太郎 税理士

一般社団法人とは、人の集まりに対して法人格が与えられた非営利団体を指しますが、“非営利”と聞くと「給料や報酬がもらえない」というイメージを持たれるかもしれません。

ここでいう“非営利”は「利益の分配ができない」という意味なので、報酬や給料を支給することは可能です。ただし株式会社などとは異なるルールがあるので注意が必要です。そこで、一般社団法人における「理事の役員報酬」と「社員の給与」について確認しましょう。

目次

一般社団法人の「理事」と「社員」

一般社団法人は、「社員総会」と「理事」で構成されます。

「社員総会」とは一般社団法人の重要事項等を決定する意思決定機関であり、「社員」で構成されます。

ここでいう「社員」とは、一般の従業員という意味ではなく、株式会社でいう「株主」に相当します。つまり一般社団法人の「社員総会」は、株式会社の「株主総会」と同等の役割を担う機関ということです。

そして「理事」は社員総会で選ばれます。株式会社でいう「取締役」に相当し、法人の運営を担うことになります。

一般社団法人の設立に社員(発起人)が2名以上と理事が1名以上必要になりますが、社員と理事は兼任できるので、最低2名の人員で設立可能です。

「理事・監事の役員報酬」は支給可能

一般社団法人の機関としては、理事の他にも、監事会計監査人などがあり、報酬の決め方はそれぞれ異なります。

理事の役員報酬

理事の役員報酬は、定款または社員総会の決議によって定めます。個別の金額を決めなくても、理事の役員報酬の総額(上限)を定めれば良いことになっています。個別の配分については、法人の利害には直接関係しないという考えからです。

配分は理事会の決議のほか、特定の理事の決定に任せることができます。

役員報酬について定款に定めると、役員報酬を変更する度に定款の変更も必要になるため、一般的には社員総会の決議で定めることが多くなります

理事の報酬を社員総会の決議で定めることを定款に記載した例

(報酬等)
第○○条 理事の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当法人から受ける財産上の利益は、社員総会の決議によって定める。

監事の役員報酬

監事の役員報酬も同様に、定款または社員総会の決議によって定めます。

注意が必要なのは、監事には監査機関として理事からの独立性を保つ必要があるため、理事に監事の報酬の決定権を与えないということです。同時に、理事の報酬とは別々に決議する必要があります。

監事が複数名いる場合の具体的な配分は、定款や社員総会の決議がないときには、監事の協議によって定めることになります。

監事は、社員総会で報酬についての意見を述べることが認められている、という点が理事とは異なります。

会計監査人の報酬

会計監査人は役員ではないため、その報酬を定款や社員総会の決議などで定める必要がありません

ただし、独立性を保つために、監事(監事が複数名いる場合にはその過半数)の同意を得る必要があります。

会計監査人の報酬を理事会において定めることを定款に記載した例

(報酬等)
第○○条 会計監査人に対する報酬等は、監事の過半数の同意を得て理事会において定める。

「社員」には給料を支給できない

すでに説明したとおり、一般社団法人の「社員」は、株式会社でいう「株主」に近い存在と位置付けられます。

一般社団法人の「社員」へは、利益を分配することになるため、報酬や給料は支払うことができません。

従業員(団体職員)であれば給与の支給OK

どうしても報酬や給料を支給したい場合には、理事か監事として役員報酬を支給するか、従業員(団体職員)として給料を支給するかになります。

団体職員として給料を支給する場合、金額の決定には社員総会の決議などは必要ありません。また社員は役員を兼務することができます。

報酬・給料を支給するときの注意点

報酬や給料を支給するときには、株式会社など他の法人と同様に、「賃金の支払い5原則」を守る必要があります。

賃金の支払い5原則
通貨払い給料は通貨(現金)で支払わなければなりません。小切手やモノなどの現物で支払うことは原則できません。
直接払い給料は本人に支払わなけれなりません。家族の口座への支払いは認められません。
全額払い給料は全額を支払わなければなりません。ただし、所得税、住民税、厚生年金、健康保険などを控除して支給することができます。
毎月払い給料は毎月一回以上支払わなければなりません。額が少なくてもひと月に1回以上支払う義務があります。
一定期日払い給料は一定期日に支払わなくてなりません。毎月第4火曜日支給など、月により支払日がずれるのも認められません。

また、以下のような点にも留意しなければなりません。

非営利型法人として認められなくなることも

一定の条件を満たすと「非営利型法人」となり、税制上の優遇措置を受けることができます。ところが、過大な報酬や給料を支給すると、非営利型法人として認められなくなることがあります。

なぜなら、非営利型法人の要件には「特定の個人又または団体に特別の利益を与えたことがないこと」と定められているためです。

給与や報酬の金額はいくらにすべき?

では、団体職員への給与や理事などへの役員報酬は、いくらくらいにすればよいのでしょうか。

基本的に、特別な取り決めはないため一般的な会社と同様に決定して良いことになっています。

各社転職サイトや国税庁の民間給与実態統計調査によると、一般企業の会社員の平均年収は400万円〜500万円程度で、役員報酬の平均年収は600万円〜1500万円程度です。

もちろん、職種や年齢など実際の労働に見合った対価にする必要がありますが、役員は無報酬でも問題ありません。

源泉徴収が必要になる

団体職員への給料はもちろん、役員報酬も「給与所得」となり、源泉徴収が必要になります。徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納める必要があります。

社会保険への加入が必要

団体職員や役員に報酬や給料を支払う場合は、健康保険や厚生年金など社会保険への加入が必要になります。また、パート・アルバイトなども、労働日数や労働時間などの条件を満たせば、加入対象となります。

おわりに

一般社団法人は、株式会社のような営利法人と似通っている部分もありますが、決定的に異なる部分もいくつかあります。今回は報酬や給料を中心に解説しましたが、もし過大な報酬や給料を支給してしまうと、非営利法人としての税制上のメリットを失ってしまう可能性もあるので、注意が必要です。

一般社団法人など非営利法人の設立や税務に精通した税理士に相談をすれば、その後の税務申告や組織運営などで、心強い存在になってくれるでしょう。

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