法人口座を会社設立後すぐに開設する方法は?審査のポイントや必要書類のまとめ

法人口座は個人口座と違って審査に時間を要し、作るのに2週間から1か月程度かかります。取引や手続きにおいて必須ともいえる法人口座は、会社設立後すぐにでも開設したいものです。口座開設を円滑に行うために、審査のポイントや必要書類を把握しておきましょう。
目次
法人口座開設の流れ
法人口座開設までの流れは以下のとおりで、個人口座のときと大きく差はありません。
- どの銀行で開設するかを決める
- 開設の申し込みをする(必要書類の提出、実店舗がある銀行は面談)
- 審査結果が連絡される
- 通帳、キャッシュカードの受け取り
銀行によっては2度店舗に訪れる必要があったり、都市銀行でもネットで手続きが済む場合もあります。
また、開設の申し込みや通帳などの受け取り時に、代理人ではなく代表者本人が直接行かなければいけない銀行も多くあるので覚えておきましょう。
会社設立後どれくらいで開設できる?
一般的には開設までに約1か月の期間を要します。
まず口座開設に必要な書類が手に入るまでに、登記申請してから1週間ほどかかります。その後、銀行に開設の申し込みをして、実店舗がある場合は店舗で面談をします。
審査結果が出るまでに最短で1週間〜2週間かかり、審査に通過すると1週間ほどでカードが送付されるので全部で約1か月かかる計算になります。
また実店舗で申し込みをされる際は、受付をして必要書類を提出し、担当者と面談することになります。このとき、1時間程度の時間が必要となりますので、当日のスケジュールは最低でも1時間〜2時間程度空けておくようにしましょう。
このように、法人口座は個人口座よりも開設に時間がかかります。もし売上や仕入れによる入出金の予定がある方は日程を調整し、早めに開設することをおすすめします。
開設するタイミングは?
上記で説明したように法人口座の開設には約1か月かかるので、登記申請完了後に必要書類が揃ったらすぐに口座開設に行くことをおすすめします。
早急に法人口座を作りたい方は、比較的開設に時間がかからないネット銀行でひとまず開設してから、メインバンクとして都市銀行や地方銀行に申し込むという方法もあります。
それでも間に合わないときは法人口座をができるまでの間、一時的に取締役の個人口座を使うなどして対応することになります。
開設する銀行はどうやって選ぶ?
開設するのはメガバンクがよいのか、それともネット銀行などがよいのか、”どこで口座開設するか”は迷うところです。
決め方としては、以下のようなポイントが検討材料となります。
【利便性】
自宅や会社の近くに支店やATMがあるかはとても重要です。
遠いところにあると振り込みや引き出しが大変になってしまうので、利用しやすい場所にあるかを確認してみてください。また利用可能時間帯なども気にしておきましょう。
最近は、インターネットのサービスが充実しているのでインターネットバンキングなどについても調べておくとよいでしょう。
【月額基本料や振込手数料など】
銀行によって料金が大きく異なるので確認してみてください。
一般的にはネット銀行が安く、都市銀行は高めの料金設定になっています。取引先と同じ金融機関だと手数料を抑えることができますので、取引先がどの銀行を使っているのかも考慮に入れて選ぶとよいかもしれません。
【資金調達面】
会社を運営していく中で、銀行から融資を受けたいと考えることがあるかもしれません。
特にメガバンクなど、銀行によっては融資のハードルが高いところがあります。一方で、地方銀行や信用金庫は、創業者向けの小口融資に積極的に取り組んでいるところもあるのが特徴です。
【対外的な信用】
メガバンクなどは知名度がある点や審査が厳しい傾向にあるので、他の銀行と比較すると信用が得やすくなります。
大手企業が取引先であるなど、取引先によっては対外的な信用が高い銀行を選ぶほうがよいこともあるでしょう。
開設手続きに必要な書類と持ち物
法人口座開設に必要な書類は銀行によって多少異なります。
書類が足りないと後日提出しに行くことになるので、早く確実に口座を開設したい方は事前に必要書類を銀行に確認しておきましょう。もし確認ができない場合は、不足が出ないように様々な書類を持っていくとよいでしょう。
最低限必要なもの
最低限必要な書類と入手先は以下のとおりです。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
履歴事項全部証明書(登記簿謄本) | 法務局 |
本人確認書類(運転免許証、保険証など) | 自分で用意 |
法人の印鑑 | 法務局で登録されているもの |
法人の印鑑証明書 | 法務局 |
法人番号がわかるもの(法人番号通知書など) | 税務署から登記完了後に郵送されてくる |
準備しておくとよいもの
銀行によって求められるものや、用意しておくとよい書類と入手先は以下のとおりです。
準備しておくと良い書類 | 入手先 |
---|---|
事業内容がわかるもの(定款や事業計画書) | 会社で保管されているもの |
株式名簿 | 自分で作成(フォーマットは自由) |
委任状(法人の代表者が行く場合) | 委任がされた旨がわかる内容が明記されたものを自分で用意 |
会社のパンフレット | 会社で作成したもの |
会社のホームページ | 会社で作成したもの |
事務所の賃貸契約書 | 会社で保管されているもの |
審査で見られるポイント
近年、口座が振り込め詐欺やオレオレ詐欺などの犯罪に悪用されないように審査が厳しくなってきています。口座開設を断られないために、審査で見られるポイントを抑えておきましょう。
資本金の金額
現在では、資本金が1円からでも会社が設立できるようになりましたが、資本金の額が低すぎると審査に通りづらくなるといわれています。なぜなら、ペーパーカンパニー(事業実態のない会社)と疑われてしまう可能性が高くなり、特に設立してすぐのときにいえることです。
資本金の最低金額が明確に規定されている銀行はありませんが、口座開設の審査は年々厳しくなってきているので、数十万円〜最低限の資本金を設定しておくほうが安心でしょう。
事務所の所在地
銀行は会社の実態がきちんとあるのかを確認するために、登記上の住所で事業が行われているかを確認することがあります。
バーチャルオフィスでは、実態がきちんと確認できないなどの理由で開設を断られる可能性もあります。しかしその場合は、バーチャルオフィスだからという理由だけでなく、他の理由も加味しての判断でしょう。
また、一人会社などであれば固定電話を置かない会社ケースもありますが、事務所に固定電話があるのかも審査対象になることがあります。
ただし、所在地や固定電話に関しては、近年の企業の実態に合わせてそこまで重視されていない項目でもあります。
時間やお金に余裕があって確実に口座開設をしたいという方は、バーチャルではない事務所を借りたり、固定電話を引くという対策をしてみるのもよいかもしれません。
事業内容や目的
会社の定款に記載されている事業目的の数が多く一貫性がないと、事業内容が不明確だと認識され、銀行から不信感を持たれてしまうことがあります。
定款に記載する事業目的はあれこれとたくさん書くのではなく、重要なものをある程度絞って記載するようにしましょう。
また、事業内容に許認可が必要なものが含まれているのに許認可申請がまだ行われていなかったりすると、その点について指摘を受ける可能性があります。許認可が必要な事業が含まれている場合は、早めに申請しておくことをおすすめします。反対に、許認可が必要な事業をやるのにその記載がない場合も同様です。
定款には誰が聞いても何をやるのかわかるような事業内容を記載しておくことが重要です。
そしてその事業目的は、利益を上げることを目的とした、違法行為に当たらないものである必要があります。たとえばオレオレ詐欺などの違法行為や、株式会社であればボランティア活動などの非営利活動は事業目的として定めることはできません。
そして事業内容をきちんと説明できるように事業計画書などを準備しておくと、より良い印象を与えることができます。
訪問するときの注意点
当然のことですが、銀行に訪問する際には会社の代表として担当者の方に悪い印象を持たれないように服装や身だしなみに気をつけましょう。
服装はスーツなどのビジネス・フォーマルな服装で、本人確認書類だけでなく名刺も持参することをおすすめします。
【法人口座の比較】会社設立後すぐ作れるのは?審査が通りやすいのは?
一般的には「ネットバンク、地方銀行、都市銀行」の順に審査の難易度が上がります。
特にメガバンクであるみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行は審査が厳しいといわれています。反対に、日本郵政グループが展開するゆうちょ銀行は審査の難易度が低いといわれています。
しかし、ネットバンクには落ちたけどメガバンクには通ったというケースもあるので、一概にはいえません。
銀行 | 特徴 | 対策 |
---|---|---|
都市銀行 | 知名度が高い 審査が厳しい | 賃貸契約書の準備 固定電話の設置 など |
地方銀行 | 地域密着型 特定理域以外は使いにくい | |
ネットバンク | 手数料などが安価 金融サービスが少ない | ホームページの作成 など |
信用金庫 | 融資に積極的 知名度が低い | バーチャルオフィスではなく事務所を借りる など |
都市銀行のメリット・デメリット
都市銀行は、その知名度などから取引先からの信頼を得やすいというメリットがあります。そのため、大規模な事業や大企業が取引先である会社におすすめです。
都市にはATMや店舗がたくさんあるので、都市銀行を利用している取引先が多い場合にも便利です。
しかし一般的には審査が厳しいといわれており、手数料が他の銀行よりも高くなっています。また地方になると支店やATMが少ない傾向にあるので、地方を中心に事業を行っている会社は使いづらいかもしれません。
地方銀行のメリット・デメリット
銀行が地盤としている地域だと支店数やATMの数が多く、金融サービスも充実しているので、その地方を中心に事業を行おうと考えている会社におすすめです。
また都市銀行よりも融資や新規事業の立ち上げの相談に乗ってもらいやすいというメリットもあります。
しかし、その地方をでると支店やATMの数が極端に少なくなるので、使い勝手が悪くなってしまいます。
ネット銀行のメリット・デメリット
ネット銀行(ネットバンク)とは実店舗をもたず、口座開設や振込などをすべてインターネット上で行う銀行です。よくネットバンクと間違われるネットバンキングは、携帯やネットで入出金を行ったり残高確認ができる”サービス”のことをいいます。
ネットバンクは24時間リアルタイムで決済が可能なので、通販などネット事業を行う会社におすすめです。
通帳やATMがないので預金金利が高めで振込手数料などが安く、月額基本料もかからないことが多いです。
しかし、社会保険料の口座引落しに対応していなかったり、金融サービスが限定されることが多くあります。さらに対外的な信用面でも都市銀行にはやや劣るので、他の銀行と併用するのがおすすめです。
信用金庫のメリット・デメリット
地域の情報に強く、小規模な企業でも融資を積極的に行っているのが特徴ですので、小規模事業を行う会社におすすめです。また、他の銀行と比較して金利が高いともいわれています。
他の銀行よりも比較的早く開設でき、書類などが揃っていれば即日口座開設も可能なようです。
一方で、都市銀行と比較してATMの少なさや、信用度や知名度の低さがデメリットとして挙げられます。
おわりに
もともと個人事業で利用していた銀行であれば、法人成りで比較的容易に口座を開設できるケースもあるようです。これから法人口座を作ろうと考えている方はこの記事の内容をおさえてスムーズに開設できるようにしましょう。
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