経費の計上の仕方及び、確定申告について
初歩的な質問となりますが、ご教授いただければ幸いです。
12月に漫画の連載を控えているものです。何点かお伺い致します。
・開業届はどのタイミングで提出すればよいですか。提出方法はオンラインで簡易的にできますか。
・12月連載のため、準備期間として10月より進めております。具体的にはアパート(事務所兼自宅)契約やネット環境整備・光熱費、家具等となります。家賃・光熱費は50%の按分、ネット環境・家具は100%
これらは経費として令和6度の申告に計上してよいのか。それとも12月稼働の為、12月分の経費のみしか計上できないですか。
・アシスタントとして2名業務契約を結びます。1日あたり12,000円(税込)で週4日働いていただきます。単純計算で12,000×4日×4週=192,000円(1ヵ月)を支払う予定です。この費用計上は外注費でよいですか。
明細についてはアシスタント側より請求書を作成いただき、その請求書を基にお支払いをします。その場合、源泉徴収の記載は必要ですか。外注費の為、契約書に従って税込み価格をお支払いすればよいですか。
・12月稼働の為、支出のみが計上され、決算書上は赤字決済となります。この場合、赤字申告でも大丈夫ですか。その際は青色・白色どちらですか。
・令和7年の申告については、簡易課税にすべきですか。それとも青色と併用すべきですか。
以上となります。
長文大変失礼いたしました。
お忙しいところ恐縮ですが、お力添えいただけますと幸いです。
税理士の回答

石割由紀人
漫画の連載を控えているとのこと、以下に各質問について回答いたします。
1. 開業届のタイミングと提出方法
開業届は「事業を開始した日から1ヶ月以内」に税務署へ提出する必要があります(所得税法第229条)。ただし、実際に事業活動を開始したタイミングを事業の実質開始日と考えて構いません。具体的には、連載のための準備活動を始めた10月を事業開始日として記載しても問題ありません。開業届の提出は、e-Taxを利用することでオンラインでも可能です。
2. 経費の計上
経費は事業の開始に必要な準備期間のものも含めて計上できます。したがって、10月からの家賃や光熱費、ネット環境整備、家具などの費用を経費として計上できます。ただし、実際の事業使用割合に応じて按分する必要があります。具体的には、家賃や光熱費の50%按分、ネット環境や家具については使用目的が事業用であれば100%計上可能です。
3. アシスタントの業務契約と外注費の計上
アシスタントの方への支払いは外注費として扱いますが、外注先が個人事業主の場合、支払報酬の一部について源泉徴収が必要になる場合もあります(所得税法第204条)。具体的には、請求書を基に税込み価格を支払い、源泉徴収すべきか税理士に確認することをお勧めします。通常、個人に支払う場合には、10.21%(復興特別所得税を含む)の源泉徴収が必要です。
4. 赤字申告の可否と申告形態(青色・白色申告)
初年度から経費が収入を上回る場合、赤字申告は可能です。この場合、赤字を翌年度以降に繰り越すことができる青色申告が有利です。ただし、青色申告をするには開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。白色申告の場合は赤字の繰越しができないため、長期的な視点では青色申告の方が適しています。
5. 令和7年の簡易課税制度と青色申告の選択
令和7年に関する消費税の課税方法として、前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば簡易課税制度を選択できます。ただし、簡易課税制度を選ぶかどうかは節税効果を考慮して決定してください。青色申告は簡易課税制度とは独立した選択肢で、同時に両方を適用することが可能です。青色申告特別控除などの恩恵も大きいため、併用を検討することを推奨します。
石割さま
ご丁寧に返信いただきありがとうございます。
大変わかりやすい回答でした。
何点か教えていただきたいです。
3.個人事業主という観点が難しいのですが、相手方がフリーランスや副業の場合は源泉が必要ないということですか。また、アシスタントには業務の対価として「報酬」という形で金銭をお支払いしますので、外注費の計上で源泉徴収は必要と思っていたのですが、いかがですか。
4.赤字申告について理解できました。個人の収入については、12月稼働分として1月に入ってくる予定です。その場合は12月の収入に計上して申告すべきですか。計上の場合、支払調書と収入の日付が相違でも問題ないのですか。
5.節税効果を考慮したいのですが、どういう判断基準で決めれば簡易的ですか。併用の場合は、どのような申告の流れとなりますか。
また、長々と質問してしまい申し訳ありません。
お忙しいところ恐縮ですが、ご回答いただけますと幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。

石割由紀人
以下に、質問に対する詳細な回答を示します。
3. 個人事業主やフリーランスへの源泉徴収の必要性について
フリーランスや副業の相手方に対しても、「報酬・料金」という形で支払う場合は源泉徴収が必要です。具体的には、原稿料や講演料、デザイン料などが対象となります。報酬の種類によっては、源泉徴収が不要な場合もあります(例えば、Webサイト制作などは不要です)。したがって、アシスタントへの支払いが「報酬」として該当する場合、源泉徴収を行う必要があります。源泉徴収すべき報酬には、10.21%の税率が適用されます。支払い時に源泉徴収を行い、確定申告の際にこれを反映させます。
4. 収入計上のタイミングについて
個人事業主の所得税は、現金主義と発生主義のどちらかを選択できます。一般的には、支払いが発生した日付に基づいて収入を計上します。したがって、12月分の稼働による収入が1月に支払われた場合、現金基準を用いるならば1月の収入として計上します。一方、発生ベースでの会計処理を行う場合は、12月分の作業を12月に収入として見なします。支払調書の日付と収入の計上日が異なること自体は問題ありませんが、選択した基準に一貫して従うことが重要です。
5. 節税効果を考慮した簡易課税制度の判断基準
簡易課税制度は、消費税の計算を簡素化するための制度で、特に中小規模の事業者にとって有利です。この制度を利用できるのは、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合です。簡易課税制度を選ぶ際の判断基準は、売上に対する仕入や経費の割合です。こちらの制度は、仕入などの経費割合が少ない場合に有利に働きますが、仕入率が高い場合は、通常の消費税計算の方が有利となることがあります。簡易課税と青色申告の併用も可能で、節税効果を最大化する選択が必要です。
石割さま
多数の質問にも関わらず、丁寧に回答いただきありがとうございます。
素人でもとてもわかりやすく、理解ができました。
また機会がありましたら、回答いただけますと幸いです。
今回は誠にありがとうございました。
本投稿は、2024年10月31日 09時22分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。