大家さん必見「空室リスクを回避する家賃保証に潜むワナとは?」

賃貸経営をする上で「空室」は最大のリスクといっても過言ではありません。空室が発生して賃貸収入が入ってこなければ、たちまち経営が悪化してしまいます。このリスクを回避してくれるのが、不動産管理会社が行っている「家賃保証」というサービスです。
所有している物件に空室が出ても、一定の金額を支払ってくれるというこの「家賃保証」、実は見落とされやすい重大な落とし穴があります。今回は賃貸経営をしている、または検討している方向けに、家賃保証の特徴と、気をつけなければいけない注意点を解説いたします。
目次
家賃保証というサービスが普及したきっかけ
平成27年1月1日から相続税の基礎控除額が大幅に下がったことは、まだ記憶に新しいところです。このことをきっかけとして、財産として土地を所有していた方は、不動産管理会社から節税対策として、アパートを建てることをすすめられた人も少なくないことでしょう。
更地にアパートを建てて賃貸するだけで、固定資産税をはじめ、様々な税金が節税できるとあって、多くの地主がアパート建設に興味を持ちました。ただ、オーナーとしては、本当に満室になるのか不安を感じ、躊躇してしまうケースもあります。
そこで、そんな地主の不安を払拭するために、不動産管理会社がアパートを一括で借り上げて毎月の家賃を保証する「家賃保証」というサービスが普及したのです。
家賃保証サービスのメリット

賃貸物件を不動産管理会社に家賃保証してもらえれば、空室の恐怖から解放されるため、毎月の収支が安定します。よって、ローンの返済計画も立てやすくなりますので、初心者投資家や賃貸経営のノウハウがない地主などにとっては、とても便利でメリットの大きなサービスです。
また、家賃保証の場合は実質的な賃貸経営はノータッチで、すべて不動産管理会社に任せられます。例えば、エアコンや給湯器が故障したとしても、大家の携帯電話に直接入居者からかかってくることもありません。
このように家賃保証を利用すれば、煩わしい賃貸管理業務とは一切無縁で、家賃という安定収入だけが常に入ってくることになります。
見落とすと危ない家賃保証の落とし穴
一見するとメリットが際立つ家賃保証ですが、事前に理解しておかないと致命傷になりかねない「落とし穴」が2つあります。
保証家賃は値下がりしていく運命か
家賃保証というと「30年一括借り上げ」など、長期間にわたり常に一定の収入が確保されるというイメージがありますが、実はそんなに甘くありません。家賃保証契約については、確かに契約期間は長期で結ぶこともありますが、その間ずっと同じ家賃が保証されるという契約ではないのです。
ほとんどの不動産管理会社の契約書には「月額保証家賃については2年ごとに見直しを行う」などといった記載があり、変動するリスクがあります。リーマンショック以降、賃貸物件の家賃相場は上がっておらず、年数に比例して徐々に家賃が値下がりしていくケースがほとんどです。そのため、家賃保証額についても、一定年数ごとに徐々に下がっていく可能性が高いのです。
もともと家賃保証額については、市場家賃相場の90%程度の金額で設定されることが多いので、そこからさらに下落するとなるとローンの返済計画に支障が出てくる可能性もあります。
家賃保証契約は解除できない可能性も
家賃保証契約は、一度契約してしまうと解除に応じてもらえない可能性があります。家賃保証契約とはいわゆる商品名で、法的な意味では「転貸を目的とした賃貸借契約」です。
家賃保証の仕組みは、家賃保証をする不動産管理会社が大家から一括で部屋を借り上げて、それをエンドユーザーに転貸、つまり「又貸し」することです。又貸しする際の家賃と保証家賃の差額が、不動産管理会社の利益となります。
このように、契約上は不動産管理会社に「賃借人」としての地位があります。つまり、大家が家賃保証契約を解除するということは、不動産管理会社という賃借人を一方的に追い出すことと同じなのです。借地借家法では、賃借人の地位は手厚く保護されているため、よほどの理由がなければ大家からの一方的な解除は認められません。
ここが、通常の管理委託契約と家賃保証契約の大きな違いです。不動産管理会社はこの特徴を熟知しているため、万が一大家から家賃保証契約の解除を申し入れられても、自らの賃借権を主張して解除に応じないケースがあるのです。
デメリットを事前に把握しておくことが重要
このように、家賃保証というサービスには、事前に知っていないと非常に危ない落とし穴が潜んでいます。ただ、どちらについても事前に理解してさえいれば、そこまで恐れることでもありません。
家賃保証の場合は、将来的に保証される金額が下がっていくことを念頭において、ローンの返済計画を立てておけば、特に問題は発生せず、家賃保証契約を解除する必要もありません。
おわりに
すでに家賃保証を利用している方は、今からでも遅くありません。毎年の確定申告の相談だけではなく、今後家賃保証額が下落してきた場合のキャッシュフローについても税理士に相談するなどシミュレーションしておくことが大切です。万が一の時にも資金ショートしないよう、早めに対策を講じておきましょう。
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