親権は相続されない!?遺産分割の対象から外れる権利・義務・財産

遺産相続が発生した場合、原則として相続人は預金などの「プラスの財産」、および借金などの「マイナスの財産」、さらには損害賠償請求権などの「権利」や債務者としての「義務」などを相続することになります。
ただ、一方で例外的に相続の対象から外れるものもあります。そこで今回は、相続の対象から外れる権利、義務、財産の詳細について解説します。
目次
相続の対象から外れる「権利」と「義務」とは
相続人は金銭的な財産のみならず、あらゆる権利や義務を相続することになります。例えば、故人が負っていた「保証人」などの責任についても引き継ぐことになります。
ただし、権利や義務の中にはその性質上、亡くなった故人に「一身専属的」に帰属するようなものがあり、それらの権利義務については相続の対象から外れる扱いがされています。
相続の対象から外れる主な「権利」
相続の対象から外れる「権利」には、具体的に以下のようなものが該当します。
親権
離婚する際に「親権」を獲得していた親が死亡したとしても、親権については相続人には相続されません。親権者が死亡した場合、もう一方の親が自動的に親権を引き継ぐのではなく、法的には家庭裁判所の審判が必要になります。
また、未成年後見人を家庭裁判所に決めてもらうケースもあります。
国民年金の受給権
国民年金は故人にのみ受給権があるため、死亡した場合は相続人に権利が移ることはありません。ただし、年金制度で給付される「遺族年金」については、相続財産には当たらないものの、法律によって給付を受けられる人には受給権があります。
代理人としての地位
故人が誰かの代理人を請け負っていた場合、死亡によって代理人としての地位はなくなります。
扶養料請求権
扶養家族が扶養可能なものに対して扶養料を請求する権利で、一身専属的なものであるため相続の対象から外れます。ただし、すでに期日が過ぎていて滞納している金額については、相続の対象となります。
相続の対象から外れる主な「義務」

相続の対象から外れる「義務」には、具体的に以下のようなものが該当します。
労務を提供する義務
故人が雇用契約を結んで仕事をしていたとしても、相続人が代わりにそこで働く必要はありません。
使用貸借契約
大家に家賃を支払って物件などを借りることを「賃貸借契約」というのに対し、無償で借りることを「使用貸借契約」といいます。
賃貸借契約の場合は、相続によって借りる権利を引き継ぐことになりますが、使用貸借契約の場合は、本人との信頼関係のもとに成り立っている性質であるため、本人の死亡によって終了します。
身元保証契約
連帯保証人や保証人については、相続の対象となりますが、身元保証人については、本人との信頼関係が基礎となっているため、相続の対象から外れます。ただし、相続の時点において、すでに身元保証人として何らかの損害賠償義務が発生している場合については、マイナスの財産として相続の対象となります。
これらの権利義務は、一身専属的であるため、相続が発生したとしても相続人に引き継がれることはありません。
相続の対象から外れる「財産」とは
財産については、原則としてどんなものであっても、経済的価値のあるものについてはすべて相続財産となります。ただし、次の財産については「祭祀財産」といい、例外的に相続の対象から外れます。
- 墓地
- 暮石
- 仏壇
- 祭具
- 系譜、系図
これらの財産については、先祖を祀るためのものであり、慣習に従って祭祀を主宰する人が受け継ぐことと民法で定められています。祭祀を主宰する人とは、平たく言えば「喪主」のような人で、必ずしも相続人である必要はありません。
これら祭祀財産を引き継ぐ人のことを「祭祀継承者」といい、たとえ祭祀承継者が祭祀財産を売却したとしても、そのお金を遺産分割で分けるよう請求することもできません。
ただし、祭祀財産が一般常識をはるかに超える高額なものであった場合は、例外的に相続財産の対象となるケースもあります。
葬式の際の「香典」はどうなる?
葬式の際に参列者から受け取る「香典」についても相続財産ではありません。香典は葬儀費用の一部に充てるために、参列者から遺族に対して贈与が行われたと考えることになります。
通常は香典と葬儀費用の差額は祭祀継承者が負担したり、相続財産から支出するなどの処理を行います。
「死亡退職金」はどうなる?
死亡退職金については、支給の根拠となる就業規則や社内規定にどのような取り決めがあるのかによって、受取人が決まることとなるため、基本的には相続財産からは外れます。
おわりに
このように、故人の権利、義務、財産であっても、相続人が引き継がない性質のものが幾つかあります。認識に誤解があると、相手方とトラブルになる恐れがあるため注意が必要です。
もしも相続の対象かどうか判断に迷ったら、早めに専門家に相談することをおすすめします。
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