開業費について
法人の開業費は繰延資産になりますでしょうか?全額費用にできると聞いたのですが、
繰り延べ資産で全額減価償却になり、別表にものせるのでしょうか?
税理士の回答
山本快夫
お世話になります。
ご質問に対する回答)
↓
質問者さまのご認識のとおりとなります。
開業費は、繰延資産となり、法人の任意で償却できます。償却費とした分だけ損金となります。
なお、別表の作成を忘れないように、ご注意ください。
別表十六(六)「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」
の下段にある
「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」
の欄に記入します。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/02-20.pdf#page=2
他の方のアドバイスも参考になさってください。少しでもご参考になりましたら幸いです。
荒川直宙
結論から申し上げますと、法人の開業費は、税法上は「繰延資産」に該当します(会計上は原則として支出時の費用処理ですが、繰延資産として計上することもできます)。
また、税法上で「任意償却」が認められているため初年度に全額を費用(損金)にすることが可能です。その場合、法人税申告書の「別表十六(六)」に記載して申告を行います。具体的な仕組みと実務のポイントを整理いたしました。
【1】開業費の税法・会計上の位置づけ
税法上、法人が会社設立後から営業開始までに支出した特別な費用(広告宣伝費、名刺作成代、開業準備のための旅費交通費など)は「繰延資産」に該当します(法人税法施行令第14条)。
一方、会計上は原則として支出時に費用として処理しますが、繰延資産として計上することも容認されています。会計上でどちらの処理をとった場合でも、税務上は繰延資産として扱われます。
※なお、設立登記「前」にかかった費用(定款認証手数料や登録免許税など)は「創立費」という別の繰延資産になります。
【2】「全額費用にできる」理由(任意償却)
法人税法上、開業費は「任意償却」が認められています(法人税法施行令第64条)。
任意償却とは、会社が好きなタイミングで好きな金額を損金経理(費用計上)してよい制度です。
・初年度に全額を費用化して節税に使う
・初年度が赤字であれば償却せず、将来黒字が出た年度にまとめて費用化する
・今年度は半分だけ費用化する
このように上限(未償却残高)の範囲内であればいくらでも損金にできるため、「全額費用にできる」と言われます。
【3】全額費用化する場合の処理と別表記載
資産計上して初年度に全額費用化する場合(あるいは支出時に費用処理した場合)、以下の形で申告します。
◆ 会計上の処理(資産計上する場合)
・支出時:(借方)開業費 /(貸方)普通預金など
・決算時:(借方)開業費償却 /(貸方)開業費
決算で全額を「開業費償却」として費用計上することで、貸借対照表(B/S)の開業費残高は0円となり、損益計算書(P/L)に全額が費用として反映されます(支出時に直接費用処理した場合も、税務上は同様に損金算入が認められます)。
◆ 法人税申告書(別表)の記載
通常の固定資産とは明細書が異なり、繰延資産専用の「別表十六(六)」(繰延資産の償却額の計算に関する明細書)に記載します。
会計上で費用とした金額が任意償却の限度額(全額)に収まるため、「別表四」での加算・減算の調整は発生せず、別表十六(六)を添付することで適正に申告が完了します。
【4】実務上の注意点(固定資産との区分)
開業準備で購入したパソコンやデスクなどの備品は、金額にかかわらず開業費ではなく「固定資産(減価償却資産)」として扱います。
・10万円未満のもの:事業で使い始めた事業年度に消耗品費等として一括で損金にできます。
・少額減価償却資産の特例:青色申告の中小企業者等であれば、一定金額未満(※)の減価償却資産について年間合計300万円まで一括で損金算入できます。
※取得価額の要件は税制改正により40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)となっています。
また、店舗・オフィスの敷金や保証金なども開業費には含めず、「差入保証金」などの資産科目として計上する必要があります。
少しでもお役に立てましたら、ベストアンサーに選んでいただけますと幸いです。
開業費は繰延資産になり、任意償却ができます。なお、別表にも記載が必要になります。
藤倉真人
お世話になります。
はい、法人の開業費は税務上「繰延資産」(支出の効果が将来に及ぶため資産として繰り延べる費用)に該当します。ただし償却額を自由に決められる「任意償却」が認められているため、支出した事業年度に全額を損金(税務上の費用)とすることができます。
開業費は、法人税法施行令第14条第1項第2号で「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」として繰延資産に定められています。開業前の広告宣伝費や市場調査費などが該当します。
償却限度額は、法人税法施行令第64条第1項第1号により、開業費の帳簿価額(まだ償却していない残高)とされています。そのため、次のような処理ができます。
・初年度に全額を償却して損金とする
・一部だけ償却し、残りは翌期以降の好きな年度に償却する
・利益が出ていない年度は償却せず、利益が出た年度にまとめて償却する
いずれの場合も、決算で償却費として費用計上(損金経理)していることが前提です。なお、繰延資産の場合は「減価償却」ではなく「償却」と呼びますが、費用化する仕組みは似ています。
別表については、繰延資産の償却額を損金とする場合、法人税法施行令第67条により償却額の計算に関する明細書の添付が求められており、別表十六(六)「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」に記載します。支出時に資産計上せず全額を費用として処理した場合も、償却費として損金経理したものとして扱われ、明細書への記載が必要とされています(法人税基本通達8-3-2)。
また、法人設立前に支出した設立費用は「創立費」となり、開業費とは区分されますが、同じく任意償却の対象です。会計上は支出時に費用処理するのが原則で、資産計上した場合は5年以内に償却する扱いとされています(企業会計基準委員会 実務対応報告第19号)。
開業前に役員が個人で立て替えた費用も、法人の開業費として計上できます。領収書などの証拠書類を保管しておくとよいでしょう。
税務上の開業費に該当する支出は繰延資産で、一時償却の対象となります。未償却残高の範囲で全額を損金経理する取扱いもありますが、固定資産の「減価償却」とは区別します。申告では別表十六(六)のⅡで償却額等を明らかにします。開業前の支出なら何でも含められるわけではなく、設備の取得費や前払費用などは別に整理が必要です。支出明細・領収書・営業開始日と会計処理を顧問税理士に示し、全額費用化できる範囲と別表記載を確認されるとよいと考えられます。
※本回答は一般的な情報提供を目的としたものです。詳細な判断は管轄の税務署への確認や、税理士への個別相談をお願いいたします。
本投稿は、2026年10月28日 08時53分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。





